医療法人美﨑会 国分中央病院 理事長・院長 藤﨑剛斎
国分中央病院は、昭和52 年5月に開設し、『霧島市民に必要とされる病院創り』を経営理念に掲げ、地域に根ざした医療の充実を目指してきた。慢性期病院で、現在は入院患者の大半が高齢者だという国分中央病院の取り組みと今後についてうかがった。
当院では救急車の受け入れもしており、高齢者の慢性期疾患からの急性憎悪、クリニックからの緊急の入院依頼はなるべく受け入れる体制をとっています。クリニックからの依頼は断ったことがないはずです。患者さんの検査依頼が急性期病院からあった場合もスピーディに受け入れ、在宅と急性期病院を後方から支援する形をとっています。
今後、高齢者が増えれば患者さんの数も増えてきますので、ベッドをより有効的に使うためには、慢性期病院としての機能をもっと高めていかなければならないと思っています。療養型だからここまででいいやという先生もいらっしゃいますが、当院は、それではいけないと思っています。認知症を診て、リハビリテーションをやって終わりというのでは駄目だし、人工呼吸器を1台も置いていないなどはもってのほかです。
今以上に重症の患者さんを短期間で診られるようにしていきたいですね。多分、昔のように平均在院日数が何百日とかいうことは、今後許されなくなってくると考えていますので、周辺環境の変化に対応していけるような機能を病院全体で身に付けることが必要です。
【病院敷地内にサ高住】 「安心して最期まで生活できる場所を提供できれば」との思いで、24 時間365 日、専門スタッフによる医療、介護サービスが利用できる、サービス付高齢者向け住宅「メディカーサ国分中央」を敷地内に開設した。将来はここで地域住民にも、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供できる地域包括システムの構築を考えているという。
療養型病院なので、絶えず清潔を心がけています。例えば病室でいえば、ベッドや床頭台など古くなったものは新しい物に変えています。それより接遇面の方が大事ではないかと考えています。本来は全部個室が一番いいのでしょうが、なかなかそう簡単にはいかないですね。
―スタッフは地元出身者が多いですか。
何人か鹿児島市内から通っていますが、ほとんどが近隣ですね。フィリピンからも看護師候補を2人受け入れていて、初めての取り組みで試行錯誤の段階ですが、まずは試験に通ってもらい、その時点で次にどうするかを決めていこうと思います。
―地域との連携について。
介護型の登録をしているクリニックが現在31か所にあり、日常的に入院が必要な場合、当院のスタッフが相談に乗って関係性を構築しています。
終末期の入院や介護保険のサービスなども含めて相談されることがあります。連携室では情報の共有が出来るので、ソーシャルワーカーも交えて現場の情報を交換したり、ケースの相談に乗ったりしています。
要支援の方は地域包括支援センターが診ているので、そことのやり取りも頻繁にしています。車を2台準備していて機動力のある体制づくりを整えているところです。
―医師になったばかりのころと現在で心境の変化はありますか。
昔は患者さんの苦痛を考えずに、今できる最良の治療を行なっていましたが、最近は少し変わってきて、家族の方に説明する時、例えば「これから呼吸器を使わないといけない状況になりますが、私はこの状況で呼吸器を使っても元の状態に戻れる可能性は少ないと思う」と説明しています。呼吸器を付けることで患者さんの苦痛が増えることもあり、身体がむくんできたりして人間としての最期を迎えるのは、見た目もよくないと思います。最近はそのあたりの考えが変化してきました。
―これから医師を目指す人へのアドバイスは。
医療だけでなく、介護、年金等の問題があり、社会保障全体がこれからどうなっていくか分からない状況です。これから医者になる人たちは、相当頑張らないといけないと思います。生き残りをかけて真剣に考えていかないと駄目です。しかしそれだけにやりがいもあると思いますね。それと高齢者が増えると、どうしても認知症の問題などは避けて通れなくなりますので、これからは総合医としての資質が求められてくると思っています。