日本産婦人科医会の木下勝之会長が産婦人科医の集いで、「乳幼児期に孤独や身体的虐待、ネグレスト(養育の放棄)が長く続くと、脳の構造上の変調をきたすことが明らかになっている」と語るのを聞き、複数の顔が思い浮かんだ。
共に父親を神格化し、「父だけがこの世で聖人」と言い切るほどで、「だからほかの男を私は許してやっている」とも言った。
彼らの父親はかつて大きな組織のトップにあった人物。ひょっとすると働き盛りのころ、我が子に向き合う姿勢に欠けていたかもしれない。だから成人してずいぶん年月が経つのに、子供は今も父の影にひれ伏す。
猿の研究によれば、母親に抱かれ飽きた小猿は自ら親を離れて兄弟と遊び始め、それにも飽きるとほかの猿と戯れて、ついには配偶者を求める行動になるという。
人間にも正常な発育段階というものがある。むろん個性として、あるいは多様性として違いはあるにしても、異常なまでの親への帰依、強い従順さがある人には、木下会長の言葉が当てはまっているかもしれない。