「世界最高」と米国の学会で評価 広島大の末田泰二郎教授(大会長)ら1000例に1例のアクシデント再現するシミュレータを開発

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「医工学治療の現状と未来」テーマに日本医工学治療学会第31 回学術大会【広島国際会議場などで】

日本医工学治療会の大31回学術大会が3月27日から29日まで、広島県広島市中区のANAクラウンプラザホテル広島と広島国際会議場で開かれ、医師237人、メディカルスタッフ244人、学生83人、要望演題などの招待者98人、呼吸療法セミナー116人、計778人が集まった。大会長は末田泰二郎広島大学大学院医歯薬保健学研究院外科学教授。運営事務局は㈱メッド(岡山県倉敷市)が担当した。

大会2日目午後からの総会、大会長講演「体外循環シミュレータの医療安全への対応」、シンポジウム「高齢化社会と透析のあり方」を取材した。

来年は山梨県からの美しい富士山見に来てと松田兼一山梨大教授

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大会長講演を行なう末田泰二郎広島大学大学院外科学教授。

総会では会計報告や事業計画案を報告可決したあと、来年3月18日から20日まで山梨県甲府市の甲府富士屋ホテルで開かれる第32回大会の松田兼一大会長(山梨大学医学部救急集中治療医学講座教授)が紹介され、松田教授は「ぜひ山梨県側から美しい富士山を見に来てほしい」と多数の参加を訴えた。

また2017年4月7日から9日まで島根県松江市のくにびきメッセで開催される第33回大会の大会長、島根大学腎臓内科の伊藤孝史診療科長が、「出雲大社は縁結びの神様。テーマを『えにしの糸で結ぶ医工学』にしたい」と抱負を述べた。

さらに第34回大会(2018年)の大会長に、埼玉医科大学総合診療内科の中元秀友教授が決定したことが報告された。

大会長講演「体外循環シミュレータの医療安全への応用」(座長=米川元樹札幌北楡病院外科)で、医工学に関する12の特許を取得している末田泰二郎大会長は、「人間は間違いを冒すもの。医療が高度化すると医療事故は増えるかもしれない。低侵襲と銘打った腹腔鏡手術で多数の死者が出た。医療ロボットのダ・ヴィンチは術者1人が操作部をのぞいてロボットアームで手術する仕組みで、消化器外科や呼吸器外科の分野では死亡例も日米で報告されている。そこで米国ではバーチャルな画面を見てダ・ヴィンチを練習するシミュレータが販売されている」と話し、「日本の開心術で使われる体外循環装置でも150件に1件の割合で人命に関わるようなインシデントやアクシデントが起こっている。滅多に起こらないようなアクシデントを精巧に再現できるシミュレーターが必要だと考えた」として、広島国際大学臨床工学科の二宮伸治教授と共に、世界に先駆けて体外循環シミュレータをつくった経緯を説明した。その結果、臨床では1000例に1例以下の頻度で起こるアクシデントを再現して対処訓練できる装置を開発、これまでに4件の特許を取得し、2010年の米国体外循環学会で世界最高のシミュレータだと評価を受け、また同年、日本人工臓器学会技術賞を受賞した。

その後小型化を進め、JMS社(東京都品川区)と持ち運びのできる商品を開発、近く市場に出す予定だという。「今後は英語バージョンのソフトも開発して世界中に広めたい」と結んだ。

「いかがですか」の声かけは何を答えてもいいすごい言葉

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長崎腎病院の藤原久子社会福祉士の講演に座長から「患者さんがうらやましい」と感動の声。

―長崎腎病院の藤原久子社会福祉士―

シンポジウム「高齢化社会と透析のあり方」では、太田圭洋・名古屋記念財団理事長が、通院困難な透析患者の「ついの住みか」の確保について話し、次いで鷲田直輝・慶応義塾大学医学部内分泌代謝内科特任講師は、終末期と腹膜透析について語った。さらに安藤康宏・国際医療福祉大学病院腎臓内科教授は、運動療法がもたらすメリットについて話した。

また長崎腎病院の藤原久子社会福祉士は、心理と社会面から見た高齢者の透析について語った。岡田一義・日本大学医学部付属板橋病院透析室室長は、透析開始と継続の意思決定という難しい問題を取り上げた。座長は佐藤元美・JCHO中京病院腎・透析科腎臓内科部長と川西秀樹・あかね会土谷総合病院副院長が務めた。

この中で藤原久子氏は、「個々の高齢透析患者について具体的な情報収集や面談などを行なって、その人らしさを反映した支援方法を決めている」として、次の2人の例を報告した。

【68歳男性=僧侶/慢性腎不全、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、認知症。夫婦と息子の3人暮らし。僧侶であることに誇りを持ち、何度転生しても僧侶でいたい。家族もその思いを応援している】

支援のキーワードとして「生涯僧侶」と決め、僧侶の部分を大切にしながら透析治療を行なった。ベッドの横で僧侶のころの話を聞き、説法も受けた。やがて認知症が増悪し、数か月の入院のあと他界した。死後に家族から感謝の言葉があった。

【92歳女性=慢性腎不全、連合弁膜症、アスベスト関連胸膜疾患。本人と娘夫婦の3人暮らし。長女を出産直後に夫が出征、戦死。今でも夫に対する思いは強く、再婚せず苦労の末に娘を育て上げた。希望は、女性・母親・妻としての誇りを糧に人生を終えたい。思い出の詰まった自宅から透析通院を最後までやりたい。娘夫婦は介護に協力的】

支援方法の要を「女性としての誇り」として治療を行なった。透析中にベッドサイドで、戦前や戦中、戦後の話を聞くと、どの時代でも女性の誇りを持って生きてきたことを話した。そして「死後に夫と会えるのが楽しみ」とも話し、「私がこんな婆さんになっているから夫は気づかないかもしれない」と笑顔を見せた。

透析導入後10か月で他界したが、直前まで外来通院した。死亡直前まで意識があり、常に女性らしい配慮と感謝の言葉を家族やスタッフにかけた。家族も満足していた。

2症例のポイントとして「身体、心理、社会面の情報収集から、患者が生涯大切にしたいことを押さえ、スタッフがそれぞれの立場からケアにあたる。複合喪失体験を繰り返す高齢者の最後まで守り抜きたいものを的確につかみ、より良いターミナル期を迎えられるよう工夫する。その際、高齢者に対して大きな敬意と強い感謝の意を持つことが大切」と話した。

座長から「介入はいつからするのか」の問いには、「最初の面接で患者さんが語りたい部分を一生懸命に聞くので、そこで大きな信頼を得られていると思う」と述べた。高齢でなくても独居の人はどうするのかとの質問には、「高齢ではないがそう若くもない人には、面接をしっかりやることに加え、3か月に1回くらい『いかがですか』と質問する。『いかがですか』は何を答えてもいいすごい言葉で、ある程度の状況を把握できるし、場合によっては主治医に伝える」と答えて大きな拍手を受けた。

5氏がパネリストのシンポジウムは時間が足りず、残念との声が会場に聞こえた。


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