センター敷地内に大学院大学を

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

独立行政法人国立病院機構 肥前精神医療センター 杠 岳文(ゆずりは たけふみ) 院長

■佐賀県出身 1983 慶應義塾大学医学部卒業、同附属病院精神神経科 1984 木野崎病院 1990 国立療養所久里浜病院 1996 国立肥前療養所(現・肥前精神医療センター)2007 同副院長 2010 同院長 ※1989 ~1996 東京都監察医務院非常勤監察医
■精神保健指定医、臨床研修指導医

k14-1-1.jpg

病院の理念「THE MOST IMPORTANT PERSON IN THIS HOSPITAL ISTHE PATIENT] の額の前で。穏やかな語り口に患者への思いがにじむ。

 1945(昭和20)年、国立肥前療養所として開設した肥前精神医療センター(佐賀県神埼郡吉野ヶ里町)。精神科医療の先端を常に走り続け、その名は全国に知られている。同センターの杠岳文院長に話を聞いた。

―肥前精神医療センターの特徴は。

 児童思春期、老年期、アルコール・薬物依存、精神科救急、精神科リハビリテーション、重症心身障害など、精神科医療のほとんどの領域の診療をしているのが特徴です。

 かつては、国立病院にいくつかこのような形の病院がありましたが、経営の合理化、機能集約によって、ほとんどなくなりました。当センターは最大700床あった病床数をやや縮小した500床で機能を維持し、収支は黒字です。

 私たちのセンターは不便な場所にあります。また、特定の大学の関連病院でもありません。ですから、他には真似できない先駆的な取り組みをして、患者さんにも医療者に選ばれなければいけない、という危機感を常に持ち続けてきました。それが私たちの活力になっています。精神科病棟の開放化をいち早く進めたのは当センターですし、レジデント(後期臨床研修医)はこれまで全国30以上の大学から来てくれました。現在も、20人余りの若いレジデントの先生が「ここで勉強したい」という高いモチベーションで来られています。

―これからの取り組みを。

k14-1-2.jpg

 5年から10年先の構想として、医師以外の心理士、作業療法士、精神保健福祉士、精神科看護師などの「大学院大学」の誘致を考えています。

 当センターでは2010年に医師養成研修センターを開設し、若手医師の教育研修に努めてきました。病棟の建て替えも進んでおり、今後は外来・管理棟とサービス棟の移築も計画しています。大学院大学は、それによって空く病院の北側敷地に誘致する構想です。

 この計画によって、医療と教育が様々な職種で一体化でき、精神科医療にとって大きなイメージチェンジになるでしょう。精神科病院と同じ敷地内で若い学生さんが学ぶことは、精神科への偏見を解消する上でも役立つと思います。

 この構想の背景にあるのは高齢化問題です。当センターは認知症の患者さんも診ていますし、高齢の患者さんも多い。これからさらに重要性を増す医療、介護、福祉とその連携、予防をテーマにした実習、研究のフィールドは揃っています。地域の方々の協力を得て、地域をフィールドにした研究も出てくるでしょう。当院を中心に地域モデルとして、教育、研究の場になればと思っています。

―なぜ精神科医に。

 病弱だったこともあり、中学生のころには医師になりたいと思うようになりました。臨床実習で精神科に行き、統合失調症の患者さんに会ったとき、大変で難しい病気だと思いました。このような人を治すような研究をしたいと思い、精神科を選択したんです。それまでは外科志望でしたが、自分には急性期よりも、じっくり患者さんや病気に向き合う方が合っているとも思いましたね。

―精神疾患を抱える人を取り巻く環境は。

 差別や偏見は、昔と比べて大きくは変わっていないと思います。怖い、凶暴、という作られたイメージが先行し、不安がられている。それは患者さんと接する機会が少ないからで、私たち精神科医の反省点でもあります。

 こちらからも積極的に知っていただく努力をすることが重要だと思いますし、大学院大学を誘致すれば学園祭などに地域の人が出入りするなどその機会も増えると期待しています。

―若い世代にアドバイスをお願いします。

 自分で疑問を持って学ぶ姿勢が大切です。今はプログラムが充実しており、与えられることに慣れてしまっていますが、原動力になるのは、「知りたい」「学びたい」という好奇心です。

 私は今の初期研修に当たる時期に、半年間、体調を崩して勉強できませんでした。その後6年間は常勤医師が院長と私の2人きりという病院に勤務していました。学ぶ環境としては恵まれていたとは言い難かったと思いますが、他病院に勉強に行ったり、大学で解剖の資格を取ったりしました。

 東京都の監察医務院で監察医の仕事もしました。精神科の患者さんの突然死というのが非常に多いんです。うつ病の方の自殺、アルコール依存症の方や依存症一歩手前の方の急死を、精神科医とは違う角度から見られました。私がアルコール依存症の予防に取り組んでいるのも、そういった経験からです。

 私が佐賀に戻るきっかけの一つは父がアルツハイマー型認知症になったことです。その時に私はきちんとアルツハイマーを知り、家族の立場を知り、一人前の認知症診療医に近づけたと思います。父が亡くなった時には自分で解剖し、病気の診断を確定させたこと、それが医師として一番誇れる仕事であったとも感じています。

 医師は、患者さんと家族をどれだけ思い、共感できるかが大切です。そのためには人間を磨くこと、そして決して他人事にしないこと。本では学べない難しいことですが、医療者に特に求められていることだと思います。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る