独立行政法人地域医療機能推進機構
Japan Community Health care Organization(JCHO:ジェイコー)
熊本総合病院 院長 島田 信也
Q.健康保険病院からジェイコーに移行して大きな変化はありましたか。
4月で1年になります。ジェイコーは国の機関ですが、地域医療の機構なので、その中心は当然、患者さんのための地域という現場です。私どもの病院は社会保険病院の時から患者さんのために一生懸命になって貢献してきました。
病院は各々、異なる地域性を持っています。従いまして画一的な中央管理では機構のせっかくの使命が生かされません。そこで、ジェイコー本部の理解のもと、院長会が発足いたしまして、院長会が積極的な発言をして本部とうまく連携を持ちながら、本来の地域医療を推進することに努めております。特に、色々なアップトゥーデートな整備は質の高い医療を行なう上で必須です。
本機構は「地域医療機能推進機構」という名称ですから、全病院がさらに一層各地域に貢献できる病院になることで本部も各病院も認識が一致しております。
Q.前回インタビューでふるさと八代を蘇らせたいと。
現在は超高齢化で患者さんが増えておりますが、2025年を過ぎると患者さんが減ってきます。それと分散している病院や介護施設が老朽化し、建て替えの時期が来るのとが一致するのではないかと思います。そうなった時にどうするか、そこが地域性なんです。
当院は町の中心部にあり、地域の疲弊で駐車場も確保しやすくなっています。ちょうど、隣にある八代市役所も建て替えの時期を迎えていますから、市役所跡地を広場にして八代城跡と当院を併せると町の核になります。まちなかに老朽化した各種施設を集めて、しっかりとした建物を新たに建てたら、次の世代がプライドを持てる町になると思います。
市役所にも病院にも、銀行にも郵便局にも歩いて行けて、広場で集えて、アーケードで買い物ができる、コンパクトで住みやすい町ができると思うんです。そのような町を日本中につくっていけば、人口は減少しても、いい町が増えます。
いま八代は人口が減っていますが、参考にするようないい町は日本のどこにもないんです。だったらその町を私たちがつくればいい。新幹線駅もあるし、九州の中央に位置した要所ですから、企業だって来るでしょう。
いい町がアッという間にできるわけはないです。いいものを一つひとつ、何十年もかけてつくっていくんです。そんな発想がほしいものです。
Q.自分の住む地域を愛する医師は多いです。
そうですね。私も自宅は熊本市にありますが出身は八代です。ここは新しい町をつくるのにちょうどいいサイズだと思います。そして天草に橋を架ければ熊本を周遊できますし、天草から長崎まで橋を架けたら、ドリームアイランドになります。そのような発展性がこの町にはありますから、八代を過疎の町の縮図としてとらえれば、いいモデルになるはずです。そのシンボルに当院がなれば、将来に向けてうまくいくかもしれないと、住民の方々に思ってもらえるかもしれません。
楽しい町というものは、サークルがあったりスクウェアがあったりして、迷う要素が必要です。碁盤の目のようにシンプルであれば居心地がいいかというと、それだけでもありません。分かりにくさも必要だと都市計画に詳しい建築家ケビン・リンチが著書で述べています。入り込んで分からなくなったら、その周辺がとても広く感じられるんです。真っすぐ進んでいるつもりなのに逆方向に行ってしまったというような分かりにくさのある町が面白いんです。見た目はシンプルで美しい。ランドマークもある。だけど入り込んだら迷う。そうなればいいと思って、百年後にも耐えうる病院をつくったんです。
Q.高齢化社会で病院から在宅へという流れをどう見ますか。
地域包括ケアはもちろん推進しますが、病院や介護施設の役割は依然として大きいと思います。在宅については入浴と排泄の世話が大変です。それを担い手の少ない家族に押し付ければ、みんな崩壊します。そんな事例はいくつもある。それくらい負担が大きいんです。専門職を配備するにしても、訪問時刻に合わせて...というわけにもいきません。それなら居心地のいい場所にみんなで住んでもらったほうがいい。そのような施設の建設を町づくりの一つとしてとらえるべきでしょうね。