求められる医療にアンテナを張って

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広島大学大学院医歯薬保健学研究院 統合健康科学部門腎泌尿器科学
教授 松原 昭郎

マイナーな科とはいえ、メジャーな体験ができるというのも魅力だと思います。(松原 昭郎)

1985 広島大医学部卒、同部附属病院泌尿器科学臨床研修医 1986 県立広島病院広島県臨床研修医 1987 三次中央病院 1990 広島大医学部附属病 院医員 1993 同助手 1996 Center for Cancer Biology and Nutrition,Institute of Biosciences and Technology, Texas A&M University System Health Science Center Houston, TX, U.S.A. 2001 広島大医学部附属病院講師 2002 広島大大学院医歯薬学総合研究科腎泌尿器科学准教授 2008 同教授
■免許・資格 日本泌尿器科学会専門医 日本泌尿器科学会指導医 日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡技術認定医 日本内視鏡外科学会技術認定医 日本がん治療認定医機構暫定教育医

 ロボット支援下での前立腺がん全摘出手術が保険適用となって2年が過ぎ、ますます注目の泌尿器科。中四国地方で最も早い2010年に手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入し、最先端の治療、研究に積極的に取り組む広島大学の松原昭郎教授に話を聞いた。

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 腎泌尿器科の歴史は古いんです。1948(昭和23)年、戦後間もないころの開設だと聞いています。皮膚泌尿器科で開設し、2代目のころに分かれました。私が5代目です。

■前立腺の増殖因子、男性生殖機能の再生研究も

 研究は、前立腺の病気、特に、前立腺がんの基礎と臨床が専門です。

 前立腺がんは、男性の生殖器のがんなので、アンドロゲンという男性ホルモンに依存しているんですね。だから、治療を始めるときに、その男性ホルモンを遮断してやると、非常に効果的です。でも、いずれ効かなくなり、効かなくなってくると手ごわくなります。そのアンドロゲンへの依存性が、なぜなくなるのかを、増殖因子の視点で基礎的に研究してきて、今も続けています。

 うちの教室は伝統的に前立腺の研究をしてきました。私も初めは前立腺肥大の増殖因子の研究、留学したころからがんの増殖因子の研究をしてきました。それが私の専門です。

 前立腺の増殖因子の研究をしているところは、日本でも多くないですよ。特徴的と言えば、特徴的ですね。

 他には、今、注目されているメタボリック症候群と前立腺がんの関係も研究しています。それにも増殖因子が関わっているんです。

 それから、男性生殖器の再生の研究もやっていて、これも他ではあまりされていないと思いますね。

 生殖器の再生医療というのは、例えば、前立腺を手術で全摘すると、性機能が失われますよね。そこで、陰茎海綿体神経という勃起をつかさどる神経を、再生の技術を使って回復させようという基礎的な研究です。あるいはED(勃起不全)。薬をつかったりする治療があると思いますが、薬に反応しない人に、再生の技術を使って、機能を回復させるというものです。

■「会陰式」から腹腔鏡、ロボットまで低侵襲を重視

 臨床的には、低侵襲、痛みの少ない体に優しい治療法の開発、研究を続けています。

 広島大学の泌尿器は前立腺の手術は古くから特徴的なことをやってきたんです。昔は前立腺の手術は下腹部を切って、開腹でやっていました。でも、前立腺って、肛門からすごく近いところにあるんですよね。だから、会陰という陰のうと肛門の間を切る「会陰式」という方法に、先代のころから取り組んでいます。私は、途中からそれを引き継いで、確立させました。これは、日本でも非常にやっているところが少なくて特徴的だったんです。

 会陰式は、2010年に広島大に手術支援ロボット「ダヴィンチ」が入ってロボットに変えました。ロボットは全国でも早く入れたんです。全国で5カ所しかない研修施設のひとつになっています。症例数が多くて、古くからやっているので、全国から見学に来られますね。

 腔鏡手術の件数も多いですよ。輩出している技術認定医の数も多いですし。これは1992~3年ごろから始め、腎臓、前立腺、膀胱とやっていました。ロボットの手術は前立腺しか保険収載がありませんよね。だから、他は腹腔鏡でやっています。

 いくらロボットが普及してきても、腹腔鏡ができない人は、ロボットでの手術はできません。何かあったときに困りますもんね。

 泌尿器科は、ロボットでの手術で、唯一保険収載が認められているので、ロボット効果、ダヴィンチ効果と言われて泌尿器の入局者が増えたという噂があります。

 でも、私たちのところはずっと年平均3人ぐらい。急激に増えたということはないですね。

■女性医師の獲得を

 排尿障害、失禁、骨盤臓器脱など、女性の泌尿器関係のトラブルってけっこうあるんです。

 これまでは症状があってもあまり表に出てこなかったのですが、啓蒙の効果もあって「自分が病気なんだ」と認識する人が増えました。また高齢化社会だということもあり、患者さんの数が急増しています。

 そして、その女性患者さんの中には、女医さんに診てほしいという人もけっこういます。今、広島大学出身の泌尿器科医は190人弱。その中に女性は6人です。われわれも、女性医師を獲得しなければいけないな、と思っています。

 泌尿器科自体のニーズも高いんですよ。いろいろな病院から、泌尿器科を新設したいと要望が来ています。でも、そういったところに十分対応できていないのが現状です。対応するためには、入局してもらわないと困るし、入局してもらえるようにいろいろなアピールをして魅力を伝えていかないといけないと思っています。

■診断、手術、内科的治療もできる

 泌尿器の魅力は、手術できるところ。一般的に、外科系は、内科で診断された患者さんが紹介され、それを手術するというパターンですが、泌尿器科は、自分で診断し、手術し、その後も自分で診て内科的な治療もできるんです。

 手術にしても、尿路系、生殖系の手術だけでなく消化管、腸もさわります。膀胱を取ったら、尿をためる袋が必要になりますが、その袋は回腸でつくるので、消化管の手術や管理も必要になるのです。外科と変わらないような全身管理も必要ですし、マイナーな科とはいえ、メジャーな体験ができるというのも魅力だと思います。

 大学は臨床・研究・教育をする場所です。最先端の治療をいち早く取り入れて、それを検証して社会に提供する義務がありますから、常にアンテナを張って、どういう治療が求められているのか、ということに気をつけて研究、開発をしていかないといけませんね。


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