赤磐医師会病院 佐藤 敦彦 院長
■所属学会 日本消化器病学会指導医・専門医 日本超音波医学会指導医・専門医 日本肝臓学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本内科学会認定医 日本医師会認定産業医
―この春、院長に就任されました。今の抱負は。
当院はもともと医師会の先生方の治療のお手伝いをすることから始まっています。
でも、昨年、赤磐市民病院(旧町立熊山病院)が閉院し、無床診療所となってしまいました。地域で診療する公的病院がなくなってしまったんです。そのため、当院に地域医療、公的病院としての役割が加わりました。
医師会立の病院として、開業されている先生方をサポートする一方で、地域医療をしっかり支える。その2つをバランスよくやっていくことが求められていると思っています。
当院は開院当初の30年前からずっとオープンベッドシステムをとっています。開業医の先生がこの病院に足を運び、患者さんを診療してくださっているんですね。
ですから、この病院での治療が終わった患者さんは、きちんと開業医の先生にお返しするという流れをつくっていくことも当院の役割です。
地元の開業医の先生は、患者さんをよく知っていて生活面からバックアップしています。これは、病院勤務のわれわれにはなかなかできないことだと思います。
時代がどんどん変わり、最近になって、「病診連携・病病連携」が言われるようになってきました。当院は病診連携という言葉が出てくる前から、開業医の先生方と連携してきました。この素晴らしい歴史、先見の明のあるシステムを引き続きやっていくというのも大切なことだと思います。
―新病棟が完成しました。
昨年、赤磐市民病院が無床となるのに伴い、当院を49床増の245床とする認可を頂きました。増床分を新築、残りのスペースを改築し、この2月にオープンしたという流れです。
ただ、まだまだ医師不足が深刻な問題です。岡山市内から車で30分程度と、さほど遠くないのですが、医師はどうしても岡山市内に集中してしまう。しかも当院は、へき地医療支援病院という側面もあり、医師不足でありながら、赤磐市の北部の国保診療所など、さらに医師が不足している場所に医師を派遣する役割も果たしているんです。
地域の診療所などは効率という面ではよくありませんが、そこに医師を派遣し診療所を守ることはその地域を守ることにつながります。医師派遣は大変さもありますが、日本全体で見ても必要なことで、そのような役割の一助を担えることに誇りも持っています。
―これから医療者、病院に求められることは。
今は機能分化が進むあまり、患者さんの全体像を診る能力が低い医師が増えていると思うんです。でも、これから高齢の患者さんがますます増えてきます。そうすると細かい専門性よりも、むしろ全体を診ていく能力が要求されてくると考えられます。
当院の医師はそれぞれ専門性を持ちながら、なおかつ総合診療をメインにやっています。患者さんを広く診ることができる、そんな医者を目指す人と一緒に仕事をしたいですね。
現在、岡山市内の病院にお願いしている「高度先進医療」に関しても、当院が得意な領域を作り、一部でも手掛けられるようにしたいという気持ちがあります。
それから、患者さん、地域の人たちが安心できる病院にするのが目標です。高齢化社会がものすごい勢いで進み、多死社会を迎えています。病院で患者さんが治療を受けられることがもちろん大切ですが、亡くなっていく人もたくさんいるわけです。
国は在宅へ移行しています。でも、家族の介護力の問題などもあって、自宅で最期を、と積極的に望んでいる方はどのくらいいるのでしょうか。
「どこで最期を迎えるの?」という問題、ニーズがこれからは加速度的に増えてきます。これまでは病院で患者さんが亡くなるのはタブーな面がありましたし、医者は「負けた」という意識を持っている部分がありました。でも、これからの高齢化時代では、「安心して亡くなる場」を提供する、そういう役割も出てくると思います。