もっと自由度の高い病棟が必要

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室原良治 医療法人 室原会 理事長

1974 熊本県立熊本高校卒業 1981 京都大学医学部卒業、大阪赤十字病院、大阪北野病院循環器内科、京大付属病院第三内科、オーストラリアメルボルン大学オースチン病院研修(テーマ=心不全の新薬の研究)を経て1992 医療法人室原会菊南病院勤務、1993 同院長、2014 医療法人室原会理事長就任、現在に至る。

医療法人室原会は室原亥十二(むろはら・いとじ)現会長が1958(昭和33)年、当地に室原医院を開業。1967年に医療法人室原会室原病院、同72年に現在の医療法人室原会菊南病院となり、2014年に息子の室原良治医師が理事長を継いだ。

室原理事長に、地域との関わり方や2025年問題を見据えた構想などについて聞いた。なお創設者の亥十二会長は91歳。今も室原内科・小児科で診察している。

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「熊本の人は真面目すぎるというか、冗談が通じにくいところがあります。学生時代は関西にいたので余計にそう思うのかもしれません」(3月23 日、菊南病院の診察室で)

豊かさを知っている団塊の世代と価値観を共有するには...

このあたりは熊本市でいうと北区になります。若い人を中心に人口が増え、当院の近くに熊本北バイパスが3月28日に開通するなど、発展が見込める地域ですが、大きな公的病院がありません。そのため民間の医療機関が危機感を持ち、みんなで連携を強めていこうと、北区医療ネットワーク研究会をつくっています。いくつかの大きな病院だけが連携の中心になるのではなく、みんなでやろうという意識の強いドクターが多いです。

熊本は医療の連携がうまくいっている県として全国から注目されています。農業県ですから御上(おかみ)をたてまつるような県民気質があり、公的病院や済生会病院のような、いわば御上に民間病院が協力体制を築きやすいところがあります。そして民間病院同士は切磋琢磨する、というような感じでしょうか。これが他府県だと、どの民間病院も公的病院に負けないようなレベルでやろうとするから、連携がうまくいかないことがあるかもしれません。

―菊南地域とはどう関わっていますか。

一番中心に据えているのは診療を通して地域の方々に、私たち医師や看護師やスタッフが「ノーと言うことのないよう心を配ります」ということです。困って当院に来られたり連絡をいただいたりするわけですから、まず「イエス」があります。そして状況をおたずねして、うち以外を紹介する際も先方に連絡をしておくようにします。そこを心がけています。

当院は熊本市の地域包括支援センター「ささえりあ」の指定を受けており、スタッフが高齢者の自宅を回りますので、地域の情報は入ってきやすいです。市からの委託事業ですから当院に有利に運んではならず、公平・中立が求められます。でもそのほうが公平な目で見られますから、かえって地域が見えやすいんです。それでニーズが見え、我々が何をやるべきかがわかってきます。

在宅の高齢者をサポートするサービスについても、一般的にやられているようなサービスに当てはまらないニーズもいっぱいあり、それにもアンテナを張って探りながら、提供するように努めています。私は往診によく行きますが、家にいられることの意義や要望をお聞きして、職員にフィードバックしています。

―2025年問題を見据えて思うことは。

今まさに生きることへの価値観が大きく変わりつつある時期だと思います。一つの例として、胃瘻(いろう)は、従来なら医師から勧められたら、寝たきりで意識がなくても延命のためにそれに応じる家族が多かったんです。でも今は選択肢の一つとして提案しても、ご家族から拒否されるケースが増えてきました。

自分のストーリーをご本人が定めてどこかに書き記しておいて、それをもとにご家族と医療者が判断する世の中がすぐそこに来ているように感じます。ただ、あらかじめ意思を示しておく制度が日本にはないんです。

だからせめて文書で自分の意思を明確にしておいてほしいと思います。それを見て、「そういえばうちのじいさんは管につながれるのはいやだと言っていましたからね」とご家族が思い起こされることが大切です。

1950年代、60年代くらいまでの亡くなり方は、ご自宅で、点滴などもせず、だんだん弱っていき、往診に行って脈で死亡を確認した時代でした。そのことが日本人の頭の中にまだ残っています。ところが最近のテレビドラマで、病院のモニターで死亡を確認するシーンがよくあります。選択肢は多いほうがいいですからどちらでもかまいませんが、本人の意思が大前提になります。

高齢化社会では、私たち医療者だけが見た患者さんの最期の時間を、ご家族にどう伝えていくかが大事になると思います。だから、亡くなられたあとにご家族があいさつに見えられた時、私に生前語られたことや思い出をお話しするようにしています。そうすると、私という第三者の目で見た患者さんのことをご家族が知らなかったりすることがあって驚かれます。それが亡くなられた方の人生を新たに彩り、膨らませることにもなるんです。つらい思い出に満たされて苦しんでいるご家族にも私たちは黙っているのではなく、つらいでしょうと言ってあげなければいけないのではないかと思います。そうしなければずっと抱えたままになるでしょうからね。

今後は在宅での看取りが増えてくることも視野に入れ、在宅を専門にしている医師や看護師が集まってカンファレンスをやる予定です。そこでは、「死」とか「終末」というようなとげのある言葉への対処も含めて、ご家族が少しでもつらい思いをしないでもすむようなノウハウ、実力を身につけるにはどうすればいいかを話し合うつもりです。

―大切にしている信条はありますか。

個人として目指しているのは「利他の精神」です。それを少しでも実践できればと思います。そして組織としては職員の雇用の確保とワークライフバランス。組織としても成長することで新たなニーズに応えたい。

団塊の世代の人たちは、おそらく世界でもっとも目が肥え、口も肥え、パソコンも使えて、なおかつ日本の良さも知っている集団です。この人たちに、これでよかったんだと思われるためには、よほどの高い価値観を提供できなければなりません。組織としてそれを目指しており、3年後くらいに、隣接の広場に、だれでも終末期を過ごせる自由度の高い病棟を建設する予定です。温泉もありますからね。病院の公益性、公共的な機能を広げていけたらと思います。


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