乳房再建に力を入れています

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

岡山大学病院 乳腺・内分泌外科 教授 土井原 博義

土井原 博義(どいはら ひろよし)1982 岡山大学卒 岡山大学医学部第二外科入局 国立病院四国がんセンター外科 1994 岡山大学医学部第二外科助手 1997 同講師 2003 岡山大学病院乳腺・内分泌外科検診科長 2007 同大学大学院医歯薬学総合研究科腫瘍・胸部外科准教授 2008 同大学乳房治療・再建センター設立・センター長 2010NPO法人瀬戸内乳腺事業包括的支援機構設立・理事長 岡山大学病院乳腺・内分泌外科教授 2013 同大学内分泌センター長

BCTRとは。

C6-1.jpg

 岡山大学病院内に平成20年に設立された、「乳がん治療・再建センター」の略称で、私がセンター長をしています。乳腺・内分泌外科のほか、形成外科や精神科,看護師を含めたメディカルスタッフが集まり、エビデンスに基づいた乳癌治療、整容性を重視した乳房再建術を心がけています。

 大学病院はタテ割りで、どうしても他科との横のつながりを持ちづらいのですが、センター化することで協力関係の構築が容易になりました。

治療と再建を両立させているわけですね。

 形成外科の木股敬裕教授はがん治療を理解してくださっており、オンコプラスティックサージャリーを推進しやすい環境にありました。現在月1回、術前術後のカンファレンスを合同で行っています。

 乳房再建手術は平成16年から行なっていました。当時は外科医が担当していたので、整容性があまり高くありませんでしたが、形成外科医と共同で行なうようになってからは、患者さんの満足度が上がりました。また最近は乳癌の患者さんが若年化してきており,若い人にとっては全摘して乳房が無くなるのは耐え難い苦しみだと思います。摘出手術のときに同時に再建手術をして、以前と近い姿にしてあげることで高いQOLが維持できることを重視しています。

 今後は整容性をこれまで以上に高めていくことに尽力するつもりです。乳房の形はそれぞれで基準となるものがありません。一般的に見てどうか、主観的にみてどうか、一人でも多くの患者さんに満足してもらえるように努力を続けていきます。

センター内に下着メーカーのスタッフが常駐しているそうですね。

 患者さんから乳房再建をした後に、どんなブラジャーを着ければよいかの相談を受けていましたが、男の私にはいいアドバイスができませんし、女性である看護師さんたちにとっても、難しいことでした。

 外来看護師が一人ひとりの形に合ったブラジャーが作れないかと考え、下着メーカーの㈱ワコールホールディングスに相談に行きました。同社の人間科学研究所と「乳房再建後の下着の安全性と有用性」というテーマで共同研究を行なった結果、採寸の上、胸にフィットしたブラジャーを着けることで、再建した乳房の形が崩れることを防ぎ、再建効果を高めていくことができることがわかりました。最も懸念していたのは両腕の浮腫ですが、臨床試験の結果、問題がないことが分かりました。デザインもおしゃれなものが多いので、とても好評ですね。

教室で力を入れている取り組みは。

 現在は乳癌に関する疫学調査、前向きコホート研究に力を入れています。すなわち乳癌の発生や再発要因に関して環境因子、食事因子、生活歴などがどの程度関与しているかを調査、研究しています。乳癌治療のガイドラインにはアルコール、喫煙、妊娠・出産、肥満、運動などが、乳癌発症因子に関与しているといわれていますが、大部分は欧米のデータです。特に肥満の度合いは欧米人と日本人で大きく異なります。また大豆イソフラボンには乳癌の発生率を減少させる効果があると言われていますが、日本人はみそ汁、豆腐など大豆食品をたくさん食べるので、発症リスクが低いといえるかもしれませんね。

 実際には乳癌の患者さんに飲酒歴、喫煙歴、摂取する食事の種類や摂取量、妊娠・出産などの生活歴などについてのアンケートを行っており、10年後には生存への影響も明らかになってくると考えています。

 また昨年より先進医療で実施が承認された乳癌のラジオ波焼灼治療にも力を入れています。この治療は腫瘤径1・5㎝以下の乳癌に針を刺して数分間通電させてがん細胞を死滅させる治療法で、乳房を切らない手術として注目されています。国立がん研究センターを中心に現在、全国約10施設で行われており,ラジオ波治療の安全性を目的にして5年後には局所再発率などの結果を出す予定です。

啓発活動は。

C6-2.jpg

来年2月に岡山市北区で開催される第21回日本乳腺疾患研究会では、土井原教授が世話人を務める。

 乳癌患者数は右肩上がりで増加しており、それを減らすためには予防が重要です。まず食事、生活習慣などを見直すことによる一次予防。そして検診を受診する二次予防を徹底することです。

 10月はピンクリボン月間なので、何か市民に乳がん検診の重要性を伝え、受診勧奨する方法はないかと考えています。

 岡山県の各地域の保健婦さんや愛育委員は、各家庭を訪問し、早期発見・早期治療のための検診受診を勧めています。そういった活動が実ったのか、岡山県は乳癌検診の受診率が全国トップレベルですが、欧米に比べるとまだまだ低いのが実情です。困難が伴いますが、今後70から80%まで引き上げないといけないと考えています。

 40歳以上の乳癌検診は死亡率の減少につながっていることは明らかであり、さらに腫瘤が3㎝以下なら乳房温存が可能です。また早期発見により、腋窩郭清の省略や化学療法を回避することもできます。早期発見が重要ですので、定期的な検診受診をおすすめします。

 来年の2月27・28日に「第21回日本乳腺疾患研究会」を開催します。これらの活動を通じ、乳癌に対する理解、検診の重要性を多くの人に知ってもらいたいですね。

ミャンマーでも検診を実施されています。

 昨年の12月からミャンマーのヤンゴンで乳癌検診を試験的に開始しました。無料で約200人を検診すると6人乳癌を発症している人がいました。これは非常に高い発見率です。肝炎、結核、エイズなどの感染症の治療が主な医療になっていることや、金銭的な面で病院受診する人が少ないのが原因です。検診が軌道に乗れば、そこから一歩進めて組織診断まで行えるシステムを構築していきたいと考えています。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る