外に出るのも貴重な経験です

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宮崎大学 外科学講座泌尿器科学分野 教授 賀本 敏行

■1987 京都大学卒 京都大学医学部附属病院泌尿器科入局 1988 滋賀県立成人病センター泌尿器科 
1995 京都大学大学院医学研究科病態生物医学(第一病理学教室)助手 1997 同大学附属病院泌尿器科助手 
2001 同大学大学院医学研究科泌尿器科学講師 2003 同助教授 2009 宮崎大学外科学講座泌尿器科学分野教授 
2011 宮崎大学附属病院病院機能担当副病院長(2013 まで)
■日本泌尿器科学会代議員 日本泌尿器内視鏡学会評議員 日本癌治療学会代議員 日本泌尿器病理研究会代表幹事

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高校・大学時代はラグビー部。まったく興味がなかったが宮崎に来てからゴルフを始めた。今年4月から医学部のゴルフ部顧問。野球では阪神タイガースを応援している。

 大阪の出身で、数回友人を訪ねて宮崎に来たことはありましたが、教授選の時に初めて宮崎大学に来ました。中学1年生の9月に鹿児島市の鹿児島ラ・サールに編入して高校卒業まで過ごしました。当時は大阪―鹿児島は夜行列車で移動していましたので宮崎と鹿児島はかなり近いと思っていましたが、今の時代ではそんなに近くありませんでしたね。

 しかし南九州というグループでは熊本よりも鹿児島との関係のほうが近いように感じています。宮崎では同級生や先輩後輩と会うことも多いですが、私が着任させていただいた時、教室にはラ・サール出身の先生はおられませんでした。

 私は3代目の教授です。来た時に泌尿器科の同門会は活発ではありませんでしたが、再始動をお願いし、今はずいぶんと応援していただいてます。また、宮崎県泌尿器科医会にも全面的にご協力いただいており、本当に有り難いと思っています。今後は同門会に入会してくれる人をもっと増やし、若い人を育てていきたいと思います。

 宮崎は若い医師の少ない県です。現代の泌尿器科も内科や外科との協力体制はもちろん重要ですから、他科であっても若い医師が宮崎に残って育つことを私は心から歓迎しています。もちろん泌尿器科にたくさんの人が来てほしいですが、他科が人手不足なら良い治療はできませんし、地域の医療のためにもなりません。とにかく宮崎に若い医師が増えて欲しいという気持ちが先にあります。外から来た私の方が宮崎の良い部分が分かると思っています。私自身、本当に宮崎が好きですし、できる限り医師確保に貢献をしたいですね。

 教授になってからは、教室の多くの人に手術を経験してもらうようにしました。1人が特別に経験を積むことよりも、そのほうが全体の士気が上がります。私は京都大学の大きな医局で学び、そこで100人以上の研修医を見ています。優秀な多くの人が切磋琢磨しているわけですが、均等な機会が与えられない悩みもありました。ここは小さな医局ですから、比較的均等にチャンスを与えることができますし、一人一人を細やかに指導できます。人員不足は悩ましいですが、利点もあるように思います。

 医局員には、若いうちに宮崎を出て経験を積んでほしいと考えています。人手は足りませんが、勉強に出すことに消極的になる考えはまったくありません。今は原三信病院(福岡市博多区)にお願いしてローテーションしてもらっていますし、腎臓移植を定着させるために、東京女子医大の泌尿器科に昨年1人、来年は名古屋第二赤十字病院の移植外科に移植の勉強に行ってもらう予定です。

 私自身は留学の経験をしませんでしたが、病理学教室で助手をさせていただいて、得たことが数多くありました。違う環境を知っていることで医師としての成長を促すことは多いと思います。

 私はこれまでの経歴から小児泌尿器科にほとんど関わって来なかったので、小児泌尿器科の細かい技術を教えることができません。しかしもともと宮崎大学泌尿器科学教室自体はこの分野が得意で、秀でた同門の先生がおられます。これまでも福岡市立こども病院・感染症センターなど症例数の多い同門の先生の勤め先にお願いしてスペシャリストを育成してもらっており、これからもお願いするつもりです。親御さんの負担を考えれば、小児に関する医療は地元で受けるべきですから、この伝統は大切にしたいと思います。

