「ことわざ」

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長崎大学理事 長崎大学病院長 増﨑 英明

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 新年を迎えるにあたり、私の好きな中国のことわざ「ことごとく書を信ずれば則ち書なきに如かず」という孟子の言葉について話します。

 孟子は孔子よりずいぶん後の時代の人です。時代が違うので二人は出会ったことはありませんが、孟子は孔子をたいへん尊敬していました。孟子の言う「書」とは、孔子が晩年に全霊を傾けて書き残した『春秋』という歴史書のことです。その尊敬する孔子が書いた『春秋』であっても、その内容を頭から正しいと信じてしまったら、それはないものと同然ではないか。孟子はそう言い放ちました。この文言には、表面に現れない、まだ多くの教えが隠れているようで、わたくしの大好きな言葉です。

 昨年は、△× 細胞ということが注目を浴びました。山中伸弥博士のiPS細胞よりも簡単に万能細胞を創ることができたというのです。この細胞を発見したという女性の研究者は、割烹着を着た、つまり目立った服装で連日のようにテレビで賞賛を受けていました。それが、ある時点から論文内容に疑いが持たれ、賞賛は一瞬にして非難に変わりました。論文の書き方は悪かったかも知れないのですが、もしかすると、実験そのものは本当のことで、彼女は復活するかも知れません。わたくしは、むろんそれを望みます。ただどうしても気持ちが引っかかるのは、彼女が他人の論文をコピー&ペーストしたこと、すなわち他者の文言をそのまま用いたことです。コピーするというのは、他人の作ったものを自分のものにする、という行為です。つまり「剽窃」ですね。それは許される許されない、という前に、やはり恥ずべき行為ではないかとアプリオリに感じるのです。

 わたくしたち医師が、研究者であれ臨床医であれ、肝に銘じておくべきと思うことの一つに、人間はコピーできない存在であるということがあります。つまり一人一人は違っているということです。人と人との関係に同じものはありません。医師と患者の関係は、その場その場で、新しく築き直すしかない。ことごとく人を同じと信じることは、そこに人がいないのと同じではないか。新しい年の始まりに際して、若い医師たちに贈る言葉として、以上のようなことを考えた次第です。あけましておめでとうございます。本年が、世界中の一人一人の人間にとって幸いな年であることを念じて、新年の挨拶と致します。
平成27年元旦


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