高知県糖尿病療養指導士制度がスタート

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高知大学医学部 内分泌代謝・腎臓内科学講座(糖尿病・代謝内科) 藤本 新平 教授

1991 京都大学医学部卒業 1994 北野病院内分泌・代謝内科医員 2010 京都大学医学研究科糖尿病・栄養内科学准教授2011 高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科(糖尿病・代謝内科)教授 平成23 年度日本糖尿病学会賞受賞
■日本糖尿病学会学術評議員、中国四国支部幹事、高知県支部支部長 高知県糖尿病療養指導士認定機構中央委員会委員長

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―4月から高知県糖尿病療養指導士制度がスタートしました。

 糖尿病治療は次々と新しい薬剤が開発され格段の進歩を遂げましたが、血糖管理は生活習慣の改善が基本であり、薬物治療は補助的なものにすぎません。生活習慣が遵守できていない場合、薬物療法の効果は著しく弱まります。糖尿病の血糖コントロールをおこたると生命余後が悪くなったりさまざまな合併症を引き起こし生活の質を著しく損なってしまいます。

 生活習慣は患者さんの嗜好、生活背景、人生観などに密接に関係しており、行動変容を促すためには、多くの時間を割く必要があります。診察時間が限られる中、医師の力だけでは生活習慣に深く関与することは困難です。そこではチーム医療が求められ、看護師、栄養士などの他職種と連携し、情報を共有し、多面的な角度で患者さんにかかわる必要があります。

 日本糖尿病療養指導士(以下、CDEJ)という資格がありますが、これは糖尿病治療に大切な自己管理を患者さんに指導する医療スタッフのことです。高度な専門知識を持ち患者さんのセルフケアを支援しています。

 ただ資格取得が可能な職種が、看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師、臨床検査技師と限られ、施設条件も厳しく、実際には糖尿病専門外来を実施している病院や専門クリニックに勤務していなければ取得が困難です。また高知県においては指導士が県中央部に集中するなど地域的な偏在も問題です。

 糖尿病の予防・診療において、今後は地域格差が広がると予想されており、県の糖尿病医療体制会議でも大きな問題として取り上げられました。

 今年4月には待望の高知県糖尿病療養指導士(以下CDE高知)の認定機構が発足し、私はその機構の中央委員会委員長を拝命致しました。CDE高知の位置づけはCDEJと同じですが、より資格取得可能職種を拡大し施設条件を緩和することで、より多くの指導士を養成することが可能になりました。

  CDEJの認定対象者が前述の5職種なのに対し、CDE高知は、保健師、助産師、准看護師、調剤薬局を含む薬剤師、栄養士、歯科衛生士、視能訓練士、介護福祉士を加えた12職種にまで対象を広げました。

 注目していただきたいのは、介護福祉士を認定対象にしたことです。超高齢化社会において今後一層介護人口の増加が予想されます。行政よりは医療、介護一体化を求められており、社会全体で介護・医療を支えていかねばなりません。したがって今後、糖尿病患者が介護領域に急増すると考えられます。

 現在、介護の現場には糖尿病の知識がある人が少ないのが現状です。正しい知識を持った指導士が現場にいることで適切な対応をとることが可能になります。

 各地域で指導士のネットワークを構築し、多職種で顔が見える連携を行なっていかねばなりません。各職種が地域で勉強会を行ない具体例を検討して活発に意見を出し合うことが重要です。

 ある地域で当てはまることがどの地域にも当てはまるとは限りません。現場で活発な意見を出し合い、改良していく、その基盤をつくるのが当制度だと考えています。

 郡部では医療者と患者さんの距離が近く、顔と顔が見える関係性を築けています。指導士が増えて、ネットワークが確立されれば、よりスムーズな動きができ、早期発見が可能となります。地域が一体となり取り組んでいくことこそ重要なのではないでしょうか。

 糖尿病の誤った情報がマスコミなどで紹介されることにより、効果が期待できない健康食品にはまってしまう人もいます。正しい知識を持った人がアドバイスすることが重要ですし、統一された情報をいろいろな人から得ることで患者さんに正しい知識が伝わります。

 今年の資格取得者は269名でした。初年度としては、まずまずの数だと思います。今後も資格取得者が増えるように、また、資格習得者がスキルアップを実現できるように努力を続けます。

―糖尿病の啓発活動について教えてください。

 国連が糖尿病の全世界的脅威を認知する決議を2006年に採択しました。同時に11月14日を「世界糖尿病デー」に指定し、世界各地で予防、治療、療養を喚起する啓発運動を推進することを呼びかけました。

デーに高知城を国連のイメージカラーであるブルーにライトアップする啓発活動が継続されています。市民公開講座も世界糖尿デーの前後に行なっていて、今年も11月15日に開催される予定です。

 私は日本糖尿病協会高知県支部として、これらの啓発活動を引き続き支援していく所存です。

―医師として心がけていることは何ですか。

 マスコミにおいて「算術医」などの批判がみられることもあり、また医療費の高騰により商業主義的な傾向を求められることもあるようです。しかし経済ベースで効率を追求しすぎるのは患者さんを不幸にしてしまうし弊害しか生み出しません。

 医師がもっとも大事にしなければならないのは確固とした倫理観を持つことではないでしょうか。

―糖尿病領域の特徴と魅力とは何でしょう。

 糖尿病は慢性疾患なので、患者さんと長く付き合う必要があります。循環器や消化器などの急性疾患の場合、瞬時に判断、対応しなければなりませんが、この領域は現時点で状態が良くても、5年後、10年後はどうなるかわからないので長期的視点が求められます。また近視眼的ではいけません。「木を見て森を見ず」だと治療が間違った方向へと向かってしまいます。

 じっくり考え、個々の患者さんに応じた適切な医療を行なう点が特徴的で、診療だけでなく啓発活動やシステム作りなどフィールドが幅広いのも魅力です。

 糖尿病研究は基礎的には常に医学の最先端をなしてきました。また近年、次々と新しい薬剤が開発され、臨床で薬剤をどう使うかの検討もしなければなりません。

 薬の投与以上に患者さんへの療養指導を徹底しなければなりません。療養指導は人間学です。地道な作業ですが、どんな指導を行なえば最適な医療を提供できるか研究の余地があります。

 超高齢化社会を迎え、糖尿病を含む生活習慣病は今後ますます増えてきます。とても奥深く、やりがいのある領域なので門を叩いてくれる人がひとりでも多く現れることを願ってやみません。


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