公益財団法人健和会 戸畑けんわ病院 院長 二見哲夫
「笑顔が一番うれしい」
1953年に北九州を襲った大水害の救援金をもとに、翌年緑町診療所が開設しました。以来、そこを中心に医療を展開し、1972年に新中原病院(現戸畑けんわ病院)が開院しました。
法人内のセンター病院の機能を果たしていましたが、北九州市小倉北区の大手町病院開院を機に、八幡東区、戸畑、若松区の洞海3区を中心に、生活習慣病、リハビリテーション、高齢者医療などを診る病院として活動しています。
歴史的に北九州の市民の医療需要で一番多い救急医療を中心に、市民と共に医療を発展させてきた自負があります。現在は法人内外の医療機関と連携して、慢性期に移行した方の、社会復帰に至るまでの医療・介護・福祉を担う病院です。
高齢者の増加に伴い、病気は治ったが食事が摂れない、歩けない人が増えています。退院しても、老々介護の問題や日中は独居というケースもあります。特別養護老人ホームはなかなか空きがない状況で、有料老人ホームは経済的に負担になります。当院は差額料金を取らず、経済的理由で必要な医療が受けられない方には無料・定額診療などの制度を適用しています。低所得者の患者さんもいらっしゃるので、在宅に戻す時もケースワーカーと相談し、細心の注意を払っています。
八幡や戸畑は坂道が多く、高齢者は退院して在宅に戻ると買い物に出かけられない、病院に通院できない例が多々あります。今年4月からの医療改定で在宅に戻した人に対して、1月後に安否確認をするようになりました。近隣であればいいのですが、県外に帰す人もいるので、職員にも大変負担がかかり、頭が痛い問題です。
健康保険の自己負担が、70歳以上で2割と、生活に余裕がない人には病院にかかりにくい状況です。
地域の疾病予防に力を入れ、北九州健康友の会若松・戸畑支部と協力して、街かど健康チェックや毎年6月の戸畑菖蒲まつりに出席し、血圧測定、血管年齢測定、骨密度測定など行なっています。今後も、病院にかかれずに病状が悪化している人を手助けしていきたいと考えています。
検診がなかなか病院での受診につながらないので、健康マイレージという受診をするとポイントが貯まるサービスをしています。若松・戸畑健康友の会に入っていただければ、班会活動やバスハイクなどを企画して参加していただけます。
戸畑区の医師会はまとまっていて、病病連携・病診連携がスムーズです。一つの病院で完結するのではなく、それぞれの得意分野を活かしています。
職員には患者さんの病気だけを診るのではなく、家庭背景、地域での立ち位置、職場での働き方など、家庭、社会背景、地域を含めて考え、地域活動にも積極的に取り組んでほしいと言っています。
急性期を過ぎた方、在宅で困っている人を受けとめ、本人、ご家族を支えるためにこれからも頑張っていきたいと思っています。
―休日の過ごし方は。
頭の中が完全にオフになることは少ないですね。休んでいても病院が気になって出勤します。完全にオフになると、オンにするのに苦労します。少しでも病院に来て患者さんの状態を診ると残りの時間を楽に過ごせます。
体を動かすことが好きで、学生時代はサッカー部に所属していました。今でも好きなので、機会があればスペインのカンプノウスタジアムでFCバルセロナの試合を観たいですね。イングランドのプレミアリーグやイタリアのセリエAにも興味があります。
健和会として急性期から慢性期まで一貫した流れの中で、地域の医療を支える手助けができればと考えています。北九州の中で認められる病院づくり、医師づくりをしていくのが医療人としての使命だと思います。
救急医療に30年近く携わってきました。365日いつ呼び出しがあるか分からず、夜間の緊急手術も何回もやって、翌日もそのまま働いていました。今思うと体力がよく続いたなと思います。でも医療安全の観点からはあまり薦められません。
外科医をしていた時は、無事手術が終了した後は、なんとも言えぬ高揚感を味わえましたが、今は残念ながら、それは望めなくなりました。
でも現在は、受け持ちの患者さんが退院するときに笑顔で、「お世話になりました」と声をかけてくれることが、一番のやりがいになっています。これからも地域の方々の信頼に応えていくよう、日々精進していくつもりです。