愛媛県新居浜市 住友別子病院新病院建設工事８月１日に開札
新病院の完成予想図。
8月1日の開札で、医療法人住友別子病院（鈴木誠祐理事長＝愛媛県新居浜市）が発注する新病院建設工事の施工者が決まった。病院では６月25日から一般競争入札を公告しており、７月４日まで参加を受け付けた。消費税増税前の契約を意図し、昨年９月と11月に入札したが不調に終わり、今回は３度目の入札。落札者は鹿島建設・三井住友建設ＪＶで、落札額はおよそ90億円。８月中に正式な請負契約を交わす予定。
設計は平成22年に㈱日建設計が担当し、７階建て免震構造。平成６年11月に増築した新棟は残し、渡り廊下でつないで利用する。総病床数は現行の４０１床から１割減の３６０床になる。現病院の敷地内にある駐車場や、女子寮が建つ部分に建設を予定。建築面積は小さくなるが、階高を増やすことで延べ床面積は現病院と同程度になる。各階の動線を短くすることで、効率的な看護体制が実現する計画だ。
建築費は高くなるが、限られたスペースを有効利用するため、壁式構造の鉄筋コンクリート造ではなく、柱と梁で力を受け持つ鉄骨造を採用した。駐車場のスペースも、現在の７７０台から大幅に増えることになる。
鈴木誠祐理事長（写真右）と加藤敏夫理事・院長補佐。
現病院旧棟部分は昭和41年の建設で老朽化しており、耐震化も施されていない。今回の新病院建築でそれらを改善するとともに、ＰＥＴ│ＣＴの導入や放射線治療器の更新など新設備を設置し、より高度な医療が施せる病院を目指す。また現行10床で運用される外来の化学療法室は広くし、増床とアメニティへの配慮を同時に行なう。救急指定病院としての機能を向上させるため、受け入れから診察までの動線を整理しユニット化するほか、ＩＣＵを直上に設け、体制の強化を狙う。ＩＣＵはそのまま６床で増減はないが、ＨＣＵかそれに類する治療室を設ける予定。また現在休診中の産科を再開させることを念頭に、外来スペースは設計された。平成18年に認定されながら平成20年に辞退した地域周産期母子医療センターの再設置を視野に入れ、ＮＩＣＵを設ける空間も確保してある。「今後50年使うことを考えて設計されています」と事務の責任者として建て替えを担当する加藤敏夫理事・院長補佐は言う。
予定はないが、緩和ケア病棟への一部転棟も視野に入れて病室の設計はなされているという。
５階建ての現病院。新病院の竣工後は取り壊され駐車場になる 予定。基幹道路に面し、交通量は多い。新病院の建設に合わせて、信号機を設置してもらえるように行政機関と交渉中。
病院は住友財閥が経営する別子銅山の病院として、明治16年５月に愛媛県の認可を受け、県下初の病院として開院した。平成17年１月には「地域がん診療拠点病院（現地域がん診療連携拠点病院）」に指定されるなど、東予地方の中心的な病院の１つとしての役割を果たしている。近年は住友化学㈱、住友金属鉱山㈱、住友重機械工業㈱、住友共同電力㈱の４社が出資する企業立病院だったが、建て替えの計画が起こった後の平成21年４月に経営形態を医療法人にし、住友金属鉱山株式会社住友別子病院から、現在の名称に変更した。
鈴木理事長は昭和58年に岡山大学を卒業し、同年秋から住友別子病院に勤務。昨年７月に西本健前理事長の後をついで院長。今年７月から院長と兼任する形で２代目の理事長に就任した。「理事長になって、対外的なあいさつなどが増えました。副院長から院長になった時ほどの大きな変化はまだ感じていません」と理事長。「歴代の院長は、建築にほとんどかかわらずに任期を終えられましたので、大役を任されたという思いがあります。現病院は廊下幅などが広く、設計思想が当時としては進んでいたため、50年使うことができました。私も未来に働く人たちのために、長く使える良いものを作りたいと思います」
