ライフワークとして貫く造血幹細胞移植

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岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態制御科学 教授 谷本 光音

■谷本 光音(たにもと みつね)1977 名古屋大学卒 1981 名古屋大学大学院終了 米国ニューヨーク スローン・ケタリングがん研究所留学1985 名古屋大学第一内科医員 1991 名古屋大学第一内科助手1998名古屋大学医学部附属病院講師(第一内科)2001 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授(第二内科)2004 岡山大学医学部・歯学部附属病院(現岡山大学病院)副院長2011 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 研究科長 ■日本血液学会理事 日本リンパ網内系学会理事 日本臨床腫瘍学会理事 日本造血細胞移植学会評議員など

Q.専門である造血幹細胞移植について聞かせてください。

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 造血幹細胞移植は、白血病などの血液がんの最終的な治療法の一つです。現在では造血幹細胞は、骨髄から取り出す方法、末梢血液から取り出す方法、出産時に赤ちゃんの臍帯血(さいたいけつ)から取り出す方法があります。

 HLA(白血球型抗原)には6つの型があり、この型が全て一致した人同士の造血幹細胞の移植手術は70年代に始まりました。私は名古屋大学で日本の一例目や二例目の移植手術の症例をすぐ近くで見て興味を持ち、生涯この道でやっていこうと決めました。まだ国内に100例なかったころです。

骨髄移植の初期は、それしか助かる道がない重症の患者さんにしか移植手術ができなくて、治療成績は良くありませんでしたが、80年代になって少し成功例が出てきたことにより、比較的良い状態の患者さんにも手術できるようになりました。それで成功率が一気に増加し、標準的な治療になりました。それでも現在の成功率は約50%です。

特に岡山大学では非血縁者を含む同種の造血幹細胞移植を年間70例近く行なっています。これは大学病院のなかでは最も多く、日本では年間に1000例から1500例くらいの同種造血幹細胞移植が行なわれていますから、かなりの数をやっていることになります。

Q.がん治療の副作用について。

 がん治療では大量の抗がん剤、致死量の放射線、免疫抑制剤などの治療によって当然起こる合併症と予期せぬ合併症、さらに免疫反応などの急な事態に対応しなくてはなりません。

日本は外国と比べて、がんの手術成績が良く、抗がん剤の副作用による死亡率も低いのです。また、抗がん剤治療の副作用への対処も優れています。

平成18年にがん対策基本法が施行されましたが、これは患者側の要望によってできた法律で、日本のどこでもがん治療を受けられるよう医療体制を整備する法律です。

しかし場所によっては放射線治療医が不足したり(放射線診断医は多いが)、小児がんや婦人科がんの先生が少ないという現状があり、「がん難民」という言葉も生まれています。がん専門の看護師や薬剤師、緩和ケアの相談員のようながん治療を支える専門職はまだまだ少ないのが現状です。

日本はがんの緩和医療の分野が弱く、患者が死ぬまでがんと闘わせてしまう症例も数多くみられます。しかし患者さんの中には、残った時間を別のことに使いたい人もいるわけです。今後の課題として、がんに特化した教育体制で専門的知識をもった人材の育成が必要です。

Q.中四国広域がんプロ養成コンソーシアムについて。

 先ほどもお話したように日本は手術と副作用の対処は優れており、がん専門の教育、専門家を育てる土壌はあります。がん対策基本法をうけて、がん専門の教育体制で、資格を持った人を育てましょう、という目的で始まったのが、文科省のがんプロフェッショナル養成基盤推進プランです。中四国広域がんプロ養成コンソーシアムは、その推進プランの支援のもとに、中四国の医育機関、医療機関がそれぞれの特色や地域性を活かしながら協力し、がん専門医療人を養成しようというプログラムです。

平成19年から始まった第一期では5年間文科省の支援を受け、医、歯、薬、看護のがん専門家を育てるために岡山大学を主幹校に、川崎医科大学、山口大学、香川大学、徳島大学、愛媛大学、高知大学、高知県立大学、四国がんセンターが協力し、若い医療人を150人以上育成しました。現在は第二期で、広島大学と徳島文理大学にも協力していただき、平成24年度の推進プランに採択され、さらに5年間の事業費が交付されて活動しています。一期の重要課題は人材育成でした。二期は恒常的な教育です。今回各大学に、緩和医療や化学療法に関するがんに特化した講座ができています。

Q,がんの専門家を目指す学生へメッセージを。

 これからもがんの発症頻度は減らないでしょうから、専門知識を持ったチームが必要であるとともに、チームを構成する個人に、がんについての高い専門性が求められます。一つの種類のがんだけではなく、全てのがんについて知識を持たなくては専門家とは言えません。抗がん剤治療も薬があればどこでもできるわけではなく、薬の副作用や合併症について対応できなければ治療成績は悪くなります。

がんに関しては集学的な医療がとくに求められ、体系化して実践できるように知識を持たなくてはなりません。さらには患者さんの心理的側面や、社会的、経済的な側面などを知って対応できるがんの専門家を育てるのが私の役目だと考えています。

谷本光音教授の活動

・中国四国がんプロ養成講座

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チーム医療合同研究。中国・四国各拠点施設からの参加者によるチーム医療合同研修を実施。この回では「がん看護」について、多職種での意見交換が活発になされた。

・岡山メディカルイノベーションセンター

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岡山大学鹿田キャンパスにあるメディカルイノベーションセンター内に設置されているサイクロトロン装置。リード化合物等にアイソトープ標識して第0 相臨床試験等への応用が可能となっている。


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