糖尿病治療にIT技術を導入

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香川大学医学部 先端医療・臨床検査医学講座 教授 村尾 孝児

1990 香川医科大学卒 1994 同大学大学院医学研究科修了 同大学医学部附属病院医員 1995 カナダカルガリー大学研究員 米国カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員 1997 香川医科大学医学部附属病院助手 2001 カルガリー大学文部科学省短期在外研究員 スイスローザンヌ大学文部科学省短期在外研究員 2005 香川大学医学部附属病院講師 2011 同大学医学部先端医療・臨床検査医学講座教授 同大学医学部附属病院糖尿病センターセンター長 2012 同大学医学部副医学部長 2014 同大学医学部附属病院内分泌代謝内科科長
■日本内科学会認定医 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医・指導医 日本糖尿病学会糖尿病専門医・糖尿病研修指導医

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村尾教授は香川医科大学の5期生。第5回卒業生の記念植樹の前には「背私向公」と書かれた碑がある。第49 回糖尿病学の進歩(22面参照)では、「医療ICTを利用した地域医療連携」のタイトルで講演するそうだ。

2009年にチーム香川(香川大学医学部や県、県医師会などで結成した糖尿病克服プロジェクトチーム)による糖尿病克服事業を香川大学は目玉の一つにし、その実行チームとして2010年に大学病院内に糖尿病センターができました。糖尿病は色々な部位に関わる病気ですから、それまでは各科でそれぞれに診療されていました。センターとして集約化したことによって、連携を含め治療はやりやすくなっています。

 私は2011年の6月に3代目のセンター長に就任し、人員の補強など、実質的な立ち上げを行ないました。専門チームとして確立できたのは医師だけでなく、栄養士や検査技師など、糖尿病専門のコ・メディカルを集めることができたのが大きいですね。国立大学病院の中に糖尿病センターという形で専門チームが組織されているのは珍しいことだと思います。

 センターですから多科の医師が集まっており、糖尿病を専門に診る小児科の先生がいるのは、珍しいかも知れません。

 糖尿病の治療は、県内の専門医だけで行なえるものではありません。20万人いる患者さんを、40人ほどの専門医で全部診るのは不可能です。ですから、かかりつけ医が手に負えない患者さんを専門医に紹介し、それでも手におえなければ糖尿病センターに紹介してもらいます。そして安定すればかかりつけ医に帰す仕組みが必要です。これにK-MIX(かがわ遠隔医療ネットワーク。データセンターを介して各施設で検査画像や病歴サマリーなどを参照できる)を活用しています。糖尿病地域連携パスを目的に作られたチーム香川のキーワードもK-MIXで、K-MIXの主体は糖尿病センターです。現在は地区ごとに患者さんを管理して、非専門医が診ても大丈夫な人、栄養士の栄養指導で十分な人、専門医が診なければならない人など、層別化して管理する試みが始まっています。将来透析が必要になりそうな人をピックアップして、重症化予防に当たることなどの対策が可能です。

 近年香川県は、徳島県と並び糖尿病の多い県として3位以下を大きく離していますが、若い頃はそういうことが言われていたわけではなく、特別の使命感を持って志したわけではありません。こんな大変なことになるとは思っていませんでした。

 4年前に発表された2008年のデータで、糖尿病受療率が全国ワースト1だったので日本中で注目され、県知事も問題にしました。県庁内には「糖尿病ワースト1位脱出事業」が新設されることになります。香川県の糖尿病治療は、県や大学がバックアップしてくれるので、心強い部分もあります。

 2012年に香川県は全国で初めて、糖尿病予防のために、全県で小学生の血液検査を実施しました。国会の答弁でも取り上げられ、今でも続いています。他県のデータがないので比較はできませんが、小学生から生活習慣病が蔓延していることは事実です。県内ではもう、大人だけの問題ではありません。今年から電子ゲームで遊ぶかどうかの質問を加えたのですが、そういう遊びをあまりしない子供は、生活習慣病にならないようでした。運動をしない県民性なのも、糖尿病の一因でしょう。

 野菜の生産は多いのですが、一人あたりの消費量もワースト1位の県でした。県が広報に力を入れ、私も広告塔になりアピールし、その甲斐あって現在は改善され、野菜の消費量が増えています。だから、現在の糖尿病受療率・死亡率は低くなっている可能性があると私は考えています。

 学生の頃から内分泌代謝学の道に進もうと考え、旧第一内科に入局しました。内分泌代謝学で関わる患者さんは圧倒的に糖尿病の方が多く、また留学先では動脈硬化の基礎的な研究をしたのですが、動脈硬化の最も代表的原因も糖尿病です。それで研究のフィールドをシフトさせました。

 私は高松生まれの高松育ち。学内に8人いる香川医科大学出身の教授の中では6番目に年長です。医学部の同窓会での活動などもあって、県内では知られているので、連携が重要な糖尿病の治療はやりやすい立場です。

 先端医療・臨床検査医学講座は2011年にできた講座で、私が初代の教授になります。それまでは「臨床検査医学」という検査の教室だったのですが、全く新しくなりました。病院での診療科名は内分泌代謝内科で、糖尿病に関しては一手に引き受けています。

 新しい医療をやろうということで誕生した講座で、医局員は今9人。出来たばかりにしては集まったなと思います。これからどんどん増やしていきたいですね。

 今年4月に講座再編が行なわれます。この際にもっと特徴を出そうと「内分泌代謝・先端医療・臨床検査医学講座」に講座名を改めます。先進的な糖尿病治療をやっていますが、それをもっと分かりやすい形であらわそうというわけです。

 先進的な取り組みとしては、KDDIとの協力で、食事カメラというシステムを開発しました。

 毎日の食事をスマートフォンのデジタルカメラで撮ると、それがすぐに栄養士のコンピュータに送信されるという仕組みです。1か月分をまとめて見ても栄養指導はできませんが、すぐに送られてくるので栄養士にとってもは負担が減ります。患者さんは簡単に毎回栄養指導が受けられ、便利です。このシステムを用いてから、改善する患者さんが増えています。

 農学部が希少糖を生産する酵素を土壌の微生物から発見し、以後学内では活発に希少糖の研究が行なわれています。大学の大きな特徴の一つで、医学部での希少糖の臨床研究は、私の講座の担当です。

 たとえば希少糖が糖尿病治療に良いかどうか、患者さんに摂っていただきデータをとっています。希少糖は糖尿病を改善する薬ではありませんが、糖尿病に関わるサイトカインを減らすということが分かってきました。砂糖の代わりとして用いると、熱量はほとんど0なので、砂糖の分だけカロリーオフできますし、体重も減ります。将来的には糖尿病治療に用いられる可能性があると感じていますし、間違った方向の研究ではないと考えています。

 色々なメーカーが作った、希少糖を使った製品の機能解析も我々が担当しています。香川大学で盛んな希少糖研究が、香川県で多い糖尿病の治療に役立ちそうだということに、運命的なものを感じています。


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