医療法人 三州会 副理事長 大勝 秀樹
宮崎大学医学部附属病院がん診療部に事務局を置く「みやざきホスピス・緩和ケアネットワーク」が2011年11月に設立された。活動の延長線上に宮崎ならではのモデルケースができるのではないかと池ノ上克代表世話人は話す。2人の医師も交え、同ネットワークの今と目指す先を聞いた。
これからこの地域で果たしたい役割は。
当院は開業以来この鹿児島市真砂本町、郡元地区から発展していますので、患者さんもこの地域の方を中心に利用していただいています。
そのような中で、開院以来神経内科という専門領域の診療を行なっています。神経内科の専門病院は限られているので、遠方から来られる方も多く我々も広範囲の方にご利用いただけるような体制を整えたいと考えています。一般の方には馴染みがないかもしれませんが、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症=ALSなどがよく知られているかと思います。
このような病気は運動障害が大きな問題になります。当院はそのような疾患が専門ですから、神経疾患だけではなく寝たきりの高齢者や介護を要する人に、幅広い医療やサービスが提供できることが特徴です。
関連施設が隣接していますね。
これまでは病院だけで治療する時代でしたが、現在病院は急性期から慢性期に分かれ、安定はしたけれども元の生活に戻るのが難しい場合もあります。その場合、施設に入っていただいたほうがいい人もおられますし、我々がサポートすれば自宅で生活できる人もおられます。神経疾患の治療で蓄積したリハビリや介護のノウハウを、病院と施設、そして在宅療養のお手伝いに生かしているところです。
神経内科の特長は。
脳の病気が原因で手足に麻痺が出たり、うまく動かせなかったりする以外に、呼吸障害や嚥下障害などもあります。そのためあらゆる部位に障害を来しうるので、全身の観察力が重要になります。
あとは忍耐力でしょうか。脳疾患によりしゃべれるけれども内容がうまく伝えられないとか、発音が悪くなり集中しないと聴き取れない場合もありますので、神経内科医は忍耐強い人が多いような気がします。
脳は全身をコントロールする司令塔なので、脳疾患では全身のどこにでも異常をきたしうることになります。たとえば脳の疾患が原因で手足の運動はもちろん、飲み込む力に異常を来たすと、肺炎などの合併症も起こしやすくなります。それに対する対策も必要になってくるうえに、現在の飲み込む能力から、肺炎などの合併症の出現を予測しなければなりません。
脳の病気を完全に治すのは難しい場合が多いのですが、リハビリによる改善の可能性は十分にあります。
体に現われる障害の予測は困難なのでは。
脳の病気であれば画像診断で病変の部位から、どこにどんな病気が出現するか予測できます。脳の局在診断と我々は呼んでいます。ですから喉の障害の場合、喉の検査で形態をみればわかるというわけではなく、実際の運動機能を評価する必要があります。その場合、医師が時間をかけて時間をかけて評価する必要があり、そういった部分では多少難しさがあると思います。
医師になった理由は。
いろんな理由がありました。幼いころは、父親が医者で病院という存在が身近にあるという影響があったと思います。そして成長とともに、自らが努力しさえすれば、病に困っている人を助けられることに関心を持ちました。医学部に入ってからは、技術を磨けば磨くほど、高度な精度の高い医療を行なえることに強く興味を持ちました。
これから医師の道に進もうとしている若い人が、医師を目指す理由が純粋な気持ちであればどんな人でもチャレンジしてほしいですね。どの専門分野でもその分野では優秀な医者になれると思いますし、領域が違うことで互いに助け合うことができます。
今後この地域で必要になることはありますか。
訪問看護ステーションはすでに機能的に動いています。在宅みとりに関しては医者のマンパワーがまだ足りないので、それが実行できるべく医者を増やしていきたいと考えています。
社会問題とされている認知症に関しては、これも神経内科疾患の一つです。当院では認知症の方が脳梗塞になったというような、ほかの病院で対応が難しい患者さんでも受け入れることができます。これからもっと需要が増えるでしょうから、さらに強化したい分野です。もう一つは神経難病です。専門外の先生方は、経過や先行きの予想がつかなくて診るのが難しいと言われます。今後受け入れ先が限られてくるとなると、神経内科の責任において今まで以上に受け入れを増やす必要があると考えています。特に管理が難しいとされる、人工呼吸器が不可欠の患者さんの増加に対して、当院でしっかりマネジメントできるようにしたいと思います。