アクロス福岡で第72回 九州連合産科婦人科学会 / 第66回 九州ブロック産婦人科医会

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 福岡市中央区天神のアクロス福岡で6月6日と7日、第72回九州連合産科婦人科学会(加藤聖子会長)と第66回九州ブロック産婦人科医会(片瀬高会長)が開催され、九州の産婦人科医およそ300人が参加した。運営事務局は㈱MAコンベンションコンサルティング(東京都千代田区)。

 6日の特別講演、7日の学術講演会を聴いた。

日本の克服すべき最大の問題は少子化母親と乳幼児に愛着形成の援助が必要

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木下勝之・日本産婦人科医会会長

■ 日本産婦人科医会 木下勝之会長

 6日午後5時50分から日本産婦人科医会の木下勝之会長が、「これからの産婦人科医療の課題」と題して、およそ1時間講演した。座長を片瀬高会長が務めた。

 木下会長はまず、日本における死因の変化を取り上げた。「20世紀半ば以降、感染症が激減し、癌、脳血管障害、心臓病など非感染性疾患が3大死因となった。糖尿病、高血圧、脂質以上症、肥満などがさまざまな病気の原因となるため、早期に介入して生活習慣を改善すれば、重篤な合併症の予防になる」とした。そのうえで「国民皆保険制度の導入で国内のどこでも同じ医療を受けられ、世界一の長寿国になった。しかしそれはこれまでのことで、日本の克服すべき最大の問題は少子化。

2050年には生産人口の1人が高齢者1人を支える時代になり、税収と保険料収入の減少で、国民皆保険制度の維持が困難になる」と語り、「これからの医療の方向性は、これまでの延命主義ではなく、生活の質を重視し、平均寿命よりも健康寿命を延ばすことで、介護を必要とする人口の減少を目指すこと」だと述べた。

 そして、「ゲノム医療の進歩に基づく個の医療、症状が出る前に治療する先制医療によって病気にならないようにする時代が来る」と期待し、産婦人科領域における先制医療の対象として骨粗しょう症と乳がん、卵巣がんを取り上げた。

 また地方創生について、国は「結婚・出産は個人の決定に基づくものであることを基本としつつ、結婚・出産・育児について希望を持てる社会が形成されるよう環境を整備」するとしているが、具体的な中身はなく、各地域の産婦人科医会や学会が、若者が安心して妊娠・出産・子育てをするために、周産期医療供給体制をいかに整備するかに関して構想を立案し、行政に対して提言して実現を図る必要があると語った。

 これからの周産期医療体制について木下会長は、産婦人科医数は、平成6年以降で過去最大となっており、小児科医数も増加している。また小児科と産婦人科の女性医師の割合も高い。しかし分娩取扱医師、産婦人科医師、小児科医師の地域間格差、地域内格差が存在しており、その解決策が見出せていないようだと話した。

 新たな専門医制度にも触れたあと、産後のうつ病をどうするかについて木下会長は、妊婦検診の時にスクリーニングして早期発見することだと述べ、産婦人科と精神科のネットワークを構築し、予約なしで診療が可能な体制の確立が急がれるとした。

 最後に、「乳幼児の治療は母親の治療につながる」として、「母親と乳幼児の関係性障害の本質をたどって行くと、愛着形成がないことがわかり、愛着形成の援助が必要となる」と述べた。そしてResilience(回復力)という言葉を紹介し、「子供が困難を乗り切ろうと必死に努力している時に力強く支える親や養育者によって身につくもので、乳幼児期に孤独や身体的虐待、ネグレストが長く続くと、脳の構造上の変調をきたすことが明らかになっている」として注意をうながした。

下川元継室長が臨床試験の統計学、後信教授は産科医療補償制度を解説

 7日の学術講演会/指導医講習会は最初に九州がんセンター腫瘍統計学研究室の下川元継室長が、臨床試験に必要な統計学について話した。座長を九州大学医学部保健学科の加来恒壽教授が務めた。

 下川室長は「臨床試験の基本は、第Ⅰ相から第Ⅲ相まで比較。患者の利益のために、有効性と安全性を比較する」として、本質的にばらついたデータから得られる結果の信ぴょう性や得られたデータが評価に値するのかという問題について、①エンドポイント、②試験デザイン、③統計解析方法、④症例数設定、⑤割付(盲険化とランダム化)、⑥解析対象集団の6点に分け、実例を交えながら概説した。

 続いて九州大学病院医療安全管理部の後信教授が、「医療安全の推進における産科医療補償制度の役割について」をテーマに講演した。座長は福岡大学医学部産婦人科学教室の宮本新吾教授が担当した。

 公益財団法人日本医療機能評価機構執行理事でもある後教授は、産科医療補償制度が創設された背景には、過酷な労働環境や医事紛争の増加で、地域によっては産科医療が崩壊してしまう状況があると説明した。そして、「補償」と「原因分析・再発防止」の2つの大きな機能についてそれぞれ解説し、「平成21年1月に開始したこの制度は産科医療という限定的な分野だが、医療行為に関する無過失補償制度はわが国にこれまでにない制度。その意義は大きく、産科以外の学会からも関心を寄せられている。わが国に定着させる制度として発展させることが課題」とまとめた。


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