第30回日本義肢装具学会学術大会 岡山コンベンションセンター

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 10月18日と19日の2日間、岡山市北区の岡山コンベンションセンターで、第30回日本義肢装具学会学術大会が開催された。大会長は川崎医療福祉大学学長・教授で、川崎医科大学リハビリテーション医学教室教授の椿原彰夫氏が務めた。副大会長は橋本義肢製作㈱の橋本泰典代表取締役。一般演題には200題を超える応募があった。

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会場の岡山コンベンションセンター

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桃太郎も看板でおいでんせぇ(いらっしゃいませ)

 椿原会長は開会式で、「今回は30周年の記念の年で、責任を感じている。多くの先人たちの指導で発展してきた学会だ。30周年を機に過去を振り返り、将来の発展に活かしたい」と述べた。

 続く会長講演では脳卒中のリハビリテーションを中心に、1950年代初頭から始まった短下肢装具の歴史を示し、「歩ければよいという時代から、機能性とQOLを追求する時代になった。今後の発展に向けて協力して欲しい」と呼び掛けた。

 また椿原会長が2006年から大阪電気通信大学医療福祉工学部医療福祉工学科の森本正治教授や橋本義肢製作㈱と共同開発している「MR流体ブレーキ搭載足継手付き短下肢装具」が動画で紹介された。装具に設置されたスイッチにより歩行周期の判別が可能で、磁性流体(MR流体)に通電する電気量を8段階に調節し、歩行を助けるという。現在臨床データをとっている最中とのこと。

 会長講演の座長は、来期大会長で横浜市立大学附属病院リハビリテーション科の水落和也診療科部長・准教授が務めた。

 今学会では4つの教育講演が企画され、徳島大学運動機能外科学の西良浩一教授は、「腰痛のバイオメカニクスと装具療法」のタイトルで講演。

 講演前に、座長を務めた吉備高原医療リハビリテーションセンターの徳弘昭博院長は「腰痛は臨床でよく診るが、安易にダーメンコルセットを使うケースが多い。考えさせられる講演だ」と紹介した。西良教授によると、2週以上腰痛が続く子供の半数ほどは腰椎分離症。2006年まではダーメンコルセットで保存療法をやっていたが、回旋制限を加えるため硬性体幹装具に変え、治療の成績は向上したという。そのため徳島大学腰仙帯は黒色で子供がよろこぶ色調。しかし作成に1週間必要で、日本中から診療に来る患者にはデメリットが大きかった。このためアルケア社との腰仙椎装具の協同開発に到ったという。また「アスリートの腰痛治療のゴールは、腰痛の克服ではない」と述べ、自身がジャックナイフストレッチと名付けたストレッチを紹介。発育期では朝晩行なうことで、4週間で劇的な柔軟性が得られるという。

 このほか西良教授は腰痛治療の知識として、PED法(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)による大学生のアメフト選手や日本代表ハンドボール選手などへの治療例を示した。高校生アスリートに対し、12例の症例があるという。これは局所麻酔、8㎜の切開、1泊の入院と低侵襲で、横から器具を入れるので再発ヘルニアに有効と述べた。今年から認定医制度が始まり、日本に11人の認定医がいるという。

 かがわ総合リハビリテーション病院の木下篤院長と、橋本義肢製作㈱の橋本代表取締役を座長に、理学療法士が義肢製作に関わることのメリットが紹介される企画があった。橋本氏は「義肢装具士の仕事を理学療法士が理解することは有意義だ」と述べて、その取り組みを古くから勧めた川崎医科大学リハビリテーション講座の故明石謙教授を称えた。

 登壇した川崎医科大学附属川崎病院リハビリテーションセンターの永冨史子理学療法士は「義肢と身体の機能を関連付けて思考することができ、先を見通したリハビリテーションの計画が立てられるようになる。義肢装具士の作業や専門用語を理解することで、意思の疎通が円滑になり、報告や情報提供など、協業に寄与した」と経験を述べ、「これからの装具に対応するためにも、若い人には是非学ばせるべき」と発表した。専門学校川崎リハビリテーション学院理学療法学科の笘野稔副学科長は、実際の症例を示し、理学療法士による義肢製作の過程を説明した。

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開会のあいさつをする椿原彰夫会長

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会長講演『短下肢装具の継往開来」

 パネルディスカッションは「下肢虚血と切断」の1題が設けられ、医師、理学療法士、看護師、義肢装具士の4人がそれぞれ発表をした。

 倉敷平成病院看護部の小山恵美子教育担当師長は、他職種で行なう褥瘡回診に、下肢や足病変のチェックを組み入れたと発表し、大きな関心を集めた。座長を務める熊本有薗義肢㈱の有薗泰弘氏が「我々義肢装具士は血流の勉強はしないが、今後はするべきだと思う」と述べると、愛知医科大学血管外科の杉本郁夫特任教授は「我々医師も義肢装具の勉強をしていない。今後教育の現場で交流を持てる機会があれば、積極的に関わりたい」と応えた。

 最後にもう一人の座長である昭和大学医学部リハビリテーション医学講座の水間正澄教授が「日ごろ我々があまり意識しない領域。今回多くの現場の意見を聞けたことは良い機会だった。大会長に感謝をしたい」と感想を述べた。

 大会の特徴は、医業者だけでなく多くの技術者が講演していること。歩行用ロボット、大腿義足膝継手、短下肢装具足継手、障がい者スポーツの4分野でそれぞれ発表の場が設けられた。

 大阪電気通信大学の森本教授は「義足や継手の種類は多く、現場ではどれを使うべきか迷っているだろう」と述べ、それらを選定するのに有用な歩行機能計測機能を開発していると発表し、「力学特性および運動特性を計測できるようにしているが、今後は医療現場の人々にもっと理解しやすい形でデータを提供できるようにしたい」と述べた。

 ㈱長崎かなえの二宮誠代表取締役は、足裏の荷重を感知し、膝継手のバルブを制御する機構を紹介した。電子制御ではないためバッテリーがいらず、1230mgと軽量。ゆっくりとした歩行からランニングまで対応可能であるという。「長崎市は夜景が美しいが、坂が多い。この坂を苦労なく上り下りしてもらいたいという思いで開発した」と話した。

 市民公開講座は、川崎医科大学リハビリテーション医学教室の平岡崇准教授の司会で、岡山市出身の元プロマラソンランナー有森裕子さんが講演した。有森さんは両足が先天性股関節脱臼だったという。講演では教師に励まされた経験のほか、川崎病院の医師がO脚改善のトレーニングをすすめた経緯などを語り「否定的な言葉ではなく応援してくれたので力が出た。アスリートを作るのは本人の努力だけではない」と語った。

 そのほかISPO(国際義肢装具協会)のソーデルベルグ会長と、ワシントン大学のチェルニッキ教授の招待講演があった。閉会式で椿原会長は、参加者が1千500人を超えて盛況だったと発表したがその反面、多数の興味をひいた演題では、室内に入れず会場の外から立ち見する参加者も多くみられた大会だった。


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