「行政と一緒に頑張れる体制を」
福岡県看護協会が、災害時に被災地で活動する「災害支援ナース」の養成に力を入れている。東日本大震災後の機運の高まりもあり、2011年に26人だった登録者数は今年1月21日現在で186人と約7倍。同協会は200人を目標に更なる増員を目指すとともに、行政との連携を模索していく。
災害支援ナースネットワークシステムは阪神淡路大震災を機に、日本看護協会が作った仕組み。災害支援ナースは災害発生から3日目以降、被災した医療機関や被災地の社会福祉施設、福祉避難所で被災者の心身のケアなどに当たる。1人の活動期間は、移動も含めて原則3泊4日。福岡県看護協会はこれまで、新潟県中越沖地震と東日本大震災に計18人を派遣している。
災害支援ナースの養成や認定は各都道府県看護協会の役割で、看護協会は3・11以降、災害支援ナースの増員に着手。昨年度からは重点項目の一つとして取り組んできた。研修を重要視し、被災地での実際の活動を想像できるよう、災害前の段階から発生後の準備、被災地に向かうバスの中ですべきこと、被災地での活動や撤収の引き継ぎなどをシミュレーション。過去の事例も使い、よりリアルに想定している。
これまで、年1回開いていた登録者対象のフォローアップ研修も、来年度から2回に分ける計画。災害支援ナースでもある岡﨑敦子・同協会災害看護委員長は「気持ちだけで行くと悩んだり傷付いたりすることもある」とし、「質を担保しないと、苦しむのは災害支援ナース本人。被災地に安心して派遣できる人材を育てたいし、それが普段の病院での看護の向上にもつながる」と語る。
今後の課題は地域偏在の解消と地域連携。県内をエリア別に見ると、筑後地区の災害支援ナースは49人いる一方で、筑豊地区は5人。「県内が被災し、交通や通信が遮断した場合を考えると、災害支援ナースを偏りなく増やす必要がある」(岡﨑委員長)という。
県看護協会は昨年3月に県と災害時の医療活動に関する協定を結んだ。東日本大震災の被災地で保健師として活動した黒岩悦子・常任理事は「県内の災害の際は自治体の行政保健師との活動など連携し、棲み分けしながらできる活動も多い。行政と顔の見える関係をつくり、一緒に頑張れる体制をつくっていきたい」と語った。