一歩踏み出す勇気を

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長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学領域  教授 高橋 晴雄

1971 灘高等学校卒業 京都大学医学部医学科医学進学課程入学  1973 同修了 同医学部医学科専門課程進学 1977 同卒業 同医学部附属病院(研修医) 1978 田附興風会医学研究所北野病院(耳鼻咽喉科委員) 1984 京都大学医学部附属病院(耳鼻咽喉科助手) 1987 アメリカ合衆国ピッツバーグ大学医学部(耳鼻咽喉科学教室側頭骨病理学部門研究医員) 1990 同耳鼻咽喉科研究助教授就任 1992 京都大学医学部附属病院(耳鼻咽喉科助手) 同耳鼻咽喉科講師 2002 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 耳鼻咽喉・頭頸部外科学領域(教授)

明治37 年創設の長崎大学耳鼻咽喉科は日本で五指に入る歴史がある。高橋教授は10 代目。歴代の教授もほぼ全員といっていいくらい、高橋教授と同じ聴覚系の研究者だという。

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長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 耳鼻咽喉・頭頸部外科学領域  教授 高橋 晴雄

 長崎大学は県の医療拠点なので、耳鼻咽喉科の診療分野全般を診ています。その中でも私の専門が耳科学、聴覚学、人工内耳なので、耳疾患の治療、特に難聴には力を入れています。

 難聴の治療法は、補聴器、人工内耳、人工中耳があり、難聴の種類に応じて使い分けています。ただ、全国を見渡してもすべての治療法ができる大学病院はあまりありません。当大学では耳鼻咽喉科のほぼすべての分野で、最先端の診療ができる体制をとっています。

 難聴には伝音難聴と感音難聴があります。

 伝音難聴は外耳と中耳の音の伝わりが悪くなるので、伝音難聴と言い、外耳道に耳あかが詰まって耳栓をされた状態、生まれつき外耳道がない人、中耳炎で膿が溜った状態などがこれに当たります。

 中耳内に存在する耳小骨は、外部から音として鼓膜に伝わった振動を増幅して内耳に伝える働きをしますが、3つの骨が連結せず欠損したり、中耳炎で溶けて耳小骨がなくなってしまう場合も伝音難聴です。

 しかし神経が生きていれば鼓室形成術でかなり聞こえるようになり、予後も良好です。

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最近観た映画は特攻隊員を描いた百田尚樹原作の「永遠の0」。知覧の特攻平和会館にも行き、隊員の遺書を見て10代、20代の若者たちの生きざまに感動したそうだ。

 感音難聴は内耳が悪くなると発症します。内耳には神経や感覚細胞がありマイクロフォンの役割を果たしています。振動という物理的エネルギーを電気的エネルギーに変換して脳に伝えています。

 感音難聴は非常に治りにくく、感覚細胞がすべて失われるとまったく音が聞こえなくなります。深刻さの度合いは伝音難聴よりもはるかに高く、人工内耳などの処置が必要になります。

 中耳炎で鼓室形成術をいくら行なっても治らないケースがあります。その場合は人工中耳が必要です。埋め込み補聴器と呼べるもので、鼓膜が無くても音を増幅して内耳に伝えられます。

 一般の補聴器は伝音難聴には効果を発揮し、ある程度の感音難聴にも対応できます。しかし重度の場合、補聴器の音をどんなに大きくしても聞こえません。

 難聴の種類によって、この治療でなければ良好な聴力を得られないという分類が世界的にはあります。しかし日本国内では、分類が充分ではないのが現状です。

 当大学では補聴器、鼓室形成術を始めとする耳の手術、人工中耳、人工内耳の4つの中から最適なものを選択して患者さんに適用しています。

 今後取り組む分野に、聴性脳幹インプラントがあります。これは内耳から電気的信号を伝える神経に腫瘍ができるなどして機能が失われた場合、聴神経よりもさらに中枢にある脳幹を直接、電気で刺激して聴覚を取り戻す方法です。

 将来的に聴性脳幹インプラントができるようになれば、耳の入口から脳幹までをカバーする医療が提供できるようになります。

 当大学の耳鼻咽喉科は現在までに難聴診療で国内トップレベルの実績を上げています。これをさらに専門的で有機的機能を持つチーム医療へと推進するために2008年に聴覚・平衡センターを立ち上げました。私がセンター長を務め、ほぼすべての難聴に対応できる総合的な診療体制を整え、より良質な医療サービスの提供と同時に、次世代に向けて意欲的に難聴診療のスペシャリストの育成を目指しています。

 私は耳鼻科の家系で、3代目です。医学部の卒業が近づいて何科に行くか迷いました。当時、外科で心臓のバイパス手術が脚光を浴びており、あこがれを持ちました。

 実家が耳鼻科なので、継いだ方がいいのか、心臓外科に進むかで葛藤がありました。でも耳鼻咽喉科は人間の五感のうちの、聴覚、嗅覚、味覚の3つを扱う科です。そこに魅力を感じ耳鼻咽喉科に進むことに決めました。

 嗅覚や味覚は一度失ってしまうと取り戻すのがむつかしいのが現状です。生死を救う医療はもちろん大事ですが、聴覚、嗅覚、味覚はQOL向上に大きく関わってくる分野ですから、重要性が今後増してくると考えられ、非常に将来性のある科だと思います。

 耳鼻咽喉科のもう一つの魅力に、脳と眼球を除く首から上のすべてを診られることが挙げられます。手術に限らず、たとえば目まいは神経内科と連携しています。手術後の全身管理もしていて、いわば首から上の内科、外科で、とてもやりがいを感じています。

 若い医師はミスを恐れて委縮しているように見えます。リスクを怖がって、手術でもあと一歩というところで手を止めてしまいます。こういう状況では名医が生まれにくいのではないかと危惧をしています。

 毎年、解剖学教室の協力のもとで遺体を使った手術解剖のトレーニングをしています。昔はそんなことはしておらず、今は手間暇かけて教育を行なっているわけです。同様の取り組みをする大学も近年増加傾向にあります。

 教育は充実していますが、若い医師は気持ちの面で萎縮しているので、あと一歩を踏み出す勇気を持ってほしいと思っています。

医学部150 年の歴史残す良順会館

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 長崎大学医学部150周年記念事業の一環で、中・小規模のシンポジウムや会議ができる良順会館を建設。館内を入ったところにあるミュージアムに医学部所蔵の歴史的資料を展示し、一般市民にも開放している。


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