好奇心を忘れないことが大事です

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宮崎大学医学部 臨床神経科学講座 精神医学分野 教授  石田 康

1985 大分医科大学卒業 宮崎医科大学附属病院医員 1988 名古屋市立大学医学部生理学教室研究員 1989宮崎医科大学助手 1991 英国ケンブリッジ大学実験心理学部門研究員 1993 宮崎医科大学附属病院講師 1998 宮崎医科大学助教授 2002 宮崎医科大学(現 宮崎大学医学部)教授 2011 宮崎大学安全衛生保健センター長併任、現在に至る。■研究分野は、行動生理学、行動薬理学(パーキンソン病、薬物依存症、ストレス関連疾患、慢性疼痛などのモデル動物を用いた基礎研究)■臨床における専門分野は高齢者の精神障害。

 宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野は昭和52年に初代池田暉親教授のもと発足。二代目三山 夫教授を経て平成14年に三代目の教授として石田康教授が就任した。

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趣味は音楽鑑賞でジャズやボサノヴァ、ロックが好み。自宅にCDが収まりきらなくなり、教授室にもCDを置いている。

―医局の特徴は。

 前教授の三山txt.gif夫先生が認知症性疾患のエキスパートだったので、当大学の高齢者の精神疾患診療は高いレベルにあると自負しています。

 超高齢者社会を迎え患者さんのニーズに合わせた診療ができるのも強みです。うつ病、統合失調症などの疾患に関してもしっかりとした診療体制が整っています。

 当大学は4年前の市町村合併で住所が宮崎郡から宮崎市になりましたが、郊外に位置しているので、高齢の患者さんの割合が他の大学病院に比べると多いかもしれません。

 都心部にある大学病院よりも後方支援病院の数が少なく、連携がいまひとつなので、今後はネットワークの構築に力を入れていかなければなりません。

 統合失調症でがんの治療をする人、認知症で白内障の手術をする人などの入院、退院後の外来対応が昔に比べ増えてきています。身体合併症への対応が、精神科医療の今後の柱の一つとなります。宮崎市近郊に身体合併症の対応ができる総合病院は3つしかなく、医師は大変な苦労をしていますが、社会的には貢献できていると思っています。

 特徴の一つに修正型電気けいれん療法を行なっていることが挙げられ、宮崎でこの治療ができるのは宮崎大学と古賀総合病院の精神科を含む少数の施設に限られます。

 重症のうつ病や統合失調症の患者さんに用いる治療ですが、安全性も高く安心して治療を受けられます。

 当大学は医師数も多くワークライフバランスがとれ、働きやすい環境です。

 子供の発達障害を診療できる医師も関連病院に在籍しているので、希望すれば赴任可能です。子供から高齢者まで幅広く診療できるのも魅力です。

 厚生労働省が発行しているライセンスのひとつに精神保健指定医があります。当大学では比較的短期間で効率よく取得できる体制を整え、日本精神神経学会その他の専門医も希望をすれば取得可能です。

―研究分野の「行動神経薬理学」について。

 実験心理学のスタッフとチームを組み、動物に中枢神経系に作用する薬を投与することで行動がどう変化するかを研究しています。

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宮崎大学医学部は今年で40 周年の節目にあたる。病棟の改築もあり、活気にあふれている。

 たとえば様々な疾患のモデル動物を対象に脳の神経伝達物質の測定や機能解析などを行なうのが主な研究内容です。

 パーキンソン病、統合失調症、慢性疼痛その他の研究をしていて、臨床に少しでもフィードバックしていかなければなりません。

 患者さんを診療しつつも研究を続けることが大事です。教授に就任してからは研究に割ける時間は少なくなりましたが、今後も若い人たちと一緒に研究を続けていきたいと思っています。

―精神科医に求められる資質はありますか。

 精神科を受診する人が20年前と比較して急増していますから、今後ますます存在価値は高くなってくるでしょう。

 精神科医の数も全国的には増えていますが、まだまだ地方都市には不足しています。

 精神科の診療場面にはさまざまな問題が持ち込まれ、例えば嫁と姑間の確執など、一見医療と関係のない問題にも耳を傾けなければなりません。「これは教科書に書いていないから分かりません」では務まりませんから、精神科医は医療に直接は関係のない、世の中の森羅万象に好奇心を持つべきです。世の中の動きに無関心な人はあまり向いていないかもしれませんね。

 サイエンスだけでは割り切れない分野に対応する科なので、絶えずアンテナを張り、好奇心を忘れないことが重要です。

 医局のメンバーは、必ずしも同一の価値観を持つ必要はありません。もちろん精神科医としての基本的な倫理観や診療技術等の統一は必要ですが、多様な価値観の人々が組織に属している方が健全な状態だと思います。

 診療スタンスについてもセオリー通りではなく、それぞれの患者さんに最適の診療を行なう必要があるので、若いお医者さん同様、人生経験の豊富な医師も重宝されると思います。

 これからは、いかなる医療現場であっても、最先端テクノロジーを駆使した医療、ノーベル賞を取るような医療だけでなく、心に寄り添う医療、ほっとできる医療が求められる時代になります。

【記者の目=ヒポクラテスの胸像と外来の自動演奏ピアノ】

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 宮崎大学病院の外来入口付近に設置された自動演奏ピアノから、ショパンのプレリュードが流れていた。

 ピアノは病棟の改築を記念して寄贈されたもので、CDでの自動演奏のほか院内コンサートを開催することもあるようだ。

 また、医学部のキャンパスにヒポクラテスの胸像がある。ヒポクラテスは紀元前5世紀にエーゲ海のコス島に生まれたギリシャの医師で、それまでの呪術的医療とは異なり、科学に基づく医学の基礎を作ったことで「医学の祖」と称されている。彼の弟子たちが編纂した「ヒポクラテス全集」には、当時の最高峰であるギリシャ医学の姿が書き残されている。

 その中で、医師の職業倫理について書かれた宣誓文が「ヒポクラテスの誓い」であり、世界中の西洋医学教育において現代に至るまで語り継がれている。

 宮崎大学医学部と附属病院は、命を預かる立場にある者として「医の倫理」を根幹に据え、「教育」「診療」「研究」の3つの場面において、常に「ヒポクラテスの誓い」の時代から連綿と受け継がれる伝統的な「医の倫理」の精神と、「ヘルシンキ宣言」をはじめとする現代の新しい「生命・医療倫理」に関する基本原則を守り続けているという。


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