九大百年講堂で高校生340人に公開講座
がん哲学の樋野興夫順天堂大教授 「大学で尊敬する人みつけて」
「がん研究の最前線」と題した、高校生対象の公開講座が、九州大学医学部百年講堂で10月19日に開かれ、県下8高校から343人の高校生が集まった。
講演を行なったのは、上の写真=左から順に、永井英司九州大学臨床・腫瘍外科学准教授、加藤聖子同婦人科学産科学教授、馬場英司同九州連携臨床腫瘍学教授、岡本龍郎同消化器・総合外科学講師、樋野興夫順天堂大学病理・腫瘍学教授の5人。司会を福岡県立筑紫丘高校2年生2人が務め、開会の挨拶と総合司会を、小田義直九州大学形態機能病理学教授が担当した。
講演後の質疑応答で寄せられた質問は、「がんはなぜレントゲンに映るのか」、「どうして放射線で死ぬのか。その放射線で正常な細胞は傷つかないのか」、「抗がん剤の副作用はなぜ起こるのか」、「内視鏡手術で切り取った臓器はどこから取り出すのか」、「手術による治療は限界があるのでは」など。それぞれに講演者が答えた。
また講演者の側から高校生に向け、「自分に限界を作らず、いろんなことにアンテナを張って」、「命の不思議さに興味を持ってほしい」、「自分の将来に関心を持ち、それを楽しむ生き方を」、「高校は勉強一筋。大学で尊敬する人を見つけてほしい」などの言葉が寄せられた。
世話人を務めた小田義直教授のコメント。
がんは今や日本人の最大の死亡原因。近い将来には国民の半数ががんで死亡する事態が予測され、これまで以上に予防やより良い治療法の開発のために、将来を見据えた基礎的な研究や、医療現場との橋渡しをする研究が望まれる。
日本には現在、がん治療の開発に貢献した研究者がたくさんおり、日々、「がんの本質」、「がん予防にもっとも大切なもの」、「がん根治のための治療法の開発」などに取り組んでいる。
その一方で、基礎医学全般に言えることだが、医学部を卒業して豊富な医学知識を生かしつつ、基礎医学の研究を行なう人材が少なくなっている。
そこで今回は、がんの診療に携わり、研究も行なっている九州大学医学部の新進気鋭の臨床医学を専攻している先生方に講師をお願いした。また樋野興夫教授には「がん哲学」という、最近脚光を浴びている分野の話をしていただいた。
がん研究、がんの臨床、がん哲学の話を同時に聞くことができ、参加した高校生たちも目を輝かせて聞き入っていた。終了後のアンケートでも「今回のように高校生のうちから大学とコミュニケーションが取れたらよい」、「進路を再確認する良い機会になった」、「いろいろな方面から一つの問題へアプローチするスタイルで、つながりや全体がつかめ、とてもわかりやすかった」、「がん哲学に興味を持った」、「今回みたいな講座なら、また参加したい」、「こんな講座は初めて。よい刺激になり、知らないことを勉強できる機会だった」など好評だった。
今回の参加者の中から一人でも多くがん研究に興味を持ち、できることなら医学部を卒業して、将来の日本のがん研究を担ってくれる人材が出てくることを期待したい。