経営理念が生み出すオンリーワンの病院

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一般財団法人 操風会 岡山旭東病院 土井 章弘 院長

■略歴 1965 鳥取大学医学部卒、岡山大学医学部脳神経外科入局 1970 米ペンシルベニア大ブロードストリート病院留学 1973 岡山国立病院 1975 香川県立中央病院脳神経外科主任部長 1988 岡山旭東病院院長。

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 木の色味が温かい院内。ベネチアンガラスのアート作品や生け花、絵などが飾られる。水槽にメダカが泳ぎ、イスなどが置かれた温室「めだかの学校」では、やわらかな日差しの中で、患者や家族がゆったりと時間を過ごしている。

 岡山市にある岡山旭東病院。脳・神経・運動器の疾患を診る総合的専門病院(202床)として、高度医療を提供するとともに「アートと医療の融合」など癒しの環境づくりにも積極的に取り組み、患者・職員に優しい病院を目指す。その先頭に立つのが、土井章弘院長だ。

 病院の始まりは60年ほど前。土井院長の父とおじが、結核病院としてスタートさせた。1983年、現在地への移転と同時に院長の弟の基之・現副院長がトップの旭東外科医院に。88年、現院長の就任に合わせ、院長の専門である脳神経外科と基之副院長の専門の整形外科を合わせた現在の形となった。

 「それまでは県立病院の勤務医。経営をしたことも興味もなかった」と土井院長。さまざまなセミナーに出て経営を学ぶ中で中小企業家同友会の「人間尊重の経営」に出合った。

 同会で、経営理念を定め、方針を立てて具体化する大切さを学んだ。そして、当時の病院職員と議論を重ねて定めた理念が、「安心して、生命をゆだねられる病院」「快適な、人間味のある温かい医療と療養環境を備えた病院」「他の医療機関・福祉施設と共に良い医療を支える病院」「職員ひとりひとりが幸せで、やりがいのある病院」の4つだ。

理念を基に全員参加で病院経営

 理念を具体化するための「経営指針書」を初めて作ったのは1990年。職員全員で指針書づくりに取り組むようになったのは92年だった。現在の形式になったのは97年。土井院長は当時を「このままでは病院経営が危ういかも、と本気になったのがその時期だった」と振り返る。

 今は、翌年度の指針書を作るため、前年11月に全職員がそれぞれ素案となる経営戦略を立てる。その案を各部署でまとめた上で、経営幹部と各部門長が議論し、経営方針を決定。さらにその経営方針を基に経営計画が練られ、最終的な経営指針書ができる。

 指針書の内容は全職員が共有し、部門ごとに進捗状況をチェック。サーバー上で管理され、達成状況も共有できるシステムになっている。

共に学ぶ環境づくりで"人育て"

 もう一つ、特徴的なのが人材教育。「強いリーダーシップだけでは、経営はうまくいかない。人育てが1番大事」と、共に学ぶ、学び合う環境づくりに力を注いできたという。

 総収入の約1%を教育に使い、学術書をそろえるほか、学会への参加・発表、外部団体による研修への参加、先進的な取り組みをしている企業や病院への視察などにあてる。

 例えば院内での一般研修では全職種が集まり経営理念や教育についてディスカッション。「医療従事者は、いい診断、治療をするためのテクニカルな部分を磨くのは得意だが、協調性などノンテクニカルな面を向上させるのは苦手。だからこそ、その不得意だけれど大切な部分の教育に特に力を入れている」と言う。

 病床202床に対して職員数は570人。理念を共有するため職員はほぼ正規採用で「ワーク・ライフ・バランス」も重要視。離職率が低く、自然と職員が集まる病院になりつつあるという。

 「見える化」も意識し、退院時アンケートの結果はホームページなどで公開。病院機能評価、臨床検査室の国際基準を満たしていることを示すISO15189、環境保全に貢献する企業に与えられるISO14001など、第三者の評価も受け、2013年度には経産省の「おもてなし経営企業選」にも選出された。

今も夢に向かって

 PET―CTやMRを岡山県内で初めに入れるなど高度医療機器の早期導入にも積極的。機器の共同利用や学生の職場体験などにも応じている。

 さらに、「病院は病気になったら来るところではなく、集う所であってもいい」(土井院長)という考えから、病院見学ツアーや、コンサート、職員による健康教室やガーデニング講座、さらには病院で出た生ごみから作る堆肥の無料配布など、地域の人を対象にしたイベントも多い。

 地域の医療機関や健康に関する情報が手に入る「健康の駅」やカフェも充実。それらの情報を集めた「癒しの環境マップ」を手に院内を巡り、写真を撮る人の姿もあちこちに見られる。

 それでも「まだまだです」と語った土井院長。エネルギーの源は、という問いに、照れたように「夢、ですかね」とつぶやいた。


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