すべては患者さんのために - 建学の理念を具現化する / 学長就任から1年。新病院建設と危機管理システムについて聞く

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藤田保健衛生大学 星長 清隆 学長

1975 慶応義塾大学医学部卒業 慶応義塾大学泌尿器科学教室入室 1976 国家公務員共済組合連合会立川病院泌尿器科 1977 国立大蔵病院外科 1978 都立清瀬小児病院泌尿器科 1982 国家公務員共済組合連合会立川病院泌尿器科 1983アメリカ・ヴァージニア医科大学移植血管外科フェロー 1986 都立清瀬小児病院泌尿器科 1990 藤田保健衛生大学医学部泌尿器科 講師 1994 藤田保健衛生大学医学部 泌尿器科助教授 2000 藤田保健衛生大学医学部泌尿器科 教授 2006 藤田保健衛生大学病院 副院長 2009 藤田保健衛生大学病院 病院長 2014 藤田保健衛生大学 学長

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―学長に就任されて1年になります。

 本学は、昨年50周年を迎えた比較的新しい大学です。創設者の藤田啓介は優れた生理学者であり医師でもありました。学長に就任するに際しては彼の理念の具現化を第一に考えています。

 その理念とは、「我ら、弱き人々への無限の同情心もて、片時も自己に驕ることなく医を行わん」という言葉に表されているように、究極の優しさを追求した、患者さんの立場に立った医療をやりましょうということだと考えています。本学の卒業生を指導していても教育理念の浸透を感じていたし、私自身もそれが医の原点だと思います。

― 大学改革、大学病院改革について。

 「獨創一理」という建学の精神を守っていくことこそが本学改革の基盤にあると考えています。

にはソウル大学と合同シンポジウムを名古屋で開催しますし、9月には主に外国人向けの大学院を設立します。アメリカの著名な病院に連携をお願いしていますので、教授を招聘することもあるでしょう。

 本学では、学生の授業にTOEFLを取り入れたり、希望する学生にはアメリカの外国人向け医師資格であるECFMG(Educational Commission for Foreign Medical Graduates)を大学の費用で受験させるという計画もあります。海外で活躍したいと希望する学生には大学として可能な限り援助していきます。

― 病院のあるべき姿。

 患者さんの満足度が高い病院が理想ですね。病院長時代に常に職員に伝えていたのが、病院で働くということは、第1にFor the Patient(患者さんのため)であるべきだということ。そして次にFor the Public(公共福祉のため)が来る。Forthe Hospital(病院のために)を考えるのは3番目でいいんだと。この順番を間違えると困るんですが、すべてのことをこの順番で考えて判断していれば、たとえその判断が間違ったとしても社会から悪しざまに言われることはないんです。

― 大学病院の危機管理体制が問われています。

 病院長時代にもっとも力を入れたのは危機管理です。医療事故はないにこしたことはないが、当院では手術件数が年間に11,600件くらいあります。県内では最多ですし、全国的にもかなり多いほうですから、マイナーな事故も含めるとどうしても医療事故は起きてしまう。

 まず、事故が起きた際には、その場にいた全員から医療安全部に報告を上げ、すべて私に報告が入ります。

 年間4,000件程度の報告が上がりますが、問題のある事故だと判断された場合はただちに院長が主導して緊急会議を開催します。さらに重過失が懸念される場合は、外部の方を委員長にお迎えして調査委員会を設置する。その際に、委員会のメンバーは外部が3なら内部を1とするなどし、「隠さない、全部表に出す」という方針を徹底しています。医療過誤については、公表することこそ危機管理であるはずなんです。

 最終段階でのチェックとして、当院で亡くなられた患者さんについてはすべてリストに基づいて確認し、疑わしいところがあれば病院から出さないということを徹底しています。病院ぐるみで隠ぺいして社会的な問題になるようなことはシステム的にありえない。

― 新病棟の特徴。

 災害と救急に軸足をおいています。ヘリポートを備えた完全免震で、想定できる最大の震度でも機器が壊れない構造を採用しています。

 ドクターヘリが到着するとエレベーターでICUに直通し、オペ室に入れるようになっています。感染症が疑われる方専用のエレベーターも設置しました。

 これから建てる病棟はリハビリ施設や精神科や緩和病棟などを備えており、どちらかといえば急性期ではない患者さんを専門に対応できるようにする計画です。

― 初の地域包括ケア。

 医学部をもつ大学としては全国で初めて、2年ほど前に地域包括ケア中核センターを創りました。半径10キロ程度の医療圏を想定していましたが、現状では患者さんが多すぎてお手上げ状態です。

 採算度外視で実験的に始めたんです。厚労省も文科省もはじめは反対したが、高等教育課で直接交渉して「国は超高齢化社会に対応しろといっている。大学病院で治療法を率先して開発しないとどこがやるのだ。これは教育だ」と言うと、それでやりましょうと(笑)。

 最新医療にも当然力をいれています。ダ・ヴィンチ外科手術システム(da Vinci Surgical System)については最新のXi機が訓練センターに入りました。導入することで全国から優秀な外科医に来ていただけるので最先端医療には可能な限り資金を投入します。

 先端医療以外に、幅広く理念を実現するため、日本初の緩和ケア病棟を作りました(七栗サナトリウム・三重県)。日本で初めての大学運営によるホスピスです。藤田の理念である「やさしさ」の医療の具現化でしょう。

 救急体制では、救急医が40人程度在籍しており、この地区では最大規模を誇ります。365日24時間フルオープンしていますので、藤田に来れば助かる命はすべて助けるという体制を確立したい。当院では救急車を断ることはありません。私が院長だった時代は、もし断った際には、断った理由について報告書を提出させていました。

― 危機管理システムをはじめ、徹底して患者さん側に立った病院を目指されています。

 学長であり、病院長経験者として、本学と当院が患者さんに支持されているかどうか、常に気にかけています。いい加減なことは絶対に許さないので、職員や医師からは嫌われているかもしれません(笑)。

 しかし、患者さんに支持されるのであればそれも甘んじて受けましょう。あの方(創立者:藤田啓介氏)の理念に、いわば惚れてここに来た以上、それも私の運命だと覚悟を決めています。


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