岩国市医療センター医師会病院 センター長 正木 康史
使命感とやる気を持ち、新しい風を吹き入れてくれる若い人に期待しています。(正木 康史)
■岩国市医師会理事 山口県医師会理事 岩国市医療センター医師会病院センター長 山口県医師会有床診療所部会会長 全国有床診療所連絡協議会監事 全国有床診療所連絡協議会中四国ブロック会副会長 全国有床診療所連絡協議会常任理事 日本医師会診療報酬検討委員会委員
岩国市医療センター医師会病院は平成5年8月1日に、地域住民の強い要望を受けて開設されましたが、早いもので22年目に入りました。
この病院が出来た大きな理由のひとつには、25年前当時の岩国医療圏における医療資源不足がありました。
当時大きな病院といえば、町はずれに国立岩国病院が一つあっただけで、例えば胃がんなどの手術がさばけないために入院4〜5か月待ちで住民は広島などに行かなくてはならないような状況で、リハビリテーションや救急医療の提供も満足できるものではありませんでした。
そこで、岩国市医師会執行部が中心となって「福祉の里構想」を掲げ、市民も巻き込んで署名活動を実施し、当時の市民11万人に対して7万人を超える署名を集め、行政から土地の無償提供などの補助を受け、岩国市医療センター医師会病院の開設にこぎつけることができました。
平成16年には回復期リハ病棟(50床)の増設、平成24年には岩国市療育センターの併設など、施設の拡充を図り、先進医療の提供はもとより、365日24時間救急、回復期リハ、緩和ケアや療育などを実施し、さらに今年6月からは地域に必要とされる回復期ケア病棟も設置しました。
平成10年から災害救急病院指定や地域医療支援病院承認(県内初)、平成12年からは日本医療機能評価機構の認定も受け、またDMATやJMATのチームも編成し、地域に必要不可欠な医療施設となっています。
当医師会病院は医師会や医師会員の利益を目的とした病院ではなく、必ずしも十分でなかったこの地域の医療・福祉を何とかしたいと考えた岩国市医師会の先人たちの熱い思いで実現したもので、その精神は現在も引き継がれています。
医師会員からの病院に対する出資金の提供、また開設当初より医師会員も救急センターに出務して365日24時間救急の維持に協力するなどし、医師会病院を支えています。
大きな借金を抱えてのスタートでしたが、なんとかこれまで健全経営で存続しています。
これはもちろん医師会病院の職員の頑張りがあったからです。
私は有床診療所の院長と医師会病院のセンター長を兼務していますが、センター長としての仕事は行政、大学、外部施設や地域との意思の疎通を図り、理解や支援をしていただくことと、院内の諸問題の解決にあたることです。
岩国市医療センター医師会病院。平成24 年7 月岩国市療育センター開所。平成24 年10 月電子カルテシステム運用開始。平成26年6月地域包括ケア病棟1承認(47床)。平成26年8月地域包括ケア病棟2承認(47床)。
多くの病院も同様だと思いますが、現在の最大の懸案事項はマンパワーの確保です。
平成16年4月より必修化された医師の新臨床研修制度と、大学病院の独立行政法人化による自身の収益確保の必要性などにより、大学病院からの医師派遣機能の低下は著しい状況です。
また、看護師も7対1病棟の増加で十分な人員確保が困難な状況にあり、当院も看護師不足で病床がフル稼働できておらず、すべての入院要請に応え切れておらずもうしわけなく思っております。 看護師の確保対策としてホームページの活用や奨学金の充実など、また離職対策としては院内保育の充実、夜勤免除、誕生日月のリフレッシュ休暇を導入していますが、目に見えた効果が出ていないのが現状です。
団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けて、この10年間日本の医療・介護・福祉は大きな変革の時を迎えます。
手始めにこの10月からは病床機能報告制度が始まっており、その報告結果を受けて県より地域医療ビジョンが示されることになります。
そして近い将来には各医療圏ごとに地域包括ケアシステムが構築されることになると思いますが、当医師会病院は医師会、行政と一緒になってその中核的な役割を果たしていかなければならないと考えております。
私は3代目のセンター長で、就任して早や7年目に入っておりますが、マンネリ化は決してよくありません。
この地域の将来を見据えて使命感とやる気を持ち、この岩国市医療センター医師会病院に新しい風を吹き入れてくれる若い人材の台頭を期待しています。
私も当時センター長就任を打診された時にはその重責を考え、一旦はお断りいたしました。
しかし、諸先輩方の「人間頼まれるうちが花だよ」との殺し文句で一花咲かせる決意をした次第です。
今後、医師会病院の10年後、20年後を見据えた将来構想を立てつつ、うまく若い世代にバトンタッチしていきたいと考えています。