医療法人 明石会 曽根病院 曽根 勝 理事長
当院の概要
整形外科、脳外科、内科の3科を設置し、それぞれに医師を複数置いています。
また、住宅型有料老人ホーム楓林、デイケアセンターふうりん、居宅支援事業所ひとときという関連施設があり、訪問介護ステーションを持つのも当院の特徴です。
当院はまだ15対1看護体制を敷いていますのでこれを13対1にすべく取り組みをしているところです。平均在院日数についても、整形や脳外科については長くなりがちです。在院日数を抑えようとする現在の制度には馴染みにくい点もありますが、国の方針でもあるのでなんとか基準に近づけたいと考えています。
医療費抑制について
日本の医療制度は世界でも最高レベルにあります。しかし、この制度を維持するために莫大な費用がかかっていることが国の財政を圧迫しています。国としてもこれ以上の医療費増を認めるわけにはいかず、来年からは思い切った切り詰め策を打ち出してくるとみています。大分県内の病床の23パーセントを減らすという話もあり、最悪の場合、「病床を減らすのか、病院をやめるのか」という形で決断を迫られるのかもしれません。
われわれ団塊の世代が死に絶えた後で病床を削減するのは良いのですがこれから医療の需要が多くなる時期に削減するのはいかがなものかと思います。
TPP交渉が完結すれば、皆保険制度が廃止されて民間保険会社が取って代わる可能性もあります。そうなると、払っている保険の額、いわゆる持ち分で受けられる医療が決まってくるので、収入による医療格差も生まれるでしょう。医師が保険会社に電話して「どこまで治療したらいいですか?」と訊ねるアメリカの笑い話のようなことも現実化するかもしれません。怖ろしい世界が待っていて、病院が独自に将来構想をたてるのはなかなか難しい。
後進の医師たちへ
中津藩の御典医で中津医学校の初代校長である大江雲澤の言葉に「醫不仁術欲努為仁」(医は仁ならざるの術、務めて仁を為さんと欲す)というものがあります。
よく「医は仁術」と言われますが、たとえば骨折した患者さんの身体にさらに外傷を加えることをみても医は元より「不仁術」だと思います。
薬にしても本来は毒であるものをタイムリーに適量を与えることで薬になる。
だから、仁ならざる行為になりやすいということを常に頭に置いて、不仁を仁に変える努力をしなければなりません。勉強して腕を磨いて達人と呼ばれるほどにならないと仁に変えることはできない。自覚と研鑽を忘れないでほしいですね。