福岡市南区の九州がんセンターが、外来待ち時間の短縮に取り組み、成果を上げている。
目標とした、受付から会計終了までの在院時間「2時間以内」をクリアできた割合は、2012年の46.1%から2014年の74.7%へと大幅アップ。
同センターによると、待ち時間短縮で患者の不満が減り、その対応に追われずに済むようになった職員の疲労感も減るなど、メリットは大きいという。
「待ち時間短縮」の秘訣は医療者目線から患者目線に
長い人は4時間待ち 「予約時間はあってないようなものだった」
九州がんセンターが外来待ち時間短縮に本格的に取り組み始めたのは2012年。当時は、ある時間枠に何人もの予約が入っており、その中で早く来院した順に受け付けをしていた。そのため、患者は競い合うように予約時間よりも早く来院し、長い人は4時間待ち。当時院長だった岡村健・現名誉院長は、「予約時間はあってないようなものだった」と振り返る。
そんな状況に、当時の外来部長の大野真司医師(現がん研有明病院長補佐・乳腺センター長)が「歯科医院のように、患者さんが予約時間に来院し、来たらすぐに診察、終わったら帰るというシ
ステムにならないだろうか」と問題提起。大野部長、今村繭子外来看護師長、小野菊世同副師長が中心となり、現状調査からスタートした。
調査項目は患者ごとの予約時間、会計時間、診察室滞在時間のほか、各検査自体に必要な時間や結果が出るまでにかかる時間など多岐。医師がどの時間帯に何人の予約を入れているかといった予約の取り方や、医師が外来の診察室に来た時間にも及んだ。調査の途中では、診療情報管理士の伊藤裕子さんも加わり、集まったデータを分析した。
■判明した思わぬズレ
そこで浮かび上がった課題が「予約時間」の認識のずれ。医師によってとらえ方が違い、ある医師にとっては、その患者の診察を始める時間。ある医師にとっては患者が病院に来る時間だった。
さらに午前8時半から同9時の予約枠に、午前中に診察するつもりの患者10数人の予約をすべて入れているケースなど、予約の取り方にも医師によって違いがあった。
■医師中心を患者中心に
これらの結果を受けて、医師に説明を繰り返し、「予約時間=受け付け開始時間」と認識を統一。各医師の診察時間などを考慮し、予約できる人数を1時間当たり2〜4人に制限した。また外来受付機の設定を変更し、予約時間以降でないと受け付けできない設定に。これによって、患者が予約時間よりかなり早く来院することもなくなった。
「予約時間を医師が診察をする時間ではなく、患者さんが病院に来る時間にした。医師中心ではなく、患者さん中心に考え方を変えたということ」と名誉院長。大きな経費をかけることなく、在院時間短縮に成功し、患者が何もせずに待つという無駄な時間も激減した。
「本当にできるかな、できたらいいな、と思っていたことが実現した」と伊藤さん。「在院時間2時間超、2時間30分以内の患者さんが16%いる。その方たちが2時間以内に帰れるように努力したい」と話している。
患者さんの満足度が増してうれしい
3月まで九州がんセンター臨床研究センター長だった大野真司 がん研有明病院院長補佐・乳腺センター長
「患者さんの不安を減らしたい」。これが2 時間外来のスタートでした。待ち時間が長くなるにつれて不安も増していきます。「受付から診察までの外来待ち時間」から「受付から会計までの外来在院時間」への発想の転換によって全職員の共通目標「2 時間外来」が実現し、患者さんの不安が軽減して満足度が高まっていることをとてもうれしく思います。