 来年は札幌医科大学との人事交流が決まっており、互いに1人ずつ受け入れる予定です。京都大学時代に、人事交流で来ていた札幌医大の先生と親しくなった縁で実現しました。医師には人脈も大事ですから、宮崎を出ることはその観点からも意味がありますね。札幌で磨かれて帰ってくるのが楽しみですし、札幌から来る先生が我々に刺激を与えてくれるのも楽しみです。人が来ると互いの医局が活性化しますし、このような縁は今後も大事にしたいと思います。

 宮崎は患者さんの取り合いがなく、病院間連携、病診連携の取りやすい土地だと思います。医師が少ないこともありますが、競争する必要が少なく、無理に新しいことをして注目される必要はありません。特徴的なことをやっている病院は多いですが、それは純粋な役割分担としての医療行為のためで、広告的な意味はないと思います。競争が悪いことだとは言いませんが、競争のための医療ではよくないと考えています。

 宮崎の泌尿器科は、大学一か所に患者さんを集中させるよりも、地域で役割分担して診てもらうのが一番いいと思います。

特別に難しい症例は大学病院の出番だと思いますが、県病院など各医療圏の中核病院でそれぞれの先生が標準的な医療を提供できる状態が、交通網の発達していない宮崎には合っています。

 ここに来て最初に取り組んだのが地域医療ネットワークです。宮崎県泌尿器科医会の先生に全面的に協力を依頼し、大学病院に来た患者さんのフォローをお願いしています。基本的には大学病院には年に1度来ていただき、それ以外はお住まいの地域で診てもらうわけです。現在これが少しずつ機能し始めており、本当にありがたいです。大学病院で毎回診る必要のない方は、開業医の先生に診てもらう。役割分担ができていれば、遠くから来て何時間も待たされ、数分で終わるようなことはありません。県民にとって良い形ができつつあるのではと、医会の先生がたには本当に感謝しています。

 今の宮崎大学の先生たちにはこの5年間、積極的に腹腔鏡手術に参加してもらいましたが、皆飲み込みも早く、上手で安心して任せられます。若い先生も覚えるのが早いですね。私が来た時は医局に腹腔鏡の技術認定を持っている人は少なかったのですが、今は主だった先生のほとんどに取得していただけるところまできました。何年も携わっている私から見ても上手なので、頼もしく思っています。今の医療機器は良いものが出ていて、宮崎大学では3次元画像の腹腔鏡をいち早く導入してもらいました。これは全外科系で使用できますし、我々の分野でも多くの手術に使えます。今までの2次元画像では経験を頼りに判別していたことが、簡単に分かるようになりました。拡大視野で奥行きが分かり使いやすく、技術の進歩に驚かされますね。少ない手術に特化した高額な機器ではないのでパフォーマンスは良く、1例あたりのコストも下がります。

 開腹をしなければならない手術も、計画的に腹腔鏡を併用して手術をするので、本来よりも小さな切開ですみます。保険点数上は低い開腹手術で付けることになりますので少し病院負担はありますが、患者さんにとっては負担の少ないやり方です。計画的な併用であれば、私は推奨しています。

 宮崎大学病院に腎移植を根付かせようと考えています。こちらに来てからまだ1例だけなのですが、体制は整いつつあると思っています。臓器移植は手術自体よりも、移植してからが本番です。だから遠くで受けるのは、その後のフォローアップが大変だと思います。本来移植医療も住んでいる場所の近くで受けることが理想だと思いますから、努力したいですね。

 まだまだやるべきことが多く大変ですが、今の仕事にやり甲斐を感じています。

 宮崎は車がなければ不便なところで、市内でも1車線のところが多くあり、譲りあいが必要です。関西ならクラクションを鳴らされるような場合でも、気持ちよく譲ってくれることも、この土地柄を好きな理由です。


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