医療法人仁徳会 今村病院 理事長 今村 治郎
グループホーム建設を推進する法律ができた時、国はそのあと制限してくるに決まっていると私は予測して、一度にグループホームを5つ作ったんです。その結果、案の定その通りになり、市町村長が必要性を認めて認可しなければ建てられないようになりました。
一度に5か所作ったものですから、すぐに人が入るわけはないですよね。でも世の中の動向を見ていると、いずれいっぱいになると分かっていました。今は満床か90%以上の入居率で、あまり苦労話はありません。
最初のころはケアプランなどにもみんな素人で、県も監査する人も素人でしたが、今は充実し、その人に合ったケアをシスティマチックにきちんとやれるようになりました。今はまったく問題がなく、もう一か所か二か所作りたいくらいですが許可が下りないんですよ。
ドクターでない人はグループホームの経営などはするものではないと思いますね。グループホームの利益なんてわずかなもので、私が特養や老健施設を作ったのは、病院と互いに支え合う関係になると思ったからです。
医療が背後にないのに作っても介護料だけでは運営がむつかしく、病院にしても、高齢の患者さんを帰す場所がなければ今は大変です。その点でここは何の心配もせずに済みます。
当院では慢性疾患か看取りの必要な患者さんだけを引き受けています。私は元々外科医で、救急医療などもやってきたのですが、これからは余命の短い人や老人ホームで暮らす年代の人を中心に扱う老人病院でいいと思い、特化したんです。
だからうちの職員には、「3Kの仕事だと思っているかもしれないが、そうではない。人生の最期に誰かが看てくれなかったら世の中は大変なことになる。だから自分たちは貴重な仕事をしているのだと、自信とプライドを持ってやりなさい」といつも言っているんです。
たいしたことをやっているわけではないんですが、私たちが最後に控えているということは大切なことなんです。
医療に関する法律の変更や診療報酬改定などについては、やり方や工夫でいろんな案が生まれます。当院には訪問看護ステーションがあり、運営は入所施設をいくつも持っているものですから、やりやすいです。入所者にすれば24時間看ていてくれるから安心ですよ。
高齢社会の医療の見通しについては、いろいろあるにしても今までの延長になってしまうと思います。確実に言えることは、施設に預けるよりほかにない時代が来るだろうと思います。テレビでも、家で看取るとしきりに言いますが、そんな簡単なことではない。不可能だと思います。でも預けるにはお金が必要なんですよね。家族の負担が大変かも知れません。
介護の期間が短い人は家でいいと思いますが、長くなれば施設のほうが、家族も安心・安全です。
でも預かる施設が増えても、内容の充実したところはいいでしょうが、悪いところは困りますね。
そしてきちんと運営するからには、一か所や二か所の経営では絶対にダメだと思います。それくらいの規模では教育もシステムも難しいでしょう。
もともとうちの家業は、中原というところで製材所を営んでいたんですよ。進学したのは久留米大学附設高校で、そこに行ったら医者の子供でいっぱいだったんですよ。手相を見てもらっても芸術家か医者がいいと言われ、ああ、そうかなと思って。
それで九大医学部に進んで、池見酉次郎先生の心療内科の講義を聞いていたら、これは面白いなと思ったんです。でも治すのに時間がかかるんですよね。これが外科ならもっと早く治せる。だったらこっちがいいと。
実はそれまでに九大の農学部を卒業していたんですよ。だから学年の年齢が4つくらい上です。それで、大学に残るよりも開業しようと、大学にいる時に決めていました。
実はそれまでに九大の農学部を卒業していたんですよ。だから学年の年齢が4つくらい上です。それで、大学に残るよりも開業しようと、大学にいる時に決めていました。
医療と経営の決定的に違う点は、医療は地域性が強いんですよ。経営なら世界を相手にできますが、医療のクライアントは鳥栖の市内や周辺にしかおらず、効率は悪いし規模も小さい。私は鳥栖周辺で生きる宿命の人間だなと思ったんですよ。ところがやってみますと、みんなにも言うんですが、人に感謝されることほどうれしいことはない。その点では満足しています。
趣味は多いですよ。外でやるスポーツなら大抵何でもやります。晴耕雨読で、晴れた日に家にいたことはなかったです。ゴルフはハンデ4までいきました。でも釣りだけはしなかったですね。あとは学生のころに身につけた催眠術。
若い人には、中村天風さんを読むことを薦めます。いま読んでいるのは月刊「致知」、新渡戸稲造の「武士道」も読んでおいたらいいと思います。