技術の向上を促し接遇は充実させる -労働環境を整え、人員を確保する-

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社会福祉法人恩賜財団済生会支部 済生会広島病院 院長  隅井 浩治

隅井 浩治(すみい こうじ) 1971 広島大学医学部卒業 1978 文部教官広島大学医学部附属病院助手 1994 広島大学医学部助教授 2001 済生会広島病院医療部長2006 同院長

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済生会は平成23年に創立100周年を迎えた。後ろの写真は、その記念式典を撮影したもの。

 済生会は明治天皇による「医療をうけることができないで困っている人達に施薬救療の途を講ずるように」という趣旨の「済生勅語」と、ご下賜金をもとに 明治44年に創立されました。済生会広島病院は、秋篠宮文仁親王を総裁にいただいた恩賜財団済生会の、広島県支部によって運営される病院です。

 高齢者の増加に伴い、福祉の重要性が増しています。医療だけでは収まりきらない様々な問題があります。たとえば肺炎で入院してきて病気は治ったが、廃用性筋萎縮で動けなくなり帰宅が困難になる人などがいます。福祉施設との連携など治療のその先のことを考える必要があります。

 昔は全国各地の大規模駅の裏手にバラック小屋などが立ち並ぶ地区が存在していました。医療を受けたくても受けられない貧しい人たちが多数住んでいて、済生会の病院の多くがそこで医療を施していました。日本が豊かになりそれらの地域が発展するのと共に済生会の病院も大きくなっていった歴史があります。

 広島県済生会は、昭和4年に支部を設置、昭和5年呉駅の近くに診療所を開設、同年病院に改称し、社会福祉法人として、また公的医療機関として地域の医療・福祉に従事してきました。駅で行き倒れになった人などの救護施設の役割を長年担ってきましたが、医学・医療の急速な進歩に伴う医療の高度化と多様化に応ずるため、また福祉を含めた包括的な施設に衣替えをするには土地が手狭になり困難となってきたので、今の場所(安芸郡坂町)に昭和62年に広島病院を開院しました。

 地域に密着した病院づくりをしていて急性期から亜急性期、介護、福祉との連携に力を入れています。患者さんの7割から8割が坂、矢野、熊野など近隣の住民なので、地域で完結できる医療の提供を目指しています。地域の医師会が在宅や緩和ケアに力を入れているので、連携を取りながら退院調整なども行なっています。

 当院は最寄り駅の坂駅、矢野駅のちょうど中間に位置し、徒歩で20分以上かかります。坂駅からバスが出ていますが便が非常に少ないので公共交通機関で来るには不便な場所にあります。車でないと来院しづらいのが弱点ですね。駐車場がもっとあればいいのですが、土地が足りないので頭を悩ませています。

 地域住民から必要とされる救急を充実したいとの思いがありますが、医師不足なので100%地域のニーズを満たすには至っていません。大きな病院が近くにあるので3次はそこでお願いして、1次、2次は職員が疲弊しない範囲内で対応していきたいと考えています。

 日本人の半分ががんにかかり、3分の1ががんで亡くなります。今後は高齢者のがんが増加してきます。広島市内の大病院では初期治療をして、手術、放射線治療と徹底的ながん治療を行なっていますが、高齢者はがん以外の合併症を抱えている人も多く、集中的にがん治療を行なえません。これまではがんにかかると大規模で専門性の高い病院で診てもらいたいと思う人が主流でした。しかし広島市内の病院だと遠くてお見舞いに行けないので近くで診てほしいと思うご家族もいます。合併症をケアしながらのがん治療、緩和ケアがこの地域で必要になってくるでしょう。

 救急に特化している病院、がんに特化している病院があります。この地域では特化した病院ではなく幅広く両者を受け入れることができる病院が必要なので、当院がその役割を担っていかなければならないと考えています。また地域包括ケア病棟の充実も重要だと考えています。国もその方向性を打ち出しているので、その路線を踏襲していくつもりです。救急やがん、地域包括ケアどちらに力点を置くのかが問題ですが、周囲との兼ね合いもあるので、状況を見定めていかなければ

 医師確保が今後の課題です。研修医が残ってくれれば良いのですが、現状では広島大学からの派遣に頼らざるを得ません。いろいろな手段を講じて医師集めに奔走していますが、あまりうまくいっていません。慢性期の病院であれば退職後の医師を雇用することも一つの手ですが、急性期の病院では当直機能を維持しなければならないので、若い医師でないと体力的にむつかしい面がでてきます。

 昨年2月に世界最新の80列のCTを導入し、10月には電子カルテを導入しました。今後も新しく導入可能なものは取り入れて、病院の魅力を向上させ、それがスムーズな医師確保につながることを願っています。

 看護師の確保は、昨年くらいからスムーズになりつつあります。保育室の設置、短時間勤務の取り組みが功を奏しているのでしょう。数年前から土曜日も休診にしました。看護学校の学生は土曜日に休めるかどうかは大きなポイントのようです。職場環境の改善に力を入れているので、職員の労働環境はかなり良くなっていると思います。

 病院の理念に「優しく、温かく、確かな医療」を掲げています。医療の現場では言葉が大事だと思っています。済生会江津総合病院の堀江裕院長は「言葉はビタミン」だと言っています。言葉自体に病気を治す力はありません。でもビタミンは人間の生存に必要不可欠です。

 患者さんから職員の対応、なかでも言葉づかいについてのクレームがあります。技術面の努力は医療者として当然すべきことです。今後は患者さんへの接遇面の充実に力を入れていかなければなりません。

 地域の住民の健康維持・管理を対象にした講演会、なでしこ健康教室を開催しています。

 学生時代は読書が趣味でドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」などが好きでした。そこで描かれる複雑な人間心理に興味を持ちました。心理を知る前には人の体のことも知らなければならないだろうと思ったのが医者に興味を持ったきっかけでしたね。

 若い医師には患者さんと話ができない人がまれにいます。いくら成績優秀で、技術が優れていても人に興味がない人には医師は務まらないと思います。

 若い医師はとにかく研究をがんばってもらいたいですね。助教授をしていた時は英語と統計学を一生懸命に勉強しなさいと言っていました。研究をやっていく上では最も必要な学問だと思います。現場の第一線ではいろいろな患者さんを診なければなりません。自分の知識と経験だけですべてを判断するのは誤りのもとです。しっかりと患者さんの訴えに耳を傾ける姿勢が医師に最低限に求められる資質です。

 自分の専門領域を極めて核となるものを持たないと医師としての自信が持てません。核となるベースを固めた上で、いろいろなことに興味を持ち、バランス感覚に優れた医師が一人でも多く増えてほしいと願っています。

 大学にいる時は研究が忙しく読書をする余裕がありませんでした。こちらに来てから少し余裕が出来たので、吉川英治や司馬遼太郎などの歴史小説はほとんど読破しました。子供の時に読んでいた小説は今では古典です。夏目漱石、島崎藤村などの小説を読み返してみようかと考えています。改めて読むと違う印象を受けるかもしれませんね。今は「赤毛のアン」を原文で読んでいます。


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