耳鼻咽喉科のトップランナーを育成

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愛媛大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授 羽藤 直人

1989 愛媛大学医学部医学科卒業 同附属病院研修医 1990 松山赤十字病院研修医 1991 同耳鼻咽喉科医師 1996 愛媛大学医学部大学院修了 愛媛大学医学部附属病院助手 1999 米国Stanford大学耳鼻咽喉科留学 2001 愛媛大学医学部附属病院講師 2008 同大学院医学系研究科頭頸部感覚器外科学准教授 2014 同耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授

若い人に達成感を与え、成長を促す。

4月から教授に就任されました。今後の抱負を教えてください。

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羽藤教授の後ろに飾ってある絵は教授就任のお祝いに同期入局者たちから贈られたもの。

 人事異動の結果、医局の新体制が出来つつあります。これから新しい医局づくりをしていこうと思っています。今後はこれまで医局で培ってきたものをさらに発展させ、飛躍させていこうと考えています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科の研究テーマと魅力について。

 私で3代目の教授ですが、歴代の教授は神経耳科学領域が専門でした。当科の難聴、中耳炎、顔面神経麻痺などの研究が内外で高く評価されているので、それらの研究を今後も発展させていきたいと考えています。

 難聴では鼓室形成術、人工内耳、人工中耳、補聴器など患者さんによって治療を使い分けます。そのために適切な診断、状況に応じた手術、治療を適用することが大切です。特に鼓室形成術では中耳炎や真珠腫の疾患に対し、年間約200例の手術を行なっていて、おそらく中四国では最も症例数が多いのではないかと思います。鼓室形成術は耳鼻科で最もポピュラーな手術で、全国どこの病院でも行なわれていますが、ほとんどの病院が中耳炎の炎症コントロール、真珠腫の摘出を目的としています。当大学では、患者さんの聴力を少しでも良くすることにこだわって、さまざまな工夫をこらしています。

医局の教育方針を教えてください

 スーパーバイザーを付けて、マンツーマン体制で丁寧な指導を行なっています。若い人にきついことばかりをさせるのは駄目で、やりがいや達成感を与えないとなかなか付いてきてくれないし、成長もしません。小さな事を少しずつでも達成していけるような気配り、目配りを一人一人に合わせてやっていかなければなりません。

 当教室におけるこれまでの学位取得率は、78.9%。スタンフォード大学やカロリンスカ研究所などへの海外留学経験率は40.4%と高いものです。今後も研究に根ざした臨床を展開し、愛媛の地で耳鼻咽喉科・頭頸部外科医のトップランナーを育成していきます。

医局の雰囲気は明るく活気がありますね。

 常に笑いが絶えない明るい教室だと思います。

 外科系は技術の伝承など、体育会系のノリが必要で、その上下関係、しきたり、モラルなどがあった上での自由さが大切です。そのような組織の雰囲気は、日本の耳鼻咽喉科医の育成には向いているのかもしれません。

耳鼻咽喉科を目指す人が増えるにはどうしたらいいですか。

 先日、中四国ブロックの部会がありましたが、今年耳鼻咽喉科医となった研修医は7人しかいませんでした。全国的に見ても10年前毎年は300人以上が選択していましたが、現在は約200人と激減しています。よく診療科偏在と言われますが、耳鼻咽喉科はその代表と言えるかもしれません。

 マスメディア対策などPRが不足して、耳鼻科の魅力が十分に学生に伝わっていません。需要と供給のバランスが崩れて、現場はかなり疲弊しており、今は何とかしのいでいる状況です。

 臨床研修制度が始まり、学生は現実を目の当たりにします。モラトリアム期間に先輩たちの姿を見て、待遇が同じであれば楽な科、リスクの低い科に目を向けがちです。そういう人は少数かもしれませんが、10年、20年この状況が続けば診療科偏在につながっていきます。

 幸いなことに愛媛大学の耳鼻咽喉科には毎年入局者があるので、まだ切迫感はありませんが、全体で盛り上げて耳鼻咽喉科の魅力を伝えていかなければなりません。

医師を志したきっかけは。

 私は小学校低学年くらいまで小児ぜんそくを患っていて、しょっちゅう小児科のお世話になっていました。とても良い先生だったので、尊敬していました。それで、漠然と医師へのあこがれをもっていたのかもしれません。

 医師になりたいと真剣に考え始めたのは高校時代です。自分は機械や物と接するより、人と接する仕事が向いていると感じたのが直接の動機です。医師は人が好きじゃないといけないと思っています。

 外科系の医師は、手術の腕だけあればいい訳ではありません。耳鼻咽喉科の疾患は感覚器の障害が出るので、QOLを損ないます。患者さんの訴えは、様々です。その訴えを聞き、丁寧に説明してあげることも重要な仕事です。

趣味・休日の過ごし方を教えてください。

 子供が小さいので、今は子供と過ごす時間が多いですね。時間をみつけてゴルフやセーリングをしています。

 医師はオンとオフの切り換えも大事です。仕事だけをするのではなく、休む時は休む、仕事をする時は仕事とメリハリを付けることが大事です。

 大学勤務の耳鼻科医は、2週間の長期休暇が取得できます。その間に旅行に行くもよし、ゆっくり体を休めるもよしで、ワークライフバランスをとってもらうことに配慮しています。大学病院は忙しく、人の出入りも多く、大変な面もあります。しかし国際学会への参加など、刺激も多く、医師として働く環境としては良いと思います。

おすすめの本は。

 ピーター・F・ドラッカーの「マネジメント」。医局も組織なので、人をマネジメントする上で役にたちます。

 「マネジメント」では真摯な姿勢の重要性を説いていて、組織の雰囲気、方向性を決める上でも重要なことが学べますよ。

愛媛の地から坂の上の雲を目指す

 以前インタビューした松山市の病院長から、愛媛県人の県民性について聞いたことがある。

 院長いわく「普段は明るく陽気で、おっとりしているが、いざという時は男らしく、行動力がある」そうで、「日露戦争で活躍した秋山好古・真之兄弟、明治を代表する文学者の正岡子規も愛媛県出身。歴史の転換期には、優秀な人材を輩出してきた」と話していた。

 スポーツ界ではサッカー日本代表で、インテルミラノ所属の長友佑都選手が愛媛県西条市出身だ。欧州リーグに所属する日本人選手は数多くいるが、インテルのようなビッグクラブでレギュラーを張り続けている選手はいない。昨シーズンはキャプテンマークを巻く試合もあり、チームの精神的支柱になっている。目標に掲げた世界一のサイドバックになるため、全力で走り続けている。

 羽藤教授は愛媛県今治市出身。インタビュー中、終始笑顔で、温和な印象を受けたが、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医育成への熱い思いがこちらにも伝わってきて、内に秘めたエネルギーを感じた。

 これからも愛媛の地から、「坂の上の雲」を目指す若者をたくさん輩出してくれることだろう。(新貝)


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