ロコモのチェック、やってみてください

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大分大学医学部整形外科教授 附属病院副院長 津村 弘

修猷館高校卒 1981 九州大学医学部を卒業し、同附属病院に勤務 1982 九州労災病院 1983 福岡市立こども病院に勤務し、1986Mayo Clinic Biomechanical Researchに留学 1987 東京女子医科大学付属リウマチ痛風センター 1991 九州大学医学部附属病院に勤務を経て1994下関市立中央病院医長 2005 大分大学整形外科学教授。同医学部附属病院の副院長として総務も担当している。

―QOL向上を整形のコンセプトにしていますね。

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大分大学医学部整形外科教授 附属病院副院長 津村 弘

 今までは命を長らえさせるだけの医療、怪我さえ治ればいいという考えでした。でも今は、たとえば変形性膝関節症で歩けなくなった高齢者が、以前は歩かなければ痛くないからと我慢されることが多かったのですが、最近は治療をして歩けるようになりたい、旅行に行きたい、スポーツがしたいと、ニーズがどんどん変わってきています。

 あるいは老老介護の二人暮らしで、奥様の膝が悪く、ご主人もだんだん動けなくなってきて、このままでは夫の介護ができなくなるので早く手術しておきたいという要望も出てきています。

 特に我々が専門にしている人工関節や関節外科などは、手術をしなくても即、生命に関わることはないので、今までは後回しにされがちでした。しかし癌、脳卒中、心筋梗塞などもコントロールできるようになり、次のニーズとして、最後まで自由に動きたいという動きになっています。

 大分県は全国の中でも平均寿命が比較的高いのですが、健康寿命が全国平均より低いというデータが出ていて、これは整形外科の立場としてみると問題だと思っています。

 大分県の平均寿命と健康寿命の差が大きい理由はよく判りませんが、整形外科的な医療が行き届いてないという面はあるかもしれません。その差を縮めることが我々の役割だと感じています。

―ロコモは医学が扱う分野ですか。

 訓練は病院よりも前の部分だと考えられ、少し動きが悪くなってきた人たちにトレーニングしてもらうのは、本来は行政の役割だと思います。現在はそこに、我々が少し介入している状況です。状態が悪くなってしまったら薬を使ったり手術をしたりせざるを得ないわけで、そうならないように各自が気を付けようというのがロコモの運動だと思います。「ロコモティブ・シンドローム」という言葉自体は報道などで取り上げられていますので、徐々に浸透しつつありますね。自分のロコモチェックやテストは「ロコモチャレンジ!」というホームページで確認してみてください。

―最近の高齢者は元気な人が多いです。

 私が医師になったころは、80歳代の手術は少なかったですが、今は85歳代前半の膝の手術は結構多いです。このあいだ96歳の人に再置換をしたのですが、すごく元気な方で、一人で歩いて病院に来られますし、病棟で一緒だった人と湯布院に遊びに行っているようです。そうなると、暦年齢とはあまり関係ないですね。

 高齢者になっても楽しんで生きる人は、外交的で明るい方が多いです。積極的な性格の方は、人工関節にしたあとも、すぐに歩きたいと言われ、部屋にこもっているような方はだんだん歩けなくなってくる傾向があります。また、男性より女性の方が、地域のコミュニティに日常から溶け込んでいるので行動的です。男性は定年で仕事を辞めてしまうと、地域に知り合いも少ないし、行動的でなくなる傾向があると思います。

―高齢化社会に整形外科が担う役割は何でしょう。

 人の一生を通して、運動器の健康を守ることだと思います。

 一つは若い時に骨の量を増やしておくことです。欧米ではここ10年ほどで大腿骨頸部骨折の発症率は減っていますが、日本では増えている状況ですから、その辺の指導の徹底は必要だと感じます。

 関節に関しては、関節リウマチなどはある程度克服されつつありまして、これから人工関節が必要になる人は、かなり数が減ってくると思います。しかし変形性関節症は減らないと思いますので、そこに整形外科的な手術と治療は、まだ発展するでしょうね。軟骨が減らないための特効薬が開発されることを期待します。

―整形外科医を選択した理由はなんですか。

 九大にいた時から外科系に進みたいと思っていました。一般外科になるか小児外科になるか整形外科になるかというところで迷っていましたが、先輩の話を聞いたり、母親がリウマチだったこともあり、整形外科になることを決めました。

 学生時代には整形外科が必ずしも面白いと思っていたわけではありませんが、いざなってみると、手術にちょっとした工夫をすることで、車いすの人が歩いて帰れるようになるとか、出来なかったことが出来るようになるとか、そういう機能再建外科の部分が、すごく私には合っていました。そういう工夫の余地があるところが面白いですね。

―手足が動くことはQOLの部分でも大事ですね。

 すごく感動した言葉があります。日本整形外科学会の黒川高秀元理事長の「運動器とは自己を具体化するしくみである」。そして「身体運動は人間の自由の基本であり、個人の尊厳を支える条件である」と言われています。私は、学生に「罪を犯すと手錠で手の自由を奪われ、刑務所で足の自由を奪われる」ことを考えるとこの意味がわかると教えています。

―身体機能が不便なのと、生きざまとしてかわいそうなのとは違うのでは。

 まさしくその通りで、1980年にWHOの国際障害分類で、病気から社会的不利に至る経過が定められていました。でも最近は「何かができないことは、悪いことではなく、できないからこそ、別のできることがある」と見直しがされました。

 出来るように環境を整えることも重要で、それがバリアフリーの考え方ですが、今では誰でも使えるという意味の「ユニバーサルデザイン」という用語が好まれます。

―先生が医者を目指していた時と今の学生に違いはありますか。

 私たちの時代は、医師の使命感というものが強かったと思うんですよね。かっこ悪いくらい一生懸命の人たちが昔は多かった。でも最近の学生にはそのあたりがあまり感じられません。もっと勉強して、少しでも知識を多くしていくべきではないかと思います。

―「医師の感性」というものはありますか。

 ありますね。患者さんを診て、サイエンスの分野ではない、勘のような部分で、いつもと違うぞ、ちょっと何かおかしいぞ、と感じ取れる人と感じ取れない人とは、ギリギリのところで違ってくると思います。

 気づかれていない陰に隠れている病気を感じることが第一ですが、患者さんが話さない本当の心配事を感じ取ることも重要です。本当は股関節に症状があるのに、それを隠していて、そのために手のしびれなど多くの愁訴が出ていたという患者さんを治療したことがあります。

―仕事は楽しいでしょうね。

 それは楽しいですよ。つらいことがあるとすれば副院長業務ですね(笑)。経営担当なので、いろんな機材を買ってあげたいけど予算がなくて、みたいな順位付けがやたら厄介です。医師不足の訴えについても、無い袖は振れないのが現状ですね。
(聞き手と写真=川本)


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