地域連携のモデルケースになれると思います

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宮崎県立宮崎病院 医長 大友 直樹

1966 大阪府豊中市で生まれ、小学3年から宮崎県延岡市在住。ラサール高校卒業。1992 九州大学医学部卒業後、第一外科入局。九州大学病院、愛媛県立中央病院、九州労災病院、新小倉病院、福岡県立嘉穂病院で研修し、1998 米国ミズーリー州セントルイス・ワシントン大学移植外科に2年留学、帰国後九州大学病院を経て、県立宮崎病院外科勤務、現在に至る。医学博士。
■専門は乳腺外科と腎移植。日本外科学会指導医 日本乳癌学会専門医 日本移植学会認定医 ■1999 American society of transplant surgeon Young Investigatoraward

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宮崎県立宮崎病院 医長 大友 直樹

宮崎県の乳腺事情

 宮崎県には、ブレストピア(宮崎市丸山)の駒木幹正先生をはじめ、宮崎大学の柴田伸弘先生や藤元総合病院(都城市早鈴町)の玉田修吾先生、乳腺外科クリニックAllabout breast(宮崎市錦町)の町田英一郎先生、まつ婦人科クリニック(宮崎市大字生目)の松敬文先生のような有名な方がおられますが、全体としては、1つの病院だけで都会のような診療ができるわけではありませんので、宮崎全体が1つのチームのような感じだといえば分かりやすいでしょうか。

 乳がんの治療にはいろんな専門分野が関わってきます。それを県病院だけでやれているわけではありませんが、地域全体を1つの病院と考えたような乳腺治療を行なっていますから、できない治療があるわけではありません。他院の医師同士がフェイス・トゥー・フェイスで話す機会も多く、そこはメリットでしょう。

 いま話題になっている妊孕性(にんようせい)についても、受精卵の凍結を県病院ではできませんが、県病院に近い開業医の戸枝通保先生(とえだウイメンズクリニック院長=宮崎市高千穂通)など、得意としている医療施設と連携しています。

 乳房再建が保険適用となり、宮崎県内では当院と藤元総合病院がティッシュ・エキスパンダーの保険適用を取っていますが、シリコンに入れるための資格を持っている形成外科医が宮崎県にはいませんので、福岡の矢永博子先生(矢永クリニック院長=福岡市中央区)のところにお願いするようなルートがあります。

 自家組織再建は宮崎県でできますが、これも宮崎江南病院(宮崎市大坪西)にお願いするというように、病院完結型ではありませんが、宮崎県の乳がんの患者さんに満足のいく医療の提供はできていると思います。当院には内視鏡手術の得意な医師がおり、そこはこちらでやるわけです。

 このように、乳腺に関わる医療者の人数が少ない分、逆に工夫がしやすく、患者さんのための地域連携という点でモデルケースになると思います。地域連携がなければできませんからね。

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宮崎県のいいところ

 宮崎県はのんびりしている土地柄で、やさしい人が多く、いい意味での田舎をあちこちに感じられます。口の悪い人は宮崎の男性を「いもがらぼくと」(芋の茎で作った木刀)と呼び、女性のほうは「日向カボチャ」で、気だてがいいそうです。

乳腺医への道のり

 医者になろうと思ったのは、私の通っていたラサール高校にネパールから神父さんが来られ、講演で「世界には医者の足りていないところがある。私は医者ではないが、あなたたちは医者になれる」と訴えられたことが大きいです。高校2年生くらいまでは父と同じようにエンジニアになろうとぼんやり思っていましたが、神父の講演が心に残り、3年生の時に進路を決めました。

 乳腺をやるきっかけは、医者になって10年目くらいに宮崎に来たことです。それまで腎移植などを主にやって、臨床はほとんどやっていなかったのですが、ここに来て2年目くらいに、すごく尊敬していた先輩から、残りたければ乳腺をやってくれないかと誘われたんです。そしてやってみるとすごくやりがいがあり、今に至っているわけです。田舎ですから足りないところは自分でやらなければとの思いで始めたのが正直なところです。

乳腺を選んでみて

 患者さんに笑顔が出るとうれしいですね。

 たとえば乳房切除術をして喜んでくださる方もいるんですが、温存手術や再建でうまくいったら本当に喜んでもらえ、10年後にありがとうございますと言われた時もうれしかったです。そしてこれは乳がんだけではないと思います。

 私たち田舎の医師は、都会のスーパードクターみたいに1つのことだけに集中できるわけではなく、移植をしながら、乳がんも診ながら、急患にも対応しているので、まわりと協力してやっていく状況です。

 都会の病院よりも田舎のほうが、町を歩いていて患者さんに出会う場合が多く、その点でも患者さんとの距離は近いです。でもこの町にずっといる気持ちで始めた乳腺ですし、医局人事ですから移動する可能性はありますが、ここにいる価値は作りたいと思います。

仕事で思うこと

 誰でも必ず亡くなります。そして亡くなった時に、残ったご家族の顔を我々は見ていて、その方たちが状況をどのように受け入れて病院から帰っていくのか、そこがとても大切なような気がします。本人も病院も懸命に頑張ったんだと思ってもらえるのとそうでないのとは、残った人たちの今後に大きな違いを生じるのではないかと思います。

 宮崎県は患者さんの口コミもあって、乳腺の手術がいくつかの病院に集中しています。医療効率はそのほうがいいのかもしれませんが、医療は大学病院が中心になるのがいいのではと思います。しかし宮崎大学は消化器や心臓や肺はかなりしっかりしているのですが、乳腺外科医を教育する施設がないのが実情のようです。でも最近になって柴田先生が入って来られました。

 当院には乳腺だけをやる医師が外科で4人、内科で1人います。研修医は当院で毎年10数人、乳腺も何人かいますが、教育機関はやはり大学だと思います。これから柴田先生に期待したいと思います。

患者会と乳がん検診

 ブレストピアさんにはあけぼの会があります。当院にもコスモス会という患者さん主体の患者会があって、交流会を月に一回行なっています。これには医師や看護師や薬剤師も関わって講演を担当しています。今年も10月に総会が開かれ、私が1時間ほど講義をして、座談会にも出る予定です。テーマは毎年、新しい治療の話をすることが多いので、今年はT-DM1 が出たことと、乳房再建が保険適用になったことについての内容になると思います。また世界の学会の話をして、おそらく治療はこうなりそうだと予測を伝えるかもしれません。

 乳がん検診率の低さについては、もっと受けやすい環境があったらいいのではないかと思います。日曜日に受けられるとか、仕事をしながらとかです。

 ただ、検診率だけあげればいいのかということの見直しが、米国の例などを参考に言われ始めているようです。それよりも、症状があった時に病院にすぐ行ける体制が必要だと思います。

 近年は働く女性が増えています。ALL aboutbrest では日曜日に乳癌検診が受けられますが、当院も含めて日曜や土曜日に診察に行ける施設が不足しているように思います。。普通の生活の中で、自己検診でちょっと気になるから行ってみようということのほうが大切なのではと思います。機を逸して半年あとに来る人も多く、何年も前から気になっていたという人もいます。

 怖さもあるでしょうし、診察してもらうタイミングを逸したこともたぶんあるでしょう。そして患者さんを診て、もっと早く来ればよかったのにと内心思うことはたくさんあります。

読者に訴えたいこと

 日本乳癌学会のガイドラインをはじめとして、予防についていろいろな情報があります。でも生活習慣病とは違うので、どうにもならないことも多いです。乳がんは怖くありません。症状があればすぐに来てください。最近はいろんな方法がありますから。


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