公益社団法人 鹿児島県薬剤師会 会長 内野 悟
今年11月22日と23日、公益社団法人日本薬剤師会の第48回日本薬剤師会学術大会が、鹿児島市民文化ホールや宝山ホール、鴨池ドームなど鹿児島市内6会場で開かれる。事務局のある鹿児島県薬剤師会(鹿児島市与次郎2丁目)に内野悟会長を訪ね、大会への思いを中心に聞いた。沼上正樹事務局長が同席した。
日本薬剤師会の会員は、全国の開局薬剤師、病院や診療所勤務の薬剤師、製薬会社や卸企業に勤める薬剤師、行政や学校に勤める薬剤師、あるいは教育や研究、試験検査機関に従事している人など、幅広い職種に従事しており、およそ10万人が入会しています。
本大会を引き受けるにあたって、メインテーマは桜島を強く意識し、閉塞感のある現状を地下のマグマで吹き飛ばすようなイメージのものとしました。
団塊の世代が後期高齢者になる10年後(=2025年問題)に向けてどんどん在宅医療にシフトしています。とはいっても病院からいきなり家に帰されるのではなくて、つなぎ目のない移行が必要ですから、「地域に求められる薬剤師として」というテーマは、在宅医療をいかに円滑に進めていくかということを投げかけています。
そして在宅の患者さんが多くなればなるほど、薬に関することは人手の問題もありますから、訪問看護ステーションや病院の仕事としてではなく、町の薬局がやることになるでしょう。今はその準備をしているところです。
鹿児島市内で開催される第48回日本薬剤師会学術大会は、台風の影響を避けるため11月22日と23日に開かれる。左は大会のポスター。内野会長の趣味は野草や薬草を写真に撮ること。鹿児島県薬剤師会の階段の壁に何枚も貼ってあった。
さらには2025年のあと多死社会が到来し、そのあとそれがストンと切れます。そこらをどう乗り切るのか、命に関わる個人情報を誰が扱い、コーディネートするのか、ケアマネージャーがそこまでやれるかというと、医学的知識が充分とは言えません。まだこれから医師、歯科医師、看護師など、いろんな職種がうまく連携するシステムを作っていこうとしているのが現状だろうと思います。我々も今大会でそこを緊密化していこうと考えているところです。
17の分化会を作る予定ですが細かいところは決まっていません。例年は9月に大会を開いていましたが、2006年9月に鹿児島で開催した第69回九州山口薬学大会が、非常に強い台風の接近でとても厳しい状態になったため、台風シーズンを避けて2か月遅くしたためで、これからいろいろ決まっていくところです。
何をもって成功とされるかという質問ですが、大会の評価は参加されたほかの人がされるものですから、私がどうこう言うものではなく、次の大会までつながるために成果がどう生かされていくか、ということだろうと思います。たくさんの人が参加して、よろこんで帰っていただくことが望ましいです。
今大会の招致は私の提案ではなくて、40代や50代の人たちが、台風の中であれほど苦労したんだから思い切って全国大会をやってみようと言ってくれたんです。その前から鹿児島でやってほしいという声も全国から聞こえていました。意気込みと要望がうまく絡んだらいいですね。
私の言葉でもありませんが、「どんなに分厚い本でもページは端っこからめくるように、何か新しいことを起こす時は、端っこからのほうが始めやすい」というのがあります。その意味から、鹿児島から先進性を全国に広げていくきっかけになればと思います。
参加目標は8千人で、鹿児島市内でやることの醍醐味は、フェリーに乗ればすぐに桜島に到着しますし、指宿も近いですし、歴史的には西郷さんゆかりの地がすぐそこです。あとは温泉でしょうね。水道水を沸かしてつくった温泉はひとつもありません。すべての銭湯が本当の温泉なんです。
私が薬剤師になったのは、高校の時に化学が得意で、化学を勉強するには理学部の化学科か工学部の応用化学科かと考えていたら、薬学部に進んだ高校の先輩から、薬学部のほうが将来につながると聞いたためです。
薬剤師として患者さんと接し、薬が効いてありがとうと言われるとうれしいですね。でもその言葉をいただくためには、あれこれ語るよりも聞き手にまわることです。そうすれば、現場にあるたくさんのヒントを見つけることができると思います。それも仕事のやりがいでしょうね。