島原を訪れるのは久しぶりだった。
今回は、大牟田の三池港から船だった。陸路とは趣が違い、まさに上陸って感じがする。
第一歩を刻んだターミナルはけっして大きくない。それでも活気にみちている①。
期待していた普賢岳は雲に隠れて見えない。土産物売り場の女性に聞くと「この時期、朝の時間は見えないことの方が多いよ」。
電車の時間まで少し間がある。どうしようかと周囲を見回していたら、その女性が「足湯がすぐそこにあるよ」と、私の心を見透かしたように言う。「地元の人はほとんど入らんけど」とそう付け加える。それでも足湯に向かった。
泉源公園入り口と書かれた看板の横にある足湯は小さいながら湯の量は豊富で、湯加減もちょうど良い。のんびりと風に吹かれながら、時間の経つのも忘れていた。(本当にのんびりしすぎて電車に乗り遅れそうになってしまった)②。
オモチャみたいな(失礼)島原鉄道に揺られ、一路目的地の島鉄湯江へ③。のどか、と言えばいいのか、本当に何も無い。大根がそこかしこに放置してある田園地帯を歩きながら(こんな所に病院があるの?)と思っていたら目の前に貴田病院が見えてきた。ズンと建っている。決して大きくはない。それでも存在感がある。一目見ただけで地元で信頼されているのがわかる。④
帰りの電車を待つ間、目の前は海、後ろを振り返れば山。そんな空間で考えた。人間本来の営みを残している土地なんだと。
船の時間まで港の周囲を散歩した。小さな公園に「飲む温泉」があった⑤。
ここは温泉街なんだ。いまさらながらそう思った。
船に乗り込んで振り返ると、朝は見えなかった普賢岳が夕日を浴びている。何だか後ろ髪をひかれる思いがしたのは、島原という土地のせいだったのかもしれない。