噛み砕きと吸い上げ
ずいぶん昔のことになるが、中小企業大学校の直方校と人吉校でコミュニケーションとマーケティングを教えていたことがある。
その中で管理職の仕事について、「噛み砕きと吸い上げ」というものがあった。
噛み砕きとは、トップの方針や思いを現場が行動に移せるように、噛み砕いて伝えることである。トップは抽象的にしか言わない場合が多いから、その真意をつかむことが大切で、「トップがそう言っているからそうしろ」だけでは伝言ゲームだ。
吸い上げは、文字通り現場の声や状況を吸い上げてトップの判断に反映させることである。現場の不満だけを上申したり希望的観測をさも事実であるかのように話すことは、トップの判断を狂わせることになる。
さらに気をつけなければならないのは、自分をゲートの門番のごとく思い違えて、上には下を悪く言い、下にも上を悪く言って上下を分離させ、どちらも自分が操ろうとすることである。
小集団なら目立ち過ぎてそうはいかないが、組織が大きくなるにつれてこのような現象が現われる。社内の、あるいは院内の風の通りがいいというのは、管理の部分が正しく機能していること。その手始めが「噛み砕きと吸い上げ」だ。(川本)