病院存続に麻酔科医は必要不可欠

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宮崎大学医学部 麻酔生体管理学  教授  恒吉 勇男

1990 鹿児島大学医学部卒業 鹿児島大学医学部麻酔科医員 1991 鹿児島市立病院臨床研修医 1992 鹿児島市医師会病院 1995 藤元病院麻酔科部長 1997 鹿児島大学大学院修了 鹿児島大学医学部附属病院助手(集中治療部) 1999 ワシントン大学医学部麻酔科研究員 2001 鹿児島大学医学部附属病院助手(集中治療部)2005 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 麻酔・蘇生学講師 2007 同准教授 宮崎大学医学部麻酔生体管理学教授

 宮崎大学医学部麻酔生体管理学教室の前身である宮崎医科大学麻酔学教室は、1977年に本松研一初代教授が開講し、同年に手術部、1979年に集中治療部を開設して規模を拡大した。1988年に二代目教授の高崎眞弓教授が就任、2003年の宮崎大学と宮崎医科大学の統合を経て、2006年に宮崎大学医学部病態解析医学麻酔生体管理学講座と名称を変え、手術室・集中治療室の機能充実が図られ、2007年12月から恒吉教授が三代目の教授に就任し、現在に至っている。

―麻酔科医が不足していると聞きます。 

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手術室の恒吉教授。記者も手術衣に着替えて撮った。(7 月2 日撮影)

 宮崎県も他県同様、麻酔科医不足です。ここ数年は一定数の入局者がいますが、地域の要望を満たすにはまだ不十分です。スタッフを十分に派遣できていない病院が県下で約5、6施設あり、派遣している病院でも、まだ足りているとは言えません。

 今後必要とされる麻酔科医は、現状の3倍以上です。現場はとても過酷な労働環境にあるので、一刻も早く、その状況を改善しなければなりません。そのために研修医、新人を一人でも多く獲得する努力をしています。

―女性麻酔科医の登用について。

 現在3名の医師が産休中で、1人が育休中です。今後、女性の就労に関するルール作りをして、みなさんが平等な環境下で、産休、育休、復帰後の就労条件を含め、無理なく、かつ医師としてのプライオリティを維持しつつ、安心して働ける職場環境作りを進めていくつもりです。

―教室の活動内容を教えてください。

 手術部では年間約6,000件の手術が行なわれますが、そのうち4,700件以上を麻酔科が管理し、これは実に全手術の70%以上にあたります。

 毎朝8時に麻酔がスタートし、9時から手術開始です。しかしなかなか予定通りには進まず、17時以降の残業は日常茶飯事ですが、不満を口にすることもなく、使命感を持って精力的に症例をこなしてくれていますね。

 電子麻酔記録や超音波エコーなど麻酔設備は充実しており、手術業務をサポートする3、4名の技術補佐員は、多忙な医師を助けてくれるありがたい存在です。

 教室では月平均2名の初期研修医および他科の後期研修医を受け入れ、年1〜6名の新入局員がいます。研修医にはマンツーマンの指導を行ない、麻酔科入局者は3か月をめどに症例を選んで独り立ちさせ、心臓麻酔や局所ブロックなどの高度な手技は、それを得意とする専門医による熱い指導があります。

 学生教育にも力を入れ、ポリクリ中に麻酔学、集中治療、ペインクリニックに関する山のような課題を消化させることで、麻酔科の重要性を叩き込む臨床実習を展開しています。

 「ルールと合理性と自主性を重んじる」が教室のモットーです。合理的で無駄のない麻酔研修システムと労働環境を提供しながら、自主性を重視した環境づくりをしています。

―麻酔科医を目指している人へメッセージを。

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 麻酔業務だけでなく集中治療業務、ペインクリニック、緩和ケア、救急分野と多岐に渡る診療を行なわなければなりません。しかし医師数は絶対的に不足しており、それらに十分な人員を派遣できていないのが現状です。

 麻酔科に入るといろいろな診療分野を選択でき、なおかつ病院内で中枢的な機能を担う中央診療部門で働くことができます。病院収入の4割ほどは手術に関連した収入であり、手術を効率よくこなしていくことが、健全な病院経営には不可欠となっています。

 麻酔科医が不足すると手術件数が減り、病院の経営は行き詰まりますから、医師を適切に配置することが重要です。

 今後は医療経済が厳しくなり、病院の淘汰が始まるでしょう。生き残りをかけた時代になるので、麻酔科医の有無はそれを左右するといっても言い過ぎではありません。適切な病院経営ができるか、手術ができずに衰退するかの岐路に立たされているので、今後10年間が勝負だと感じています。

 若い人にたくさん入局してもらい、麻酔ネットワークを確立することが宮崎県の安定した医療圏を作る基礎になります。当科が麻酔を軸に、集中医療、ペインクリニック、緩和医療、救急医療をサブスペシャリティに持つ技能豊かな優秀な人材で溢れ、人手不足の呪縛から解き放たれることを夢見ています。医師の促成栽培はできないので、地道に根気よく、若い人材を育て上げることが目下の課題です。

―趣味は何ですか。

 ゴルフです。なぜ魅かれるかというと、このスポーツは正しいスイングをすれば、スコアも上がる。しかし正しいスイングとは何かが分かりません。それを探すのが楽しみです。

 スコアを上げるためにクラブを変える、練習する、しかし正解にはたどりつけません。理想のスイングをして理想の球筋を出すためにはどうすればよいか、たえず自問自答をします。いつかものにしたいと思うが、なかなかものにできない、そのもどかしさが魅力ですね。

「外科の夜明け」トールワルド著 塩月正雄 訳

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 現在は絶版になっており、恒吉教授はインターネットで沖縄の書店から取り寄せたそうだ。

 麻酔のない時代、細菌が発見されていない時代、消毒など思いも及ばない時代が、つい150年ほど前まであり、手術に伴う激しい疼痛、手術後の感染や膿血症の発生は避けられなかった。本書には、そこから近代医学がどのように発展してきたのか、あたかもその時代に読者が生きているかのように描写されている。

 麻酔科医のバイブルともいえる一冊だ。


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