「予防」の視点を

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医療法人財団 聖十字会 聖ケ塔病院 定永 恒明 院長

1987 年慶應義塾大学医学部卒、同大学院医学研究科内科学専攻。1995 年米ノースウエスタン大学(内科)客員講師、1997 年米シカゴ大学(循環器)研究員の後、熊本大学大学院循環器病態学医員、健康保険八代総合病院心臓血管診断部長、熊本市立植木病院循環器内科部長などを経て2014 年4月より現職。日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医。Journal of Electrocardiology 編集委員

熊本市西区河内町にある医療法人財団聖十字会聖ケ塔病院。JR熊本駅からバスで約40分のところにある。定永恒明院長は、この4月で就任から丸1年。同院の特徴や地域での役割を聞いた。

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院長室にはアカヒレやミナミヌマエビ、クワガタなども。「ヒトも含め、生物は不思議で魅力的です」と定永恒明院長。

―病院の概要を聞かせてください。

当院は1947(昭和22)年、山本医院として開院しました。51年に医療法人財団聖十字会「聖ケ塔療養所」を設立。長く結核療養所だったと聞いています。62年に聖ケ塔病院へと名称を変更。法人としては89年に熊本市長嶺町に西日本病院を開きました。当院は回復期、維持期を中心に診療を行なっています。眼前にはみかん畑の山が控え、背後に有明の海を臨める大変恵まれた環境の中に建つ病院です。

―就任から1年。最近の動きは。

従来は長期療養の方が多く、10年以上入院している方もいたのですが、2014年度から在宅復帰を目指す方向に転換しました。昨年10月から院内体制を見直してきています。

病床数は339から300にし、減らした39床は西日本病院へ移しました。新規で受け入れた患者さんの在宅復帰率は約7割。だいぶ回転するようになってきており、個人的には「本来の医療のあるべき姿に近づいてきている」と感じています。

ただ、在宅復帰の方針に困っていらっしゃる患者さんがいるのも事実です。壁の一つが経済的な問題。施設に移るよりも病院に入院している方が経済的負担の軽い場合も多い。それでは24時間、医師、看護師がいる病院にいたほうがいいと考える患者さん、ご家族がいても仕方ないのではないでしょうか。その点を解決しなければならないのでは、という思いは実感としてあります。

―特徴は。

医療ソーシャルワーカーが訪問リハビリや訪問看護の調整、患者さんが自宅に戻ることができるための障害の克服に積極的に取り組んでいます。また、在宅復帰のための家屋調査にもリハビリスタッフとともに行き、細かい部分までしっかりチェックしています。

リハビリも高い評価を受けています。スタッフは現在48人。みんな若くて元気なので、患者さんからすると孫のような子たちが一生懸命やってくれているというような感覚があるのかもしれません。多くの患者さんが元気で退院していかれます。

例えば、肺炎にかかり急性期病院で治療を受けて、食べられない、動けないという状態でこちらに入院された患者さんが、2〜3カ月の間にだんだんと中心静脈栄養を脱し、経鼻経管栄養の管が抜け、口から食べられるようになり、歩いて自宅に帰られています。

長年、食べられない、動けないという状態だった方を食べられるようにするのは難しいですが、亜急性期に行なう医療リハビリは私たちの病院の得意とするところです。

今は玉名市の公立玉名中央病院の他、国立病院機構熊本医療センター、済生会熊本病院などから患者さんをご紹介いただいています。

―今後の目標は。

リハビリテーションの語源はラテン語で「re habilis」。再び適した状態に戻すという意味で、障害のある部分や弱っている部分を元に戻すということです。

しかし、高齢期のサルコぺニアのように、運動、筋肉トレーニングなどで予防できるものもあります。今後は、地域に出向いて攻めのリハビリ、予防的なリハビリに取り組んでいきたいと考えています。

当院の位置する熊本市西区河内・芳野地区の人口はおよそ6千人。その範囲で元気な高齢者づくりを支え、そして地域住民から顔の見える病院になっていきたいと思っています。

―院長の専門分野は

循環器内科です。性格的に外科系だと思ったのですが、残念ながら不器用だった。でも結果が早く出るのがいいと思い、それなら心臓、循環器だと選びました。その中でも心電図が専門です。心電図はものすごく深い。心電図を解析することで、心臓の形、大きさ、不整脈の診断や心筋虚血の有無の把握はもちろん、さらには電解質(カリウム、カルシウムなど)異常の有無など、いろいろな情報が分かるんです。その難しさや解明できた時の楽しさにひかれたのです。

―若い医師への願いを聞かせてください。

私は病気を診た時、なぜこうなるのか原因を考えます。病名だけで治療法を選択したり、マニュアル通りの薬を選んだりすることには抵抗がある。それでは「無難な治療はできるが進歩はない」と思うのです。

優れたガイドラインは多くみられます。ガイドラインに従った治療をすれば多くの場合うまくいくでしょう。しかし、ガイドライン通りの治療を行なってもうまくいかない場合があるのは誰もが経験することです。そのような場合にどのような対応をするのかが医師の実力の見せ所でしょう。現行のガイドラインが作成されるまでの過程を振り返ってみるのも一つの対応策かもしれません。

人体って不思議です。ですから若い人には病態を考え、対応を自分で考えることを繰り返してほしいと思います。それによって対応力が付きますし、新しい治療方法が考えつくかもしれません。それができるようになってほしいと思います。

さらに望むことは「予防医学」に対する視点を持つことです。若いうちは、おもしろく感じないでしょう。手術、循環器内科でいえば冠動脈形成術(PCI)やカテーテルアブレーションなどは魅力的で、みんな興味を持ちます。それはそれでとてもいいことだと思います。しかし、実際に本当に需要があるのはどこか。それは予防、病気をつくらないことではないでしょうか。生活習慣病は予防できます。高齢化社会は免れませんから、元気な高齢者をつくる、それも医師がすべきことだと思うのです。

予防医学は年齢を重ねてからもできますから、若いうちは「予防医学を無視しない」こと。手術も大事だけれど、予防も大事、という視点を持ってほしいと願っています。急性心筋梗塞患者にステントを挿入して救命することはもちろん大切なことですが、その患者さんがその後タバコを止めなかったらどうなるのでしょうか。そこが、ポイントです。


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