市立宇和島病院 院長 梶原 伸介
■所属学会日本外科学会 日本胸部外科学会 日本消化器外科学会 日本呼吸器外科学会 日本内視鏡外科学会 日本臨床外科学会 日本乳癌学会 日本癌学会
屋上にあるヘリポートで、宇和島港側を背景に梶原院長を撮影。梶原院長の住まいもここから見ることが出来る。緊急時に素早く対応するために、病院の近くに住んでいる。院長の趣味はテニスとゴルフ。今も週に3例ほどの手術を執刀する。
病院の敷地内にバス停があり、年配者も通いやすい。
愛媛県宇和島市の市立宇和島病院の前身は、明治43年に開院している。宇和島市への鉄道開通は昭和20年6月まで待たねばならず、また当時近隣に大きな医療機関は全くない、困難な状況からのスタートだった。
その伝統を受け継いで、今も地域の中核病院であり、四国西南地域唯一の総合病院である。
「当院は医師やコ・メディカルだけでなく、事務員などにも医療を守るという意識が強いんです。公務員は働かないというイメージですが、当院には当てはまりません」と梶原院長は言う。また災害拠点病院にも指定されており、DMATを3チーム保有している。宇和島市は高知県の宿毛市・四万十市の2市と接しており、県境を超えて来院する患者も多い。
非常勤や研修医を含めた医師の数は90人を超える。南予救命救急センターを併設し、南予地方の3次救急医療機関としての役割も担う。ICU4床、HCU14床、CCU2床を持ち、救命救急センター長は高崎康史麻酔科長が兼務する。
ファーストタッチで様々な急患を診ることが出来るため研修医には人気の病院で、定員6名が2年間フルマッチ。
現在南予地方では麻酔科医が常勤する病院が減っており、手術が年々増加していることも魅力の一つ。手術室は7室で、内1室はバイオクリーンルーム。
また後期研修の外科医は、がん研有明病院(東京都江東区)に半年間の研修にも出し、他院の流儀を学ばせ、また人脈を作らせている。
梶原院長によると、病院では今後ダ・ヴィンチを導入する予定もあるという。「当院の泌尿器科医は鏡視下手術に習熟している。先ず彼らの努力に応えるために導入したい。導入によって、外科系の医師にとってより魅力的な病院になるでしょう。予算の関係上、消費税増税の前に是非」とのこと。
病院は宇和島城の真南およそ1kmに位置する。宇和島藩第8代藩主伊達宗城は藩の近代化を進め、明治維新の枢機にも参画した人物で、鳴滝塾に学んだ医学者二宮敬作を重用した。二宮敬作は宇和島で、日本初の女医である楠本イネを教育したことでも知られる。
施設の老朽化・狭隘化に伴い、平成17年から全面改築工事を行なった現在の病院は、開院から99年目にあたる平成21年に竣工した。
一部は鉄骨造だが、主にピアノ線を用いたプレストレストコンクリート材という、非常に強固な部材を用いて作られている。この部材は通常の鉄筋コンクリートに比べて、弾性および曲げ強度に優れ、また鉄骨造や鉄骨鉄筋コンクリート造に比べて鉄材が少ない分、耐火性に優れる。これを専用工場で作り、高い品質を保って建てられているため、免震構造と合わせて災害への対応力は極めて高い。
地上10階地下1階で、屋上に耐久重量は最大6tのヘリポートを持つ。
総病床数は559床から435床へ削減されたが、電子カルテを導入するなど、医療体制は強化された。
翌年公営企業法の全部適用に移行している。
病棟利用率は常に95%を維持しており、経営的にも黒字の月が多いという。入退院は1日40件ほどで、平均在院日数は10・5日。
しかし看護師の募集には苦戦しており、現在は10対1看護の体制だという。
また地域連携も今後の課題とのこと。現在は電話やファクシミリでやりとりをしているが、来年電子カルテのシステムを更新する際に、地域開業医や他の病院が直接サーバにアクセス出来る仕組みを導入する予定。