居場所と仕事の提供も仕事

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一般財団法人弘潤会  野崎病院  院長 大塚和之

1942 北京市生まれ。宮崎県西都市三財小・中卒業、同県立妻高等学校を卒業し1962 東京大学理科一類入学。東京で翻訳業の後、1989 宮崎医科大学入学。1997 志布志市芳春苑勤務、2001 同院長、2007 鹿屋市西原保養院院長、2012 野崎病院勤務を経て、2013 同院長。現在に至る。

大塚院長は院長業務の傍ら執筆活動にも励んでおり、銀鏡吾平のペンネームで、これまで「えっがね祭り」「あじゅら」と2冊の小説を出している。今後も年1冊のペースで執筆を続けていくと言う。評論家の吉本隆明と、大悟病院(北諸県郡三股町)の老年期精神疾患センター長の三山吉夫先生の二人を師と仰ぐ大塚院長に、病院運営や新型うつ病などについてうかがった。

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一般財団法人弘潤会  野崎病院  院長 大塚和之

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―病院の特長を教えてください。

 診療科目は精神科、心療内科、内科、放射線科、歯科、リハビリテーション科などです。460床のうち精神病棟入院基本料が100床、精神療養病棟が180床、認知症治療病棟が120床、療養病棟が60床です。

 その他医療・介護サービスとして精神科のデイケア、訪問看護、作業療法をはじめ、脳血管疾患や運動器のリハビリテーション、通所のリハビリテーション、画像健診センターでは人間ドックも行なっています。

 宮崎県より「認知症疾患医療センター」の指定を受け、一昨年は病院機能評価の「審査体制区分3(Ver6.0)」を取得し、昨年には協力型臨床研修病院指定ならびに精神科専門医の研修施設の認定を受けました。高齢化に伴い認知症の患者さんが増えており、認知症疾患医療センターの活動が大きくなってきています。身体合併症の患者さんが多いので、内科医を3人配置し、摂食障害には歯科医とも連携して対応しています。

 一般財団法人弘潤会には介護施設がたくさんあります。介護老人保健施設のほかグループホームが2施設、小規模多機能ホームが5施設、訪問看護ステーション、デイケア、デイサービスもあります。野崎東病院の診療科目は、主に内科、泌尿器科、整形外科で、病床数が96床あります。内科、整形外科の野崎クリニックもあります。

 「友愛の里」というリネン工場では、退院後の患者さんの社会復帰の職場を提供しており、県内だけでなく鹿児島の志布志あたりの病院まで、白衣やシーツなどのリネンサービスの提供を行なっています。病気が治癒しても社会復帰になりますと難しい側面がありますので、この点に関して先見の明があったのではないかと思っています。

 関連法人の社会福祉法人広和会には特別養護老人ホームやグループホーム、地域の交流センターや通所介護、認知症デイサービスなど複合施設になっています。認知症疾患医療センターと関連して介護施設のあることが、高齢化社会に適応した、地域社会への貢献だと思います。

 これからはスタッフなどソフト面の充実が課題で、認知症の専門資格を持った看護師の養成、看護技術の向上、医師のスキルアップなどに取り組んでいかなければならないと感じています。

―新型うつ病が増えているという話を聞きます。

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「えっがね祭り」他2 篇。表題作の「えっがね祭り」は、海辺の街に住む若者たちの青春物語、21 世紀版「限りなく透明に近いブルー」といえる。 「角」 近隣トラブルにより周囲に追い詰められ、次第に精神を病んでいく老夫婦を描いた作品。「ブーゲンビリア」 子と別れて次第に孤独を深め、やがて精神のバランスを欠いていく男を描く。いずれの作品も精神科医ならではの、精神を病んだ人々の内側からみた描写が秀逸で、物語の中にいつしか引き込まれてしまう。1300 円。

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銀鏡吾平著 「あじゅら」 統合失調症を患った若い女性患者が日毎に悪化する幻聴に惑わされていく様を日記形式でつづる闘病記。精神科医の筆者だからこそ描けるリアリティのある描写に引き込まれる。1200 円。

 学会でも定説がなく、新型うつ病という呼称も定まっていないのですが、現場で治療をしていますとうつ病の症状が変わってきたなというのは実感します。

 これまでの内因性のうつ病から次第に症状が変わってきて、20代から40代の世代を中心に、職場の不適応はあるが家に帰れば元気になり、週末は旅行するような症状を持つ人が増えてきています。でもそれで治療法を従来と変えるかというと、私はあまり変えません。ただ、職場復帰をうながしたり、バックアップ体制をとったりしています。

 具体的には、いわゆる新型うつ病の患者さんの家族や職場の上司に参加してもらい、病状を説明して復帰スケジュールのプログラムを作成します。

 退院したら、例えば毎日図書館で本を読んだりインターネットなどをしましょうみたいなアドバイスをし、出勤にしても、多少きつくても毎日出社されたらどうですかと助言して、会社に行けたという行為自体をほめるようにしています。そこからステップアップして職場復帰を果たした例は多いです。とにかく毎日、規則正しい生活を確立することが本当の意味での治療になると思います。

 うつ病に限らず統合失調症、解離性障害、リストカット、不登校などに対して社会復帰をうながすことを病院の方針としてやっていこうと考えており、介護施設も幅広く持っていますので、退院した患者さんに病院で借り上げた住居に住んでもらい、デイケアに通ってもらう、訪問看護の利用、作業所に紹介する、もしくは病院内で仕事を見つけて一緒に働くというシステムを作ることを考えています。患者さんの居場所と職場を提供することが、これからの精神科の運営には大事になってきます。

―医師を目指した理由は。

 46歳で医学部に入学して52歳で卒業しましたので、医者の経験としては18年目です。東京大学の理科一類で数学を学んでいましたが、その後、哲学を学び、卒業後、東京に22年おりました。母親が宮崎にいましたので、帰ってきてから宮崎医科大学に入学しました。当時、大学に三山吉夫先生という方がいまして、私はその先生の弟子にあたります。三山先生は日本を代表する認知症の研究者で、情熱を持って認知症の治療にあたっていて、私は今でもしょっちゅう叱られています。


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