地域の人とやりたい3つのこと

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阿蘇医療センター 病院事業管理者/病院長 甲斐 豊

1987 熊本大学医学部を卒業し同脳神経外科入局以後、熊本地域医療センター、人吉総合病院、済生会熊本病院、熊本大学医学部附属病院、熊本赤十字病院、熊本大学医学部特任教授などを経て 2014 阿蘇中央病院(現阿蘇医療センター)院長■日本脳神経外科学会専門医 日本脳神経血管内治療専門医・指導医 日本脳卒中学会専門医 日本頭痛学会専門医・指導医

 終日しとしとと秋の始まりを告げる雨だった。JR熊本駅から阿蘇駅まで各駅停車でおよそ1時間半、阿蘇の山々はどれも霞が立ちのぼっていた。

 阿蘇駅に隣接している道の駅「ASO田園空間博物館」のレジにいた女性に阿蘇医療センターまでの道を聞くと、「きれいになりましたもんね。駅にも近くなったし」。道の駅から10分歩くとヘリポートが見え、今が無風であることをオレンジ色の吹き流しが示していた。

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 今年8月6日から阿蘇中央病院を阿蘇医療センターに改称し、この場所(旧阿蘇中学校敷地)に新築移転して本格稼働しています。阿蘇駅に400mほど近くなりました。

 旧病院との大きな違いは救急搬送用のヘリポートを備えたこと、外来棟は耐震構造、中央診療棟と病棟は免震構造で、震度7まで耐えられること、MRIやX線循環器診断システム、CT、X線透視台、乳房撮影装置など高度医療機器を導入したこと、そして電子カルテ化、さらには世界のどこにいても患者さんのCT画像をiOS搭載端末で受け取り、拡大したり色を変えたりして診断できる、セキュリティの非常に高い遠隔医療診断支援システムXMIX(開発=㈲TRIART=福岡県飯塚市)の導入などです。

 阿蘇は南北25km、東西18kmのカルデラの内外に7万人が住んでおり、これまで救急患者の多くは熊本市内まで1時間かけて運び、途中で容態が悪化することがしばしばでした。

 旧病院は建物も設備も古くて阿蘇市民の信頼を得ることが難しく、それが職員の意識の低下につながっていた面はあるでしょう。ところが新築移転を目前にして、全職員の気持ちが一つになり、ここで踏ん張らなければという自覚につながったようです。

 院長として、あるいは1人の医師として常々みんなに言っていることに、「信頼と責任」があります。いくら病院がきれいで設備が整っていても、地域の人たちや患者さんから信頼されなくて医療がうまくいくでしょうか。そこをどうするかを職員の皆さんには引き続き考えてほしいと思います。

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岩下俊自事務局事務部次長の案内で中央診療棟と病棟の免震構造を見せてもらった。最下層のおよそ70 か所にダンパーが設置され、40cm の横揺れまで耐えられるという

 当センターが地域住民の方々と一緒にやっていこうとしていることが3つあります。1つは阿蘇中学3年生の体験実習です。旧病院だった昨年も5人の中学生が5日間の研修を行ないました。そのうち2人は医学部進学を希望し、1人は救急救命士になりたいと言っていました。今月も5人を受け入れる予定です。

 2つ目は阿蘇市内にある絵画や生け花の趣味グループの作品を展示させていただくことです。作品には作者名を表示しますから、作者が自分の家族や知人であればすごくうれしいでしょうし、作る側も励みになります。

 3つ目は、高齢社会で元気なお年寄りが多いことに着目し、一定の研修を受けてもらったあと当センターでボランティアをしていただくことです。地域住民の目で来訪者をサポートしてもらうことでサービスの向上につながるでしょうし、職員にも好ましい緊張感が生まれると思います。

 医師になろうと思ったきっかけは覚えていませんが、中学生の時にはそう決心しており、進路指導の先生に高校と大学を決めてもらいました。脳神経外科を選んだのは、私は子供のころからずっと剣道をやっていて、大学の剣道部に入ったら、複数のOBと先輩4人がみんな脳外科医だったからです。

 脳外科医というものはおそらく他科に比べて達観しているのではないかと思います。

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 今は5~6時間で交代しますが、私が研修医のころは、先輩医師は1人で20時間以上、長い時は27時間ものあいだ、トイレにも行かずに手術をしていました。これは感情のコントロールやペース配分がきちんとできていなければやれないことで、感情が高ぶっても、その逆でもできません。剣道で言えば試合が始まる前の心理に似ています。大事な勝負であるからこそ沈着冷静な心境に至れることを、先輩の背中と剣道から教わりました。

 今は新病院スタートで時間が取れませんが、昨年は試合を80回やりました。今の仕事を引退したら、未来の脳外科医を作るために、子供たちを集めて剣道を教えるかもしれません。


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