第1回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会

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根治性と整容性を両立させる乳腺外科と形成外科の連携

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開会の挨拶をする大慈弥会長。大慈弥会長は11 月30 日に福岡市中央区で開催される第23 回日本シミュレーション外科学会でも会長を務める

設立記念大会

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会場となったグランド・ハイアット・福岡

 9月19日と20日、福岡市博多区のグランド・ハイアット・福岡で、第1回日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会総会が開催された。会長は福岡大学形成外科の大慈弥裕之教授、副会長は昭和大学乳腺外科の中村清吾教授。参加人数は乳腺外科と形成外科の医師を中心に850人ほど。企業展示コーナーには26社が参加した。次期大会は来年の10月3日と4日、東京都港区のホテル日航東京で開催予定。会長は昭和大学の中村教授。

 乳房インプラントの手術実施者には講習会の受講が必要で、総会が閉会した後、2013年第3回乳房再建用エキスパンダー/インプラント講習会が行なわれ、参加者は400人ほどだった。使用要件基準の概要やアラガン・ジャパン㈱の学術担当者による製品説明およびインフォームドコンセントについて解説があったほか、具体的な手技についての講演があった。

学会設立の経緯

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シンポジウムの座長を務める中村副会長(左)と、大阪大学形成外科乳房再生医学寄附講座の矢野健二寄附講座教授

 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会は、国際乳房オンコプラスティックサージャリー学会の国内団体に相当する学会で、乳癌における乳房の整容的根治術や再建のための学会として、日本乳癌学会と日本形成外科学会が協力して平成24年3月に設立し、今年の4月に一般社団法人化した。理事長は川崎医科大学乳腺甲状腺外科の園尾博司教授、副理事長は、本総会会長で福岡大学形成外科の大慈弥教授。

 アラガン社の乳房インプラントの薬事承認以降は、厚生労働省およびPMDA(医薬品医療機器総合機構)と合議し、使用要件基準を作った。

 平成20年に東京で行なわれた乳腺外科・形成外科懇話会が設立の基盤。平成22年に東京で第3回国際乳房オンコプラスティックサージャリー学会が開かれ、日本での組織作りの構想が生まれた。

乳房インプラント

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総会には、乳腺外科と形成外科の交流・意見交換の場という側面があり、質疑応答では活発な意見交換が行なわれた。

 当初は美容のための乳房増大の技術。今年7月に乳房再建に用いる場合保険適用になった。

 乳房インプラントではまず、皮膚や大胸筋などを拡張するために、腋窩・乳輪周囲・乳房下溝の適切な位置を切開し、ティッシュエキスパンダーを挿入し、縫合する。その後外来で定期的にティッシュエキスパンダーへ生理食塩水を注入して部位を拡張し、約6か月後にティッシュエキスパンダーと乳房インプラントを入れ替える。

 インプラントの挿入位置は、乳腺下もしくは大胸筋下。

特別シンポジウム

 「オンコプラスティックサージャリーとチーム医療」のタイトルで特別企画シンポジウムが行なわれた。座長は川崎医科大学の園尾教授と医療法人社団ブレストサージャリークリニックの岩平佳子院長。園尾教授は冒頭で、「乳腺外科医と形成外科医を中心に、放射線内科医、腫瘍内科医のみならず医師に話せない患者の本音を聞く看護師など、乳房オンコプラスティックサージャリーにもチーム医療が必要だ」と述べた。

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 岡山大学医歯薬学総合研究科形成再建外科の木股敬裕教授は、岡山大学が集学的治療を行なうため2008年に設立したBCTR(乳がん治療・再建センター)の紹介をおこなった。岡山大学BCTRは、国立大学では初めての多職種メディカルスタッフが連携する乳癌の治療施設で、木股教授も副センター長の一人。乳腺外科のほか、形成外科や精神神経科、緩和支持医療科、病理部、看護部、薬剤部、リハビリテーション、放射線技師、治験コーディネーターなどが一体となって、乳癌患者を診ているという。また㈱ワコールと協力して、下着の研究開発も行なっている。質疑応答では、女性下着に関する質問もあった。木股教授は「再建患者用の女性下着は研究目的なので、現在無償提供されている。品質が良いので数年使えると聞いている」と述べた。

 北海道がんセンターの高橋將人統括診療部長は、2011年に同施設が単施設で乳房インプラントの自費診療を開始した経緯を話した。結果として形成外科と乳腺外科の連携が上手く進み、再建方法も患者のニーズにあわせて自家組織と乳房インプラントを選べるようになったという。

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 三井記念病院外科の福内敦乳腺内分泌外科部長は、近隣のクリニックとの連携による再建を紹介した。三井記念病院には4名の乳腺外科医がおり、年間200から250の乳癌手術を行なっているが、常勤の形成外科がいない。しかし整形外科クリニックとの協力で一次再建(切除と再建を同時に行なう手術)を300例以上行なっている。

 元乳癌患者の医療法人ラ・クォール会の瀧野敏子理事長は、再建術を受けた患者の経験を、医師としての視点から述べた。

 また、乳房再建を受けたことのある美容ジャーナリストの山崎多賀子氏が、患者の立場がら発言をした。

公開講座も開催

 20日、総会の閉会後に同会場で、参加費無料の市民公開講座が開催され、市民およそ100人が参加をした。司会は福岡大学形成外科学講座の高木誠司准教授が務めた。

 市民公開講座では昭和大学の中村教授が乳癌に関する検査・治療などの概要を述べたほか、福岡大学医学部呼吸器・乳腺内分泌・小児外科の吉永康照講師が乳癌治療について易しく解説を行なった。

 福岡大学医学部形成外科の衛藤明子助教は「乳房再建という選択〜全摘と言われてもあきらめないで」のテーマで、乳房再建術の種類とそれぞれの特徴を解説した。

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アラガン・ジャパン㈱の出展ブースに立つ髙松章執行役員人事総務本部長

 以前は自家組織移植による乳房再建術のみが保険診療で認められており、シリコンインプラントによる乳房再建術は自費診療だった。平成23年9月28日、アラガン・ジャパン㈱の乳房インプラントおよびティッシュエキスパンダーが、乳房再建を目的とした新医療機器として厚生労働省に薬事承認され、平成25年7月に保険適用となった。乳房インプラントの表面の加工方式は2種類あり、滑らかなスムーズタイプと、表面に凹凸があるテクスチャードタイプがある。テクスチャードタイプの方が、周辺組織との接着性が高められており、被膜硬縮の発生を抑えられる。スムーズタイプ97種類とテクスチャードタイプ45種類が保険適用になった。

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アラガン・ジャパン㈱の乳房インプラント。写真はラウンドタイプと呼ばれる円形のもので、上がスムーズタイプ、下がテクスチャードタイプ。ほかに乳房の解剖学的な形状に近い水滴型のアナトミカルタイプがあるが、薬事承認はされていない。乳癌患者の乳房再建だけではなく、ポーランド症候群や性同一性障害における乳房形成のほか、保険適用はないが美容目的の乳房増大にも用いられる。


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