コラム・病院長に平時はない

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福岡東医療センター 上野 道雄

 院長が不在で、交通も通信も途絶えた時にどうするかという記者の質問に絶句しました。

 院長不在時の代替は副院長になっていますが、とても一人で担うことは難しい。事務部長や看護部長との多職種の合議、協力で病院のかじ取りを行う必要があります。

 実は、院長の仕事は平時も有事も基本的には変わりないように思います。災害医療の際も、日常においても、病院を遅滞なく、的確に運用するため、必要な情報を収集して決断を行うことの繰り返しです。強いて言えば、平時と有事の差はスピードが違うことかもしれませんが、私は院長の仕事に平時はないように感じています。

 むしろ、所謂(いわゆる)、災害医療や医療事故での情報収集と判断より、日常に深刻な有事が潜んでいる感じです。

 そんな院長の仕事の代替をいかに用意するか、当院では毎朝、幹部医師と看護部長、事務部長を集めて朝会をしています。この構成は対策本部の要員とほぼ同じです。そこで、幹部の報告を聞き、対策を協議しています。私自身の提案は問題点を加えた文書で説明し、メンバーの報告には疑問を正し、判断に至る過程を示しています。

 この朝会の合議の手順と決定手法が院長代替の訓練だと思って、10年近く、続けています。また、副院長に院長の仕事を学ばせるため、行政との対応、地域住民や大学との折衝に副院長を同伴しています。

 ただ残念ながら、訓練の成果に自信がなく、思わず絶句しました。

 何かよく判らない事例、説明の付かない事例を漫然と経過観察すると医療事故を招きかねません。そこで、不詳事例を即座に報告する医療安全体制を宣言しましたが、一人で悩んだり、小人数での相談からの脱却に時間を要しました。

 ようやく、個々の医師が早期報告のメリットを実感すると、即座に幹部に連絡が入るようになりました。ところが、日々の病院運営に関しては、不十分な報告で肝を冷やすことが多く、当院の頭痛の種です。

 朝会メンバー以外のコメディカル情報に頼るところが大きい当院ですが、看護師に報告の名人がいます。彼女の報告は曖昧な不安の表現に始まります。余裕がある時は対応ができますが、私の対応が不十分な時は何度も院長室に来て、辛抱強く繰り返します。ようやく、合点がいくと、前にも報告したと叱られます。彼女の報告の多くは病院の一大事を告げるものです。

 一方、疑問や不安を略した医師の報告から、事実を理解することは難しい。医師の報告に根掘り葉掘り疑問をぶつけ、コメディカル情報を加えて、初めて深刻な事態が判明することも少なくない。医師と看護師の違いが、当院や多くの病院の課題だと思います。

 看護業務は看護師間の共同作業が基本であり、赤裸々な報告が必須です。この長年の経験に加え、病院への愛情や帰属意識、本人の優れた資質が織りなす習慣になっているようです。

赤裸々な報告が必須です。この長年の経験に加え、病院への愛情や帰属意識、本人の優れた資質が織りなす習慣になっているようです。

 院長不在時の対応は、院長交代に備えた訓練です。XDayに向けての更なる訓練の必要性を痛感しました。

 (インタビュー記事はこちら


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