包括的にがん医療を考える
《橋渡し研究、がん薬物療法からサバイバーシップまで》
7月17日から19日まで、福岡市博多区の福岡国際会議場と福岡サンパレス、福岡国際センターの3会場で、第12回日本臨床腫瘍学会学術集会が開かれた。会長は福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学の田村和夫教授(福岡大学病院院長)で、運営事務局は㈱コングレ九州支社。3日間でのべ4,600人が参加した。
次回は来年の6月16日から18日まで札幌市で開催される。会長は北海道大学大学院医学研究科腫瘍内科学分野の秋田弘俊教授。
田村会長と愛媛大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学の石井榮一教授が司会の「小児がんサバイバーシップ」で、愛媛県立中央病院小児医療センターの石田也寸志センター長は演題「小児がん経験者の長期ケア―小児科医の立場から―」で小児期にがんが発病した人にとって人生の大きなイベントである就労・結婚・出産などは未知の体験であり、長期的な支援が必要だと語り、寛解後の定期的な検診、生活習慣病予防、リスク因子除去の重要性について訴えた=上の2枚。
シンポジウム「分子標的薬の副作用と支持療法」では司会をがん研有明病院総合腫瘍科の高橋俊二部長と順天堂大学大学院医学研究科臨床腫瘍学の加藤俊介教授が務めた=右の2枚。
演者の岡田浩一埼玉医科大学医学部腎臓内科教授は「マルチキナーゼ阻害薬による腎障害メカニズムとその対応」のなかで、マルチキナーゼ阻害薬による腎障害は血管内皮細胞増殖因子受容体阻害作用以外のメカニズムの関与が疑われ、発症頻度も低く軽症だとし、まずレニン・アンジオテンシン系阻害薬を用いた降圧療法を導入することが重要だと述べた。
また演題「小児がん経験者の長期フォローアップ―合併症スクリーニングにおける小児科と家庭医連携の課題―」で国立がん研究センターがん対策情報センターがんサバイバーシップ支援研究部の高橋都部長は、小児科と成人科の連携について「前向きな連携には、お互いの診療文化の理解が必要だ。医師同士、医師と患者、双方がその出会いを異文化コミュニケーションだと自覚することが真の連携につながる」と語った=左。