=第6回全国児童福祉安全委員会連絡協議会で成果報告相次ぐ=
児童福祉施設内での暴力をなくし、子どもたちが安心して生活できるよう、「安全委員会方式」を導入している児童養護施設や児童相談所の職員など150人が参加して、第6回全国児童福祉安全委員会連絡協議会が10月9日、10日、広島県福山市で開催された。
「安全委員会方式」は、施設内での2レベル(顕在性・潜在性)3種(職員暴力・児童館暴力・対職員暴力)の暴力をなくすため、九州大学大学院の田嶌誠一教授が考案した教育システム。平成18年に山口県の児童養護施設で初めて導入され、現在は9道県18施設(児童養護施設や児童自立支援施設)に広がった。
開会式で小川喜代光会長(こぶしが丘学園前園長=広島県福山市)が、暴力問題の解決なくして子どもの成長はない。この方式の有効性をさらに高めるため、しっかり学び合おうと訴えた。
今大会は「暴力と性暴力への有効な対応」がメインテーマ。基調講演で築山高彦愛知県西三河児童・障害者相談センター長は「児童相談所長から見た施設内暴力・虐待」と題し、子どもを施設に入所措置させた責任からも、児童相談所と施設が連携して子どもの安全確保の必要性を強調した。
実践発表では、早くからこの方式を導入している3施設から、子どもの成長のエネルギーを引き出すための創意工夫が報告された。
テーマ別研修で田嶌教授は「子ども間の性暴力への対応の基本的視点は、単に性的いたずら・性的事故ととらえるのではなく、性暴力であるという認識を持つべき。そのためにも潜在的な性的問題行動も含め早目にキャッチすべき」と指摘した。
また飯嶋秀治九州大学大学院准教授は、2006年に、第1号施設での安全委員会の設立に関わる中で、現在もSNSでつながっている当時の加害児童が、高齢者介護施設で2年勤め上げていることを紹介、安全委員会方式導入で暴力が収まったあと、年少児が弾けたり、新たな子どもの入所や職員の交替があっても、安全委員会方式が機能して職員全体のスキル・養育機能が上がっていれば、子供らは安定した環境に馴染むと述べ、現状に満足せず、実践で見えてきた課題に取り組む必要性を説いた。
閉会式での総括コメントで、元児童相談所長で愛知教育大学大学院の萬屋育子特任教授は、虐待対応に追われて施設入所児童まで手が回らなかった児童相談所の実態を述べたあと、①安全委員会方式は子どもにも大人にもわかりやすいシステムで素晴らしい成果を上げている②この方式を導入したことでお互いの実践を交流し合い、問題が起きた時にノウハウを伝え合える③暴力をなくす取り組みは日々の安心につながり、子どもたちの成長のエネルギーを引き出す④子どもたちへの聴き取り調査は、相談する力や人を信頼する力を養っている、などと安全委員会方式のメリットを列挙した。同方式を導入していない施設や児相関係者も40人参加し、関心の高さがうかがえた。来年度の全国大会は愛知県で開催される。
【安全委員会方式とは】
児童福祉施設内での2レベル3種の暴力をなくし、子どもたちの成長のエネルギーを引き出すため九州大学の田嶌教授が考案した教育システム。基本要件として①力関係に差がある「身体への暴力を」を対象とする②委員会に児相と学校に参加してもらう③定期的な聞き取り調査と委員会の開催④4つの基本的対応ステップ『厳重注意、別室移動、一時保護(の児相への要請)、退所』を踏むことなどがある。情報提供=全国児童福祉安全委員会連絡協議会事務局。