総合リハビリテーションセンター 医療法人 畏敬会 井野辺病院 理事長/院長 井野邉 純一
―どんな病院でしょう。
リハビリを主にやっている病院で、一般病棟と回復病棟があり、急性期と地域包括ケア病棟に分かれています。
リハビリの専門医が3人おり、私が神経内科で、整形外科が1人、もう1人の非常勤も鹿児島大学のリハビリテーション科にいましたので、かなり専門的な体制です。
PT(理学療法士)やOT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)も多く、健康運動指導士もいますし、歯科衛生士も2人います。さらには音楽療法士も1人いて、トータルでリハビリを進めていこうと考えています。併設の施設としてはデイケアとデイサービス、そしてケアマネジャーのステーションと訪問看護、訪問リハビリにも力を入れています。
関連施設は府内町に井野辺府内クリニックと老健施設、そこにも訪問看護ステーションと訪問介護、通所リハ、そして健診施設があり、超急性期以外の障害を持ったまま入院されている患者さんになんとか在宅で過ごしていただくための病院としてやっています。
わが国の死亡原因3位である脳血管障害は、国内患者総数133万人と推定され、半数以上に後遺症として手の麻痺(片麻痺)がありますので、その治療がリハビリの命題になっています。発症後1年以上経った重度の麻痺は回復が難しいだろうと言われてきました。
その「1年の壁」をなんとか破ろうと苦心していた時、2000年くらいからニューロリハビリテーションという概念が出てきました。これは脳科学の知見に基づいて、損傷された神経機能の回復をはかるリハビリテーションになります。
ラットを使った実験で、リハビリした群としない群に分けて脳を再度開けてみると、リハビリしなかったところは運動皮質が小さくなり、リハビリしたところは大きくなっています。脳は損傷しても新しい回路ができてくることが動物実験で分かり、麻痺した手足は積極的に使っていこうということになっています。そこで、ADL(日常生活動作)訓練のあとにニューロリハビリを取り入れています。
リハビリテーションのための新しい機械をオージー技研社と共同開発しました。これは「手指装着型電極FEE(フィー)」の名称で商品化されました。筋電図を使わなくても、セラピストが患者さんにタッチすることで動くもので、重度の麻痺の人がずいぶん治るようになりました。
そのあと地元の企業と「新型電気刺激装置DRIVE(ドライブ)」を開発し、地元の新聞に大きく取り上げられました。
電極を自分の治療箇所に貼り、スイッチを自分で押せば電気が流れるというものです。2つの筋肉を同時に刺激することが可能なうえ、自主訓練モードを設定して自宅でも使えるようにしました。2014年の4月ごろ認可を受け、非常に治療の幅が広がるのではと期待しています。
認可を受ける前に重度の患者さん10人に使ってもらったところ、全員に効果が見られ、1年の壁を破ることができると証明されました。これで、麻痺自体を治してほしいと願う患者さんの要望に応えられるようになりました。今後は脊髄損傷やパーキンソン病、さらに嚥下障害、tDCS(経頭蓋直流刺激)やHAL=サイバーダイン社のリハビリ用ロボットとの併用も視野に入れているところです。
私が訴えたいのは、大分のアイデアを地元の企業が完成に結びつけ、大分の患者さんで試してみて効果を確認したという、文字通り大分発であるということです。そして今は第3弾となるものを開発中です。
―院内に絵や演奏会の写真がたくさんありました。
絵は私の父が集めたもので、音楽のほうは月に1回ミュージシャンに来てもらって「ふれあいコンサート」をやっています。
いちばん最初は私が出たんですよ。高校の時にバンドをやっていたので、その時の仲間つながりで始めてみたら、私もやりたいという人がかなり増え、今では1年先までスケジュールが詰まって、私の出る余裕がなくなってしまいました。
今は「井野邉バンド」というグループを結成して、東日本大震災復興のチャリティコンサートを2012年から始めました。大きな会場で大分のアマチュアミュージシャンにいっぱい出てもらい、義援金を現地に送っています。