グラハム・メモ 第2回

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 中学校入学とともに親元を離れ、寄宿舎に入った。初めて言葉を交わしたのが彼であった。ちょっと生意気でボサボサ頭ではあるが、まぎれもなくピカピカの中学一年生である。

 彼は私に将来の夢をこう語った。

 「ブラック・ジャックのような外科医になる」

 キッパリと言い放った(彼の家は医院でなく商売をしていたのに、中1で自分の道を医者と決めている彼の事を、すごいと思った瞬間だった)。

 ご存じの方も多いと思うが、手塚治虫氏による連載漫画である。神業といえるテクニックを持つ、無免許の天才外科医の漫画で、高額報酬を受け取ることでも有名である。その点では、米倉涼子主演のTVドラマ『ドクターX』に近いものがある。が、医師免許の有無の点は大きく異なる。免許は当然持っていなければならないが、不可能を可能にする外科医への憧れを持っていたようだ。

 彼はユーモアに長けていて器用でもあったし、学業も優秀であった。間違いなく医師になるだろうと私は確信していた。しかし、彼は波瀾万丈の人生を送ることになる。

 受験前に父親が急逝した。その時母親は、「私がお前を絶対医者にならせてやる」と言ったそうである。その力強い言葉があったからだと思うが、父親急逝のショックの中、受験を乗り越え医学部に入学した。

 我々同窓生は、誰もが彼はブラック・ジャックへの道を歩いていけるものと思っていた。大学入学後は彼と会うこともなく、連絡を取ることもなかった。しかし、彼の事だから着々と夢に近づいていると思っていた。

 とある日、東京の会社に就職していた私の元へ私の父から電話が入った。彼が、亡くなった。新聞にも載っている。耳を疑った。

 彼はインターンとして関西の病院で働いていたが、診療中に患者に刺殺されたという。病院を逆恨みした犯行だったらしい。その日、彼がたまたま診療を担当した。一瞬の出来事で、逃げる間もなかったそうだ。

 世の中何が起こるかわからない。が、いくらなんでも酷すぎる。悲しすぎて泪も出なかった。ブラック・ジャックにはなれなかった男。

 あれから、二十数年。私は今でも、病院に行く度に彼のユーモア溢れる笑顔を思い出すのである。


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