医療法人真鶴会 小倉第一病院 中村 秀敏 理事長/院長
2000 年 九州大学大学院
病態機能内科学入学
2004 年 小倉第一病院勤務
2011 年 小倉第一病院院長
2013 年 小倉第一病院理事長・院長
2014年9月27日に逝去された中村定敏前理事長のあとを継ぎ、父の足跡をどう生かすのか、医療環境の変化にどう対応していくのか、医師としての生きがいなどについて尋ねた。
理事長交代をしたのはおととし(2013年)の8月、院長は2011年3月から務めています。
父の強みは新しいものに挑戦することでした。病院機能評価も一番に取り組み、そもそも九州で始まっていなかった透析治療も、済生会八幡病院で経験を積んだあと一人で開業しました。父の医師人生をひとことで言うなら、「誰もやっていないことに果敢にチャレンジする」ということだったのではないでしょうか。
透析医療自体は非常に成熟した時代になりましたが、難治性の合併症や未解決の問題があって、そこは私が新たにチャレンジしていくという姿勢は持っていたいと思っています。また当院が注目されたのは、いま私の着ているかりゆしウェアなど、小さな工夫もあったからだろうと理解し、これからも意識していきたいと思います。
福岡県北九州市小倉北区真鶴2-5-12TEL:093-582-7730 FAX093-592-7689
理 念
「透析患者の完全社会復帰」という設立理念を基本精神とし、真に患者中心の問題解決を果たしていく透析医療を追求します。
そしてこれから変えていきたいこと、あるいは私が父と違うところは、父はとてもリーダーシップが強く、トップダウン的でした。そのことでボトムアップによる提案や改善を意識し、その成果はあったのですが、父の意向が強く反映されて真の意味でのボトムアップはできていなかったかもしれません。しかしそれでは真に成熟した組織とは言えなくて、これからは個々人、あるいはチームごとに自立した組織づくりをしていくつもりです。入職2年目からフットケアチームや感染管理チームなどの10人前後のチームに所属し、通常業務とは別に活動して、2年目でも病院をリードするような活動に携わっていることを意識づけています。経営やコスト意識、病院のブランディングなどにもつなげようとしているところです。
組織横断的な取り組みによって、院内での職員間のネットワークがより強固なものになったという実感はあります。リーダーシップや幹部候補生のような人が現われつつあります。
これからの地域医療について、フットケアを例に出しますと、小さなケアをすることで下肢の大切断を予防する活動で、当初は当院のブランド化に非常に有効だと思って、5年が経過しているところです。ただ、視野を広げると、うちだけが先行しても、周辺に下肢切断が増えたら重症患者さんがうちに押し寄せてくることになり、やはり地域で下肢切断予防をしなければなりません。そこで、北九州でフットケアをしている病院と定期的に交流会や勉強会をし始めています。そこへ、フットケアチームが関わるようになり、同様にしてほかのチームも院外でさまざまな活動を始めています。これまで、ドクター間の連携や交流に比べ、メディカルスタッフの連携は十分に進んでいるとはいえませんでしたが、開催するごとに参加人数が増えて手応えを感じています。
透析医療を専門にしていますので、高齢者の最期を意識するような状況になっています。父が開院したころは透析の原因として腎炎が中心でしたので、若い透析患者さんがほとんどでした。今は高齢の糖尿病や高血圧の患者さんのほうが腎炎より多くなり、しかも腎不全は感染症や狭心症、心筋梗塞、動脈硬化性の病気にもなりやすいので、人生の終末期に向けて、すごく意識した医療をしていかなければならない状況になっています。
いま問題なのは、透析のために年間52週×3回=156回の通院が必要であることがネックとなり、通院困難をきたすことです。でもすべての患者さんを入院させるだけのスペースがありませんから、病床を確保し、介護施設を作ったり、透析患者さんの訪問看護をしたり、というようなことが今後は必要になってくると思います。社会貢献という面からもそこは大事です。
慣れない経営については壁にぶち当たることの連続ですが、そのたびに父の偉大さを思い知らされます。合併症や高齢化など、透析医療における課題は山積みですが、父を見習って「果敢にチャレンジ」していきたいと思っています。