社会医療法人社団高野会 高野病院 理事長・院長 山田 一隆
日本唯一の大腸肛門病センターとして昭和57年に誕生。創立時は70床だったが、現在は166床。今年4月には社会医療法人化し、2016年にはリニューアル移転を予定しているという。
―病院の特長は。
大腸・肛門領域を中心に消化器疾患を専門に診て創立32年を迎えました。現在では大腸・肛門病領域には13名の専門医、6名の指導医がおり、消化器外科領域には13名の専門医、3名の指導医が在籍し、消化器内視鏡領域には9名の専門医、3名の指導医がいます。また日本外科学会、日本消化器外科学会、日本大腸肛門病学会、日本消化器内視鏡学会の専門医修練施設に認定されています。
消化器外科では消化器がんの治療を中心に、予防、診断、治療、緩和ケアに取り組んでいます。2011年には熊本県のがん診療連携拠点病院に指定されました。
良性疾患も含め、日本では消化管疾患の中で、胃の疾患が多かったのですが、現在では特に大腸領域の疾患が増加しています。特定疾患(難病指定)の潰瘍性大腸炎、クローン病は欧米で多く、日本でも食生活の欧米化に伴い急激に増加しています。当院では専用外来を設け、最新の治療法でケアを行ない患者さんのQOLの向上に貢献しています。病気を総合的にとらえると共に、より専門的な治療を行なえる病院であることを目指しています。
2016年4月に熊本市中央区大江のJT熊本工場跡地に移転し、診療開始予定です。鉄骨7階建てで、免震構造、玄関前に広場を配置し、屋上を緑化します。熊本県の「くまもとアートポリス」事業に参加しており、より公共性の高い施設となります。内視鏡センターを設立して、大腸の内視鏡診断・治療は1万例以上になる見込みです。またIBD(炎症性腸疾患)センターを設立し、潰瘍性大腸炎やクローン病などの難治性疾患で苦しむ患者さんの専門治療にあたります。また、がん診療センターの設立も予定しており、熊本県指定がん診療連携拠点病院としての役割も果たして行きたいと考えております。
大腸の遺伝性疾患の治療にも積極的に取り組んでいます。一番多いのが家族性大腸ポリーポーシスです。家族歴や既往歴をきちんと把握し、エビデンスに基づいて発生リスクや予後、QOLなどを考慮して治療します。
医師の専門性をさらに高めるべく全国レベルでの学会発表を行ない、レベルアップを図っています。看護師も認定看護師資格取得の希望があれば、全面的にバックアップしています。薬剤師、リハビリなどコメディカル、事務職も含めて全職員が一体となり、常に研鑽を積み、患者さんへのサービス向上と地域貢献の努力をしています。
―開院当初から大腸がん検診を行なっているそうですね。
がん予防につながるのは検診です。欧米の大腸がん検診率は70〜80%ですが、日本では30%弱にとどまっています。当院はがん診療は予防から始めなくてはいけないと考え、開設以来180万人、年間約12万人の検診を行なっています。法人内に福岡・熊本の病院があり、宮崎にも検診事務所がありますので、各市町村と連携して大腸がん検診の普及に努めています。
―女性専門外来について。
肛門科は女性にとっては、羞恥心からハードルの高い診療科でした。当院では1階を専用フロアに改装し、女性専用外来日を設けています。一般外来とは別の女性専用受付、予診室、診察室、内視鏡検査室を用意し、キッズコーナーもあります。インテリアは優しく落ち着いた色調で統一し、絵画を飾るなどリラックスできる空間作りをしています。医師、スタッフもすべて女性で、安心して来院できます。
―電子カルテシステムを導入しています。
2004年から電子カルテシステムを導入し、部門ごとに管理していたカルテの一覧性が向上し、検査、診断、治療の効率化が進み、記録へのテンプレート導入による省力化、医師の指示やスタッフの間の申し送りの明確化によるミスの軽減など質の高い医療が行なえるようになりました。また疾患ごとのデータの蓄積と院内管理精度が向上しました。
―若い医療者にメッセージを。
医療はとてもやりがいがあります。人間の苦痛の中で一番大きなものの1つが病気です。患者さんと共に闘えるのは、1人の人間として、貴重で大変ありがたいことだと思います。
自分に自信を持って感謝の気持ちを忘れないことが大事です。つらいこと、苦しいことはたくさんあると思います。しかし、それはすべて患者さんのため、人の役に立てる仕事だということを考えると、私たちはありがたい仕事に就くことができていると思います。モチベーションを高く、努力を怠らず、今後も患者さんのために尽くしたいと考えています。