学校法人順正学園 九州保健福祉大学総合医療専門学校 学校長 髙崎 眞弓
順正学園の由来は温順貞正(おんじゅんていせい)、「優しく素直にして明らかに正しい」という意味だ。創始者である加計勉は学校法人順正学園の建学に際し、「学生一人ひとりのもつ能力を最大限に引き出し引き伸ばし、社会に有為な人材を養成する」を理念として掲げた。岡山県にある吉備国際大学の応援により、九州保健福祉大学が宮崎の地に公私協力によって誕生したのが1999 年。その姉妹校で看護学科と鍼灸学科を擁する宮崎市の九州保健福祉大学総合医療専門学校の髙崎眞弓校長に看護師の育成と医育について話を聞いた。
看護師を目指す社会人の入学が増えている
Q.看護学科は5年連続で国家試験の合格率が100%です。
医療現場での看護師は、医師、患者、および専門医療職すべてをサポートする中心的役割です。現代では疾病の形態も多様化、複雑化し、チーム医療の現場ではスムーズな意思の疎通が医療過誤などの事故を未然に防ぎます。高度な知識と技術を提供できる看護師への期待は今後ますます高くなると同時に、看護師個人のコミュニケーション力が求められることになると考えます。
これから直面する超高齢化社会では在宅看護・介護要員としても、看護師に対する施設、機関からの要望は高まることが予想され、私たちの学校もそれに対応するために昨年から看護学科の定員を40名から60名に増やしました。
おかげさまで卒業生は就職先からの評価も良いそうで、今年の春も卒業生43名は看護師国家試験に全員合格しました。
優秀な学生は放っておいても大丈夫。大事なのは理解不足の人をどう指導して助け、引き上げてあげるかです。本校では、遅れのある学生から分からない部分を細かく聞きだし、3、4人の班に分けて、教員が熱意をもって特別にサポートしています。
Q.看護師に求められる資質は。
先進医療の現代においては、非常に多くの職種が絡んできます。現実的には看護師がそのチームリーダーですから、連携の場で潤滑油として活躍できなければなりません。患者さんは、看護師には比較的なんでも話をしてくれますから、日ごろのチェックや雑談のなかから「これは医師に伝えるべきだ」という判断ができることが必要です。コミュニケーションを取りながらも「自分で考えて動く」ということが非常に重要です。
現代のチーム医療の現場では、看護職にかぎらず、医療職全般でコミュニケーション能力は不可欠ですから、学生本人に「考えさせ、気づかせるような医育」とは何か、それを実践していくことが本校の使命です。
最近は一度就職した後に看護師を目指す社会人の入学が増えています。特にシングルマザーの方などは病院で看護師として働く目標をしっかり定めて入学してきますから一生懸命です。社会人をどれくらい入れるかは考えどころですが、高校から推薦で上がってくるような若い子たちにもその真剣さが刺激になって現時点では良い影響がでています。
Q.鍼灸学科(夜間部)がありますね。
鍼灸療法は東洋医学の名で、もともと日本の医療だった歴史があり、今もかなり利用されている代替医療です。最近はドーピング検査で薬が飲めないスポーツ選手の疲労回復やコンディションの維持、故障の治療に特化したスポーツ鍼灸に人気が集まっています。
宮崎県で鍼灸学科は本校だけで、2005年に開設しました。夕方6時10分から実施される1日2科目の授業で、昼間働いている社会人が集中して学べるカリキュラムとなっており、実技実習の時間を豊富に設けることで技術の着実な習得と向上に取り組んでいるのが特徴です。
Q.大学教授を長くされていましたが、教える立場の人にメッセージを。
たとえ師弟関係にあったとしても、人間はコントロールしようとすると、かなり大変です。なかでも医師はプライドが高い人が多く、医師を目指す若い人もその傾向が強いみたいです。ですから本人が自分で納得するようなやり方をすると良いと思います。学生本人に自分で決めさせる、気づかせるようにもっていくということです。
専門医制度ができてからは、学位はいらない、臨床だけでいいという極端な考えの人もいるようですが、私はやはり臨床と研究の両方が大切だと思います。人を成長させるには「少し」難しいことをやらせると良いです。ちょっとだけ難しいテーマを与えて、それをクリアできる人はどんどん伸びて成長します。資格を取れば十分と思う人は、研究こそが人格形成にとても役立つという事実を知らない人だと思います。臨床だけでなく研究をすることで、考え方がシビアになり、きびしく物を見る医師に成長します